作品タイトル不明
第537話
「よう、ミーシャ、久し振りだぜ。今日はだな、面白いモンを見つけたって話をしたくてミーシャを探してた。それより俺に話があるって何事だぁ?」
商業ギルドの入り口で、足元から馴れ馴れしく声を掛けられた。つまりアルチュールさんって事だな。よかった、これで【カミチスイコウモリ】を押し付けられるぜ。あばよコウモリ!!
「アルチュールさん、おはようございます。アルチュールさんのお話って何ですか?」
「おうよ、面白い草を見つけたから持ってきたぜ」
面白い草? 【 魔増(マゾ) 】っぽい何かなのか、それとも美味しい植物か。はたまたスパイスか。めっちゃ気になるぅぅ。
「で…な、コレよコレ。 木賊(とくさ) の仲間なんだとよ」
そう言いながらアルチュールさんが見せてきたのは細くて小さい 木賊(とくさ) に似た植物だった。デカ過ぎるスギナとも言うな。
「えっ……!? 木賊(とくさ) っぽい。鑑定してもいいですか?」
「おうよ」
(鑑定)
【 細草(こまくさ) 木賊(とくさ) 】:草体が細かく枝分かれした 木賊(とくさ) 。別名は 杉並(すぎなみ) 木賊(とくさ) 。
前世のスギナと 木賊(とくさ) を足して二で割った様な風貌である。通常の 木賊(とくさ) よりも目が細かい。これは野生個体であり、時間は掛かるものの 木賊(とくさ) の様に肥料の与え方等で品種改良する事が可能である。
マジか!! これ、粒度の細かい 木賊(とくさ) だぞ。しかも年数を掛けて改良する事が出来るって出てるし。
「これ、凄い植物です。ボク、幾ら支払えばいいですか?」
「いや、金はいい。俺が勝手に掘ってきただけだからよ」
「それなら、お酒を奮発します」
「 悪(わり) ィなぁ。集るつもりじゃなかったんだがよ」
「いや、クルラホーンはお酒を集ってナンボでしょ?」
「まぁ、それはそうなんだけどよぅ……」
「それよりこれ、新種とかではないんですよね?」
「市場に出回らないだけで古くから知られてはいるぞ。尤も、ドワーフが知ってるかどうかまでは知らねぇけど」
「だったら 商業ギルド(そこ) に入りましょう。時間は大丈夫です?」
「夕方まで飲む時間は持ち合わせてるな」
つまりヒマなんだな。多分、俺を見つけて酒を強請るつもりだった……と。さて、俺の方もコウモリの話をしないとな。
「アルチュールさん、ボクもアルチュールさんにお話したい事がありまして。職校経由で探してたんですけど連絡は届いてましたか?」
「ん? …あぁ……、どうだったか」
あちゃ〜、これは連絡がついてないっぽいわ。
「あのですね、アルチュールさん、【カミチスイコウモリ】って知ってますよね」
「カミチスイか? あの空を自由に飛べる背中装備の」
クルラホーン的にはそんな認識なのか。
「はい、その【カミチスイコウモリ】なんですけど、アルチュールさん要ります?」
「要りますってどう言う事だ?」
「文字通りなんですけど、ボク、二日ほど前に【カミチスイコウモリ】を捕まえました。今は職校で預かっててもらってるんですが、アルチュールさん要ります? 要らなかったら野に放ちますけど」
「テイムしてないカミチスイって事だよな」
「はい。赤ワインを飲ませただけです」
「うっわー、マジかー。俺、欲しいわ。欲しいっていうか空飛んでみてぇ」
♪俺、妖精 羽生えてない、はい飛べない
空飛べる妖精 それフェアリー
空飛ぶ妖精 空飛ぶ要請
そこに現る 神の血吸い取るコウモリ
BUT飛べる BAT飛べる WoW〜♪
突如始まる即興ソング。フリースタイルかよ。取り敢えず興味がある事は判明した。
「あの、どうやって飛ぶんですか?」
「どうするもこうするも、背中に着けて飛ばせるだけだな」
「テイムして…って感じです?」
「一応はな。俺はテイムしたくねぇけどな」
「何故です?」
「何故って、そりゃー餌をやれねぇだろ?」
「あっ!!」
「俺らクルラホーンだとカミチスイに餌を買ってやれねぇからな」
そうだった。レプラコーンやノッカーやブラウニーだったら餌の赤ワインを買ってあげられるけど、そもそもクルラホーンは自分ではお酒を買うことが出来ない。赤ワインを貰って【カミチスイコウモリ】に飲ませるぐらいなら自身用に回すに決まってる。
「確かにクルラホーンだとテイムが厳しいですね」
「使い捨てするんならいいだろうけどな。……って、俺らは使い捨てはしないけど」
「優しいんですね」
「違うぞ。自由に酒が飲めない辛さは俺らクルラホーンが一番よく分かってるからな。酒も飲ませず飼い殺しちまったら、それこそ夢見が悪いだろうが」
あ…、そっちの理由か。それは俺もドワーフだから少しは気持ちが分かるけど。
「じゃあ野に放ちますか」
「いや、俺は空を飛びてぇ」
「一回ぐらい試します? ボクが【カミチスイコウモリ】に赤ワインを飲ませてお願いしてみますよ」
「頼む」
「その前に、【 細草(こまくさ) 木賊(とくさ) 】のお礼をしないと。ボク、これから商業ギルドに用があるんですけど、差し支えなければギルドに行きません? 希望のお酒を手配しますけど」
「行く、行く!!」
商業ギルドで【 細草(こまくさ) 木賊(とくさ) 】について色々と質問してみようとしたら、逆にアルチュールさんが質問攻めになった。
「アルチュールさん、この【 細草(こまくさ) 木賊(とくさ) 】はどちらで見つけられました?」
「ん……? あぁ……向こうの方だな。『ネオラグーン』の方に向かって行ったら山の近くに生えてたな」
「近くに何か有りませんでした?」
「何かって、 鉱山(ヤマ) 的な何かか?」
「はい。未確認の鉱山でも廃鉱でも、何か見えませんでしたか?」
「見えるも何も俺から見上げると全部が山だぜ」
「そうですよね……」
「そう言えばズリっぽい石が落ちてたな」
「廃鉱の可能性有りですね。もしくは鉱山として魅力がなく採掘に至らなかったか」
ええっ、この草ってそんな重要な植物だったの!? アルチュールさん、もしかしてお手柄???