軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スケルトンキング

頭部の形は王冠を連想させた。

予測通りの巨躯。

サイズはドラゴンゾンビに近いか。

ただしここは直立できるだけの高さがない。

なので、低い四つん這いで地を這う姿勢だった。

骨はオレンジに近い。

黒々とした眼窩の奥にも小さな橙の光がある。

光は眼球めいて忙しなく動いていた。

肩には突起物が確認できる。

人間の腕や足の形をした骨。

魔物と思しき骨も突き出ている。

こいつ……。

他の生物の骨を取り込んで成長しているのか?

さっきの部屋は、取り込む用の骨の貯蔵庫なのかもしれない。

「ひィ゛ぃ゛ィぃェぇァぁァあアあアあ゛ア゛――っ! ゲろ、ゴはァぁァあアあアあア――っ!」

今の咆哮は威嚇だろう。

ドラゴンゾンビの雄叫びに近い。

まだ、襲ってくる気配はない。

スケルトンキングはジィィっと俺たちを観察している。

「ハティ、殿」

隣のミストが唇を噛む。

「ん?」

「あごの下の骨を見てください。よく見ると、銀色の部分が確認できると思います」

「……ああ」

「あそこを砕けば、おそらく倒せるはずです」

「ふむ」

「ですが――はっきりと現実を、言わせていただきます」

魔物を凝視し、ミストは続けた。

「あれはこの遺跡の攻略に集まった傭兵たちの手に負える魔物ではないでしょう。あの剣虎団でどうにか、という感じではないかと……巨体でありながら俊敏で、骨は硬く、魔素を用いた術式も効果が薄いと聞いています。ですので、ハティ殿の術式も――」

剣虎団。

何気にすごい連中だったんだな。

「…………」

俺はスケルトンキングを注視した。

素早い羽虫のように動き回る光る金眼。

ミストを捉えている回数が明らかに俺より多い気がした。

警戒すべきはミストの方だと思っているのか。

二人の内で強いのは、あの女の方だと。

なるほど。

ミストがいれば、敵の意識を俺から逸らせることもあるわけか……。

で――どう攻める?

魂喰いのアレの記憶が甦ってくる。

こっちの攻撃に合わせて超速の迎撃行動を取ってくる魔物か否か。

現状ではまだ把握できない。

こいつは、どのレベルの魔物だ?

確実性を上げるなら、相手が攻撃へ移る瞬間の隙を見つけてそこにスキル発動を合わせたいところだが――

「ハティ殿、お願いがあります」

ミストが声をかけてきた。

ピシ、

ピキッ、

ピシィ――

ミストの剣の刃に氷脈が浮き上がる。

氷は、次第にその量を増していく。

「この剣を氷の打撃武器に変化させ、あの弱点部位を砕けるかどうかやってみます。さらに、とある力を使ってこれから私の身体能力を底上げする特殊な鎧を生成します。この力を使えば、あの魔物に勝てるかもしれません。ただ、この力は……できるだけ存在を隠したい力なのです。ですからどうか、ここで見たことは内密にしていただけないでしょうか?」

スケルトンキングが大口を開けた。

口に光が溜まり始めているのは先ほどから確認できていた。

何かを放ってミストを攻撃するつもりか。

が――まだ射出はない。

攻撃性が一気に膨れ上がる瞬間があるはずだ。

その機を見極めるべく、俺は注視を続けた。

時にはイチかバチかも必要だろう。

が、普段はこうして確実性を重視したいところだ。

確実な隙を見つけて、仕留める。

「それと――申し訳ありません。あの魔物の強さが想像以上だった場合、あなたを守ることにまで意識が回らないかもしれません。ですので、いざとなればハティ殿とピギ丸殿はここから逃げ――」

「ぎィぃ、ゲ、ろォぉォおオおオお゛オ゛――――っ!」

何かを放つ直前の状態に、入った。

最も隙の生じる瞬間――

こ(・) こ(・) だ(・) 。

「――【パラライズ】――」

シュゥゥゥゥ……

「オ、ぉ――ォ――」

スケルトンキングの口内の光が弱まっていく。

リザードマンのように破裂はしない、か。

「――ぉ゛、ォ? ぉォ……?」

魔物の動きが停止した。

スケルトンキングから混乱が伝わってくる。

表情はないがわかる。

俺は一歩、前へ出た。

「――え?」

ミストの口から、呆然とした短い声が漏れた。

氷の武器の形成は途中で止まっている。

ゆったりと、俺は振り向いた。

「わかった。あんたのその力については、決して許可なく他人に漏らさないと誓おう」

俺は、再びスケルトンキングへ顔と手を向ける。

こ(・) い(・) つ(・) が(・) 効(・) き(・) さ(・) え(・) す(・) れ(・) ば(・) 、 弱(・) 点(・) も(・) ク(・) ソ(・) も(・) な(・) い(・) 。

「【ポイズン】」

スケルトンキングの巨体が紫色に変化した。

毒も――成功。

腐竜に続き、骨だけの魔物にもスキルは効果を発揮した。

このスキルの原理はよくわからない

ただ現状、すべての相手に状態異常は成功している。

唯一の例外(クソ女神) を除いて、だが。

「これは一体……? 術、式……?」

不可解そうな顔で骨の王を見上げるミスト。

氷の武器を構えたまま目を見開いている。

ああ、そうか。

ミストは【ポイズン】の方を見るのは、初めてだったか。

彼女の方へ振り返る。

「俺はあんたのその力に関して口をつぐむ。その代わり――」

毒に侵された骨の王を背に、俺は言った。

「あんたもこの力について、内密にしておいてもらえないか?」

まだミストは状況認識が追いついていない様子だった。

「それから、この遺跡で起こった例の異変のことだが……あれはおそらく、俺がこの力で殺した魔物の死体が原因だ」

「ハ、ハティ殿の……?」

「途中で会った剣虎団の人間から話を聞いた限り、現状そうとしか考えられない。この力で魔物を殺すと基本、外傷が残らないらしくてな。そういえば、あんたも前に身をもって体験してるだろ?」

過去にミストはあの森で【パラライズ】を付与されている。

眠りの方は、まだ気づいていないようだが。

「まあ、この力は――」

死へ向かう背後のスケルトンキングを、親指で示す。

「この世界じゃ少しばかり、異常らしい」