軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第606話

手持ちの在庫を片付けないうちに新しい鉱石や研磨案件に手を出してしまう俺の悪い癖が顔を覗かせた。だって興味が湧いちゃったんだもん仕方ないじゃない、ドワーフだもの、ミーシャ。

思い付きがロストテクノロジーなのかアンタッチャブルなのか不明だけどなっ。

岩塩は色数は多そうだけど身体に悪そうだから俺は【スライムの死核】メインで手を出すことにする。だって残渣処理も【スライムの死核】の方が遥かに楽だしね。それをエルフに高く売りつけるという目的が有るのだ。

「ミーシャ=ニイトラックバーグはいつも楽しそうに作業するんだね」

「はい。ボクの好きな作業なので」

「それとは別な感じの表情に見えるけど、私の気の所為かな?」

ヤベェ、俺ってニヤニヤしてた?

「今日で岩塩の細工は終わらないので、来週の一の日も指導をお願いします」

「はいどうぞ。何なら石工のコースを取ってくれてもいいんだよ」

「いや、まだあちこち見て歩いている状態なので」

「石工はさておき、使える土魔法も教えてあげるから時々顔出ししてね」

「ありがとうございます。前向きに検討します」

「この集塵の魔道具のある採石場に来る講師&生徒は大体 戦友(トモダチ) だからね」

うん、どこも徒弟を求めてるんだな。研磨つながりで石工作業にも興味がなくはないけど俺はのんびり鉱石研磨がしたいだけだ。

配合比率が違う種類の再生岩塩を研磨する場合は念の為、その都度工具の清掃を行う事と言われた。そして全く別の作業をする場合は必ず作業場と工具を清掃し、廃材や廃液等を処理してから次の素材に取り掛かる様にと念を押された。危険な素材が下手に混ざると分離が面倒臭いのだとか。危険度の少ないものは日々の清掃で問題無いからいいけどね。

緑色の岩塩も同様に整形した。サイズをメモしておいてそれに準じてコーティングドームを掘る事になる。先に二回りほど大きいカボッションカットの岩塩を作り、その中を半球状に彫る。逆順だと作業中に薄くなった岩塩を割ることがあるらしい。

一つ目を丸刀で掘り始めたけど、初めての作業だし、穴を大きくし過ぎず且つ割らない様に彫るのは結構難しい。まぁ、失敗しても構わないからまだ気楽だけどね。とは言え、気を抜きすぎると素材の無駄遣いになるだけだからな。

「うわっ、結構難しい……。彫ったつもりでも浅いんだ」

「頑張ってね」

頑張れ俺。一生懸命、丸刀で岩塩を彫っていたら浮かんだ事がある。

これ、外側に色付き岩塩を圧着させたら切子の素材にならない? 確か切子のグラスは外側に色が着いていた。そして回転砥石で切り込みを入れてやれば切子細工になるよね? 最悪、三角ヤスリで手作業でもいけそうだけど。

「また変な顔してるよ」

「あの、浮かんだ工程があるんですけど、色付き岩塩だと試作するのが微妙で」

「まぁ、聞かせてよ」

「あの、色付きガラスってどうやって作られているんですか?」

「色付きガラスは岩塩と同じで基本的に微量の金属を混ぜて着色してるね。ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンは魔導ガラスにだったら使える。再生ガラスや珪砂から作るガラスには馴染まないよ」

「表面にだけ着色されているガラスって有りますか?」

「表面? あ、コートグラスの事だね。普通に作るところ面倒臭いから圧着魔法で作られるよ。もしかして岩塩の圧着で思い浮かんだ?」

「はい」

「もしかして、今やってる作業で圧着時の岩塩の並べ順を逆にしてみたくなったとかかな?」

「そうです!!」

流石はザン=ギュラー先生。再生岩石の製作者だけはある。

「出来なくはないけど、メリットが少ないんだよねぇ」

「危険性の関係ですか?」

「それもそうだけど、色付き岩塩は未処理状態で一番外側に使うべきではないという不文律があるからね。何をどうしたところで所詮は塩の塊だから、石化処理していなければ容易く欠けるし溶けちゃうでしょ?」

「それは確かにそうですね。ちなみに色ガラスを使ったコートグラスはどうやって作られるんですか?」

「簡単だよ。【 砂の魔女(サンド・ウイッチ) 】直伝の『カップリング工法』を使えば簡単に二種類のガラスが一体化するよ」

「その工法って金属加工以外にも使えるんですね」

「ガラスも金属も広義では土属性だからね。比較的簡単に流用出来たみたいだよ」

そういう意味なら塩も土属性だよなぁ。

「あの、塩は『カップリング工法』とは別に『 塩対応(シオッツール) 』が有るのは何故ですか? 塩も土属性ですよね?」

「あ、『 塩対応(シオッツール) 』は『カップリング工法』の派生なんだ。何でも【 砂の魔女(サンド・ウイッチ) 】タタラが岩塩同士を圧着しようとしていたんだけど、岩塩のご機嫌というか岩塩同士の相性が悪かったのか中々一体化しなくてね。ある時、あんなに相性悪くツンツンしていた岩塩の接地面がデレッと溶けてその瞬間に圧着が成功したのだと。そしてその魔法はタタラによって『 塩対応(シオッツール) 』と名付けられた……って話だよ。詳しくは図書室の蔵書を探して読むように」

岩塩関係ってツンデレ魔法なのかよ!!

Cane sing(ケイン シン) sin gain(シン ゲイン) . Take(テイク) need sin(ニード シン) . Oh! cool(オゥ クール) .

タタラはこの呪文を唱えながら岩塩を圧着したという。杖とか罪とかの意味があるとの事だけど、響きがそれ、敵に塩を送ってるんだけど……。