作品タイトル不明
第450話
「それで仮説の件なんだけど、大きい魔石は魔力の流れを整える為に表面を研磨したりする。そして魔石に内包する魔力を使い切った後に再充填をするんだけど、再充填した魔石は何故か表面が荒れるんだよ。どうも、魔石という器に魔力が籠められる際に外側に魔力が溢れると言うか滲み出る性質があるみたいでね、魔物や魔獣の体内で魔力が貯まって魔石になるときも同じように成長している可能性がある…と。何が悪いのか分からないけど、幾度か魔力の再充填を繰り返すと魔石に魔力が入らなくなる。魔力の抜けた魔石の表面を整えても魔力が入らない。再充填されて魔力の籠もった魔石の荒れた表面を整え、そこから魔力を使い切ったものになら再度、充填を試みることは出来るのだけれどね。なので、表面の滑らかさが鍵ではないかと錬金術師の間ではそう推測されているよ」
「そんな話が有ったんですね」
ち……ちょっ、それって俺が『関所の集落(仮)』で小さな魔石滓を研磨して魔力を籠めてしまった話と同じなんじゃあ……。
「何が悪さするのか分からないんだよ。なので、この話は研究対象にされてはいるけど積極的に研究はされていないんだ。そこまで再生魔石を作る無理をしなくとも、中型サイズの魔石を数回再充填すればいいと言う事なんだって」
「それでもハーレー先輩がこの件に拘る理由は何ですか?」
「憧れかな。大きくても小さくても魔石は魔石でしょ? 小さい魔石だって再充填して再生魔石にしたっていいと思わないかい?」
「小さい魔石が再充填出来たら便利なんですかね?」
「魔石の価値が暴落する気もするし、何より魔導ガラス業者が困る事になると思うよ。簡単にポーション瓶が作れなくなるもの」
「それは困りますね」
「本当は別な実験がしてみたいんだよお。小さな魔石の滓に中型魔石相当の魔力を再充填してみたいんだよねぇ〜」
「それって危険じゃないんですか?」
「どうだろうねぇ〜? 弾けるかもしれないしぃ、膨張するかもしれないしぃ〜、魔石が内部崩壊して消滅するかもしれないなあ……」
「ええっ!?」
「どうなるかは誰も知らないんだけどねぇ……。見てみたいなぁ……。ミーシャもそう思わない?」
「そっ、それって怖いですよ……」
「わたしは知らないで終わることの方が怖いと思うよお」
いや、俺は何気なく小さな魔石滓に魔力を籠めてしまった事がある訳で、小さな魔石滓に無理矢理大量の魔力を籠めてみた時に バーン!! って破裂したら嫌じゃないか!! いや、籠めた直後は平気でも魔道具に組み込んだら破裂するのも困るし、内部崩壊して謎のエネルギーを放出されても困るぞ。爆発ならまだしもブラックホール化しない保証も無いぞ。
「この話ってボクに話して大丈夫なんですか?」
「大型魔石の再充填利用は錬金術師になれば知ってしまう話だからねぇ。一応、大きな魔石は手間だけど再充填出来るって事になってるから、再充填に関しては大型であれば不可能では無いって話だけで言えば知ってても問題ないよぉ〜」
「つまり、ハーレー先輩の妄想は危険思想って事じゃないですか」
「だねぇ……。学生のうちに試したかったんだけどなぁ〜。組織に縛られたら実験するのは無理だもの」
「もし、ボク達が実験して成功しそうだったらどうするんですか?」
「その時は錬金術ギルドや魔道具協会と対立しても独立するかなぁ。独立資金はミーシャが居るから何とかなるよお」
「そこで何故ボクの名前が出てくるんですか?」
「そりゃぁ、沢山開発させて貰ってるからねぇ〜、わたしに権利金が沢山入るものねぇ。うふ、ミーシャ様様だあ」
ちょっと心配して損したよ。そして下手に小さな魔石の再充填に協力したら厄介な話に巻き込まれそうな予感。俺としても興味は有るけど止められてるからね。そして下手に成功しても責任が取れない。
「ハーレー先輩には申し訳ないけれど、ボクはこの話は聞き流した事にしておきます。もし小型魔石を研磨する事が有ったら結果報告しますね」
「期待しないで期待しとくよお」
前世で卑金属を黄金に変える錬金術に憧れる人がいた様に、この世界だと魔石滓を魔石に戻す 術(すべ) が憧れなんだなぁ。
何故俺がそこの可能性に触れる事が出来てしまったかは分からないんだけれどね。
「さて、この話は終わりにしようか。頭の片隅に入れておいてくれれば嬉しいかなぁ〜」
「ボクは出来れば忘れたいですけどね」
「そうそう、次はわたしの部屋に何時遊びに来てくれるのかなぁ?」
「しばらくの間無理だと思いますけど。文様学や強化石なんかの合同講義に出ますし、農作業体験にも行ってきますから」
「あ、時々あるアレね。文様学は面白いよお。魔法陣と全く別物なのに何故か効果が噛み合うんだよねぇ」
「面白いんですね」
「魔法陣と文様との相性を考えたらアタマが痛くなると思うよぉ。そこに更に強化石や素材の組み合わせの相性が絡んでくるしい〜。まぁ、最初は楽しんで学んだ事を試すのがいいと思うよお」
「情報ありがとうございます」
「んふっ、魔法陣無しでも錬金術モドキの効果が発動しちゃったりするからねぇ…。魔法陣が使われてないのに真っ青な顔で機構を確認する錬金術を見たらねぇ〜、楽しくて仕方ないよお」
どうやら文様のもたらす効果は意外と錬金術師泣かせらしい。