軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

問い

◇【鹿島小鳩】◇

鹿島小鳩の固有スキル――【 管理塔(ディスクローズ) 】。

現状、この固有スキルはとある特性を前提としている。

それは勇者のステータスである。

ステータス情報は”ステータスオープン”によって開示できる。

情報はステータスウィンドウに表示される。

しかし、その開示したステータスは本人しか見ることができない。

例外は二つ。

女神はすべてのステータスウィンドウを閲覧できる。

ただしウィンドウが表示されていなければ、女神も閲覧はできない。

もう一つは女神から”閲覧許可”を与えられた場合。

許可を与えられた者は他の勇者のウィンドウ上の情報を閲覧できる。

この閲覧許可は永続ではなく、一定時間で消失する。

この二つが、本人以外が他の勇者のステータスを確認できる手段である。

つまり口頭による開示がない以上、基本的にステータスは当人しか知りえない。

このステータスの特性が、浅葱たちの頭を悩ませていた。

戦場浅葱の固有スキルの一つ【 群体強化(クイーンビー) 】。

これは能力強化のスキルである。

各ステータスに能力が加算されるスキルだ。

ちなみに他の勇者も通常の強化付与スキルは持っている。

が、浅葱の能力強化――バフは、その付与値がずば抜けている。

【 群体強化(クイーンビー) 】を付与すれば、グループの勇者たちは格段に強くなる。

仲間たちが本来のステータス以上の強さを発揮できる。

けれど当然、それはバフ効果が持続中の話である。

浅葱グループはA級以上の勇者がいない。

効果が切れればたちまち”並”のステータスに戻ってしまう。

現在、浅葱のバフは重ねがけもできるようになっていた。

これにより、さらにバフの効果は高まった。

しかしここで浅葱の頭を悩ませたのが、

”対象によってバフの効果持続時間が異なる”

というスキル性質であった。

要は、いつバフを掛け直せばいいかの判断が難しいのである。

バフは重ねがけできる。

が、効果がすべて切れるまで再付与はできない。

次のバフをかけるには、一度効果がすべて切れるのを待つしかないのだ。

これが問題であった。

浅葱グループは人数が多い。

バフが切れたかどうかは自己申告。

性質上、浅葱は他の勇者のウィンドウ表記を見れない。

バフが切れた者が自らウィンドウを確認し、申告するしかないのだ。

この自己申告がまさに厄介と言えた。

とにかく皆、気を取られる。

これは致し方あるまい。

バフが切れた途端、自身の死亡確率も跳ね上がるのだから。

だから自然と、戦闘中の動きも鈍る。

保身を優先する。

最悪なのは――

バフが切れたことに気づかず、戦闘を継続することだ。

目の前の敵に熱中しすぎて、バフが切れたのに気づいていないケースがあった。

かろうじて深手は避けたが、その子は傷を負ってしまった。

さて――

ここで話が【 管理塔(ディスクローズ) 】へと戻ってくる。

浅葱がバフ情報の把握に苦心していた時のことだった。

鹿島小鳩の固有スキルが、開花した。

この固有スキルは、

”スキル使用者が他の勇者のステータス情報を把握できる”

という能力であった。

スキルを使うと勇者の頭上に透過ウィンドウが現れる。

このウィンドウは小鳩以外見ることができない。

また、ウィンドウは小鳩が見やすいよう拡大もできる。

つまり――

鹿島小鳩は、他の勇者のステータス情報をすべて把握できる。

この固有スキルが、浅葱のバフと見事に噛み合った。

まず自己申告の必要がほぼなくなった。

バフの切れそうな者、あるいは切れた者は小鳩が報告すればいい。

小鳩は情報の把握と報告だけにすべてのリソースを注ぐ。

バフの切れそうな者は、切れる心配なく戦える。

バフ関連は全部、小鳩と浅葱に任せればよくなったからだ。

ゆえに、戦闘行為のみに集中できる。

浅葱にしても、ただ小鳩の報告に従ってバフをかければいい。

以前よりは思考の負担が減った、と浅葱自身が言っていた。

これにより、浅葱グループは目に見えて集団戦闘の動きがよくなった。

そこへさらに浅葱の固有スキル進化が加わり、浅葱グループは以前と比べるとかなりの強さを得た。

あの第九騎兵隊という強そうな相手とやり合っても、戦えるほどには。

「こばっちゃん、せっかくだから見に行こうぜい」

テントの中にいた小鳩に声をかけたのは、戦場浅葱。

「え? もしかして……」

「そ、例の獣人ちゃんたちとの会談よん」

「わ、わたしはいいよ……わたしなんかが行ったら、邪魔でしかないだろうし……」

何よりああいう場所に行くと、緊張する。

「ツィーネちんに聞いたら、ポッポちゃんも連れてっていいってさ」

「えぇ……」

浅葱の”ポッポちゃん”はもう諦めている。

が、

(皇帝さんを”ツィーネちん”って、浅葱さん……不敬にもほどがあるよ)

「あ、ツィーネちんも来るってよ?」

「そうなんだ……」

「おり? やっぱこばっちゃん他の子と違って、ツィーネ様LOVEって感じじゃないよねぇ? ああいうの、好きそうなのに」

「えぇ? それを言ったら、浅葱さんだってそうじゃないかな?」

「いやぁ、だってツィーネちんって話しててもつまんねーんだもん」

「ちょ、ちょっと浅葱さん……っ!」

しぃー、と。

唇に指をあて、もう一方の手で浅葱の口を手で塞ぐ小鳩。

「ミ、ミラの人たちは皇帝さんをすごく尊敬してるんだからっ……そういう発言はまずいよ……っ」

「むごがが」

小鳩が手を離す。

ぷはぁ、と浅葱がわざとらしく息を吐いた。

「ふぃ〜……そうかね? あたし、もっと不敬な発言いっぱいしてると思うけどにゃー。でも浅葱さん、無事なんだにゃー」

「わたしは……いつか浅葱さんがミラの人に刺されそうで、怖いよ……」

そもそもあの女神を裏切った時点で、小鳩は怖いと思った。

ただ……。

浅葱は何か、確信を持っている。

(あの時……ヨナトにいたわたしたちの前に、いきなりツィーネさんが現れた時……)

狂美帝と二人で話したあと……。

浅葱は明らかに”何か”を確信した顔をしていた。

多分、勝算があるのだ。

皆、浅葱のおかげで生き残ってこられたのを自覚している。

実際、死者だって出ていない。

動けないほどの傷を負った者さえ、いない。

ヨナト王都での戦いがあれほどの激戦だったにもかかわらず、だ。

(それに……)

”みんなで無事に元の世界へ戻る”

浅葱のその信念だけは、今では信じられるような気がする。

それにしても……

(浅葱さんもやっぱり、ツィーネさんの魅力にやられて協力してるわけじゃないんだ)

一方の小鳩はといえば、

(わたしは、ツィーネさんはなんだか怖い……あの人にはなんていうか……安心感が、ない。あの人と同じ空間にいて、ホッとできない……)

対人において小鳩が求めるのは安心感だ。

その点、十河綾香は安心感を与えてくれる人だった。

(会いたいな……十河さんに……)

女神を裏切ったことも怖い。

ただ、それ以上に……。

綾香にどう思われるかが、今の小鳩にとっては一番怖いことかもしれない。

「ほれ、行くぞい」

「う、うん……わかったよ」

結局、小鳩は浅葱と会談場所へ向かうことになった。

陣に到着し、陣幕を背にしている辺りの列に紛れ込む。

(うぅ……この空気、緊張するなぁ……)

小鳩は冠婚葬祭とかが苦手である。

学校の体育館に集まってするお堅い行事とかも苦手。

緊張するから。

そう、安心感がない。

片や浅葱はというと、呑気にあくびなどしている。

と、

「来ました!」

兵の一人が狂美帝に報告した。

会談相手が来たらしい。

(最果ての国……確か、獣人さんたちの国って話だったかな。蠅王ノ戦団とかいう人たちも来るみたいだけど……あっ)

来た。

ぞろぞろと、陣に入ってくる。

(すごい……半分蜘蛛の人とか、おっきな黒豹の人とか……わぁ……獣人さんは見たことあったけど、こんなにたくさん……)

「ほぇ〜、なんか一気にファンタジー」

浅葱は額に 庇(ひさし) を作って、なんだか楽しそうだ。

(あ……)

小鳩は、隣の浅葱の頭上に目を留めた。

二時間ほど前、固有スキルでグループの子たちのステータスチェックをした。

定期的にステータスをまとめ、書き記す。

これも、今の小鳩の役目だ。

(しまった……固有スキルを解除するの、忘れてた……)

この固有スキルは消費MPが驚くほど少ない。

以前、発動しっぱなしなのを忘れたまま一日過ごしていたことがあった。

が、就寝前に気づいた時にもまだMPは残っていた。

ため息をつき、自分を責める。

(はぁ……でも、安いからって無駄遣いしていいわけじゃないのと一緒だよね……こういう抜けてるところ……いい加減直したいなぁ……)

ちなみに【 管理塔(ディスクローズ) 】は、異世界人のステータス表示はできない。

あくまで勇者のみである。

だから、狂美帝のステータス表示などもできない。

と、周りの雰囲気がざわっと変わった。

かすかな囁きから、何に注意を向けているのかがわかった。

(……そっか、あれが。世界一の美人だっていう、セラス・アシュレインさんなんだ……あの仮面の下の顔、一度でいいから見てみたいなぁ……あっ)

セラス・アシュレインの斜め前をゆく黒馬。

その馬に、蠅のマスクを被った人物が騎乗している。

兵の話していた蠅王という人物だろう。

確か、あの人物が蠅王ノ戦団のリーダーだったか。

「――――――――、……え?」

小鳩は、目を見開く。

そのまま俯き気味になって、彼女はほとんど無意識に、手を口もとへやっていた。

(なんで……? え?)

鹿島小鳩は【 管理塔(ディスクローズ) 】を、まだ切っていなかった。

ど(・) う(・) し(・) て(・) 蠅(・) 王(・) さ(・) ん(・) の(・) 頭(・) の(・) 上(・) に(・) 、 ス(・) テ(・) ー(・) タ(・) ス(・) ウ(・) ィ(・) ン(・) ド(・) ウ(・) が(・) あ(・) る(・) の(・) ?