作品タイトル不明
第536話
ミケヲさんをオロール先生に引き合わせる前に松茸料理の準備をせねば。生パスタや鶏肉、玉子は出掛けに市場に寄ればいい。どうせ落ち合う場所はいつもの如く商業ギルドなのだから、足りないものはギルド経由で購入出来なくもない。ちょっとコスパが悪いけどね。
それにデンプン由来の商品とかは商業ギルドで買った方が安かったりするので、春雨こと芋麺は商業ギルドで購入だな。松茸のお吸い物に春雨を入れたいのだ。本当は料亭みたいに土瓶蒸しにしたら高級なんだろうけど、転生者バレ防止でスープっぽくして提供だよ。多分、ミケヲさんが土瓶に入れたらいいじゃないって言ってくれるよ。
オロール先生には十時過ぎに商業ギルドに来てもらうとして、俺は先に部屋を出て買い出しだ。真っ先に商業ギルドに向かい芋麺を手配する。
「ミーシャおはよう。【サモン】の良いのが入荷してるけど要る?」
「【サモン】ですか?」
「【セット・フィレー】が入荷してるよ」
「それ、良く分からないので見せてもらってもいいですか?」
「いいよ。【セット・フィレー】は塩引きサモンのカマの部分だよ」
(鑑定)
【セット・フィレー】:塩引き鮭のカマの部分。別名、 一鰭(いちびれ) 。『ビレッジアップ』の名産品。一尾から一組・二個しか取れない高級品であり、かつては神や貴人、家長に供した。
あ、鰓の下の身が始まる箇所の事なんだ。あの弓形になった硬い骨のある、胸鰭のカマの箇所。偉い人に出す部位って事ならミケヲさんに丁度いいか? 塩分濃度が不安だけど、最悪オロール先生に食べてもらえば大丈夫だろ。古代エルフ基準では薄味だって言われたら困るけど。
「買います!! 三毛皇(みけおう) 閣下にお出ししても恥ずかしくない部位ですね」
「俺は尾の身の方が食べやすくて好きだけどね」
「確かにそうですよね」
「今日は何を作る予定? また危険なやつ?」
「危険かどうかは分かりませんが、【タロール茸】を使った料理を何点か作ります。多分、独特の匂いが漏れると思うので先にお伝えしておきます」
「臭いに注意。はい、了解」
「【トリル茸】を使った料理みたいに周囲をパニックに陥れる事は無いと思います………(多分)」
そう、【トリル茸】を使った料理は高級料理なので、その匂いが下手に漂うと「畜生、食わせやがれ!!」な輩が湧いて出てきたりするのだとか。
プープー プープー
「あ、カトリーヌも連れて来てたんだ。ナオが会いたがってた。ブラッシングしてあげるんだと言って、なけなしの小遣いでタワシを買ってたよ」
「そうなんですか? 今日の料理はカトリーヌがお手柄だったので作れるんですよ。なので 三毛皇(みけおう) 閣下に料理をお出しする時にカトリーヌには立ち会ってもらう予定でして」
「じゃナオと遊んでは貰えないか……」
「料理を提供する前、小一時間くらい 三毛皇(みけおう) 閣下とオロール先生が対談する時間があるので、その時なら預けてもいいですよ」
「有り難い。あれからナオが【手持ち豚】を飼いたがって仕方なくてね。 「私がお世話するから飼ってもいいでしょ?」 …って、しつこくてかなわない」
「ペットあるあるですね。最終的にお世話するのは母親だという」
「【手持ち豚】は便利だから飼ってもいいんだけど、生き物だから安易に手を出されても困るし」
「はい。そう思います」
「ミーシャにそう言われても説得力が薄いんだけどねぇ……」
ズキーン!! それ、胸に突き刺さるワードよ。俺は好きで仲魔を増やしてるから良いんだよ!!
「ナオ=エーツさんにはお世話するだけでなく、餌やお世話道具を買う為のお金も沢山必要だって教えてあげてください」
「ミーシャは権利金で稼げるから従魔が沢山居ても何とかなるからねぇ」
「それと皆、それなりに稼いできてくれますし」
「確かに。食い扶持くらいは稼いでるでしょ」
プキィ
ムキュウ
アンディーも梁の破損を見つけてきたり毒キノコの報告だったりと不定期に小銭を稼いでくるので、従魔同士で稼ぐ稼がないのマウント合戦にはならないと思う。
「ボク、市場も回ってきます。十時前には戻りますので」
「その時間ならナオも来てるよ」
「五の日でも見習い業務があるんですね」
「本来ならお休みにするんだけど俺が出勤日だし、それ以上にカーン兄が居るからねぇ……」
苦笑いするホーク=エーツさんを横目に市場へ向かった。必要なものを買い、少し萎びた野菜も買う。
そして通りかかったお肉屋さんで見つけてしまった…… [ バサルトタートルの肉、入荷しました ] の貼り紙!!
【バサルトタートル】の肉はまだ食べた事は無いけど、スッポン的な感じだと思えばいいって事だよね? まぁ前世でもスッポンも食べた事は無いんですけどねっ。
提供するならスッポン鍋かな? スッポンと松茸……料亭か!!
「すみません、ボク、【バサルトタートル】のお肉って食べた事が無いんですけど、どういった料理に使えますか?」
「スープにしてもいいし焼いてもいいよ。養殖物だから臭みも無いし、冬の滋養料理にぴったりだよ」
「スープって作るのに時間がかかります?」
「骨が砕けるぐらい煮込むんなら何時間もかかるけど、あっさり仕立てなら一時間もかからないよ。何だったらコマ肉にするかい?」
「お願いします。後、正肉と、骨付きのお肉も少し欲しいです」
「はいよ。全部で銀貨八枚だよ。脂もオマケしておいたから」
「ありがとうございます」
スッポン料理か……鍋だな。後は唐揚げ? いや、スッポンスープで松茸を……。とは言うものの、俺はドラマやグルメ番組でしか見たことが無い。
まぁ、鶏肉みたいに使うしかないよね。
ちなみに甲羅は素材として取り引きされているので当然ながら 肉屋(ここ) には置いていなかった。