作品タイトル不明
第560話
三頭を部屋に残し、オロール先生の部屋に移動。改めて飲み直し、いや親子の団欒タイムに移行する。
「ミーシャと従魔の間で念話や会話が繋がっていれば私も会話出来るみたいだね」
「ボクが媒体ですか」
「死者の魂の口寄せも縁者を介して声を届ける訳だからね。その理論でいったら従魔とも会話出来るよ。実際、先月の里帰りの時にラパンと念話で通信していたからね。今回、一段階上の会話になったから少し驚いているよ」
「オロール先生、ラパンと念話したんですね」
「移動の時には話が通じた方が楽だろう? それにしては拗らせたポニーだったが……」
ラパンの拗らせって何に対してだろう? 張り切ったり煮え切らなかったりの格差が激しい子だとは思うけど。
「ラパンは気分にムラのある子なので」
「あははは、確かにそうだ。それよりもコカちゃんに酒ババと呼ばれてしまったね」
「ボクはヒゲママですよ」
「どちらも間違ってないねぇ……」
「それより、親子で会話するのにどの言語を使うのかが面倒ですよね」
「そればかりは仕方ないね。ミーシャが古代エルフ語を話せるのはスキルか何かだろ?」
「はい」
「待て待て、今、防音の呪文を唱えるからね」
そうだ、転生に関わる話題は要ヘネシーの呪文だったな。
「ボクは、多分 三毛皇(みけおう) 閣下もそうだと思いますけど、異世界からこちらの世界に転生してくる時に翻訳スキルを取得しているんです」
「それが初めて会った時から私と会話出来た秘密か」
「はい」
「でも、よくまぁそんなスキルを貰えたね」
「そもそもボクのいた世界ではボクの国の言語体系が少々特殊でして、他国の人が習得するにはかなり苦労するんです。逆もそうなんですけど」
「なるほど、他国では通じない或いは通じ辛い言語で暮らしてきた訳か。それで翻訳スキルを欲してしまったら生えていた……と」
「多分そうだと思います」
いや、自分で選んで取得しましたけどね。それもこれもラノベ知識様々ですよ。もし日本に異世界帰りの人が増えたら、大学に人文学部、経済学部、理学部、農学部、医学部なんかと同様に転生学部が出来るかもしれないぞ。きっと転生時に使える知識を総合学習する学部なんだろうな。一年生は無人島でサバイバルとかさせられるんだろうか?
でも、折角ファンタジー世界に使える知識を詰め込んだのに、SFバリバリのスペースオペラなワールドに転生したら微妙だろうけど。後は魔族側とか魔獣側に転生しちゃうとかね。覚えていた事は恐らく役に立たないんじゃないの? いや、そもそも転生学部は存在しないか。
「しかし、よく転生を受け入れられたね」
「ボクの国は宗教や神様の概念も緩くて、生まれ変わりも否定しない風土だったので。それこそ人が馬に生まれ変わる、幽霊になって彷徨うといった 怪異現象(オカルト) が否定しない風潮もあるので」
全ての人がそうではないですけどね、と付け加えておいたけど。
「それが 三毛皇(みけおう) 様がヒトからネコに転生しても平然とされていた理由なんだね。普通は受け入れられないものだよ」
「そうですよね」
「となると、親子三人だけで会話する時は古代エルフ語でも問題無いという事でいいかい?」
「そうですね。ボク達の方でスキル補正が入ると思います」
「そいつは凄いね。古代エルフ語も地域差が有ってね、ちょっとした違いで山一つ向こうの生まれだと分かったりするものだ」
「そんなに差が?」
「微妙な差なのかね? それでも偽息子かどうか位は分かるねぇ」
「偽息子ですか?」
「ああ、それはだな……」
その昔、偽息子に扮してお金を無心しようとしたダークエルフが捕らえられた事が有ったのだとか。何でも、偽息子の微妙な言葉使いの違いで母親は目の前にいる相手が偽息子であると看破したのだという。
そしてオロール先生は【翻訳コニャック】を多飲しない事で身体に負担を掛けない事を選択したと告げてきた。どうやら少しでも長く親子の時間を楽しみたいらしい。それとコカちゃんの 解毒(デトックス) で身体が軽くなったのが相当気に入ったみたいだ。
まぁ、どうせ授業中は【翻訳コニャック】は禁止だし、どのみち親子三人以外の誰かが居たら共通語を使うしかないからね。俺とミケヲさんは養子縁組に伴い古代エルフ語を話せる様になる特殊なスキルを取った事にしておけばいいだろう。
「明日の作業は忙しいのかい?」
「はい。【ホヤッキー】研磨の指導を受けてきます」
「夕方までには 三毛皇(みけおう) 様の登録が終わると思うよ」
「お祝いしないとですね。おもてなし料理の事は全く考えてなかったですけど」
「だったら……帰りに『紐屋』の生パスタと【 玉菜(キャベツ) 】とお肉とソース、それと適当なパンを買ってきて下さい。お肉は【プラントオーク】でも猪でも。無ければソーセージかベーコンでも大丈夫です。飲み物はエールがいいと思います。商業ギルドのいつもの部屋を借りられたら安心ですけど」
「買うものはメモしておいておくれ」
よっしゃー、明日は焼きそばパンだ。ラーメンの麺が無い時は重曹を溶かしたお湯でソーメンを茹でたらラーメンみたいなモチモチ麺に早変わりする裏ワザを流用する。生パスタだから少しモッチリ系ではあるが。ウスターソース系は普及しているのでソース焼きそばにはなるだろう。