軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第420話

まさか、商業ギルド前でジョー=エーツさんに遭遇するとは思わなかった。顔を見るのは数カ月ぶりだけど、お元気そうで何よりです。

「あ、もしかしてジョー=エーツさんですか?」

「ああ、そうだぞ。ミーシャ久し振りだな。元気にしてたか?」

「はい、お陰様で。あれから色々ありましたけどね」

「風の噂で聞いてる。そのせいで俺の一家はドワーフ領内をドサ回り中だ」

そう言えばチーウ=エーツさんが、カークェイ=エーツの玄孫でギルド総マスターのマッキー=エーツ女史の下に大量の登録案件の説明をしにジョー=エーツさんが夫婦で出向くとか言ってたな。それで確か娘さんのナオ=エーツさんを預かるんだったよね。

「立ち話も何だからな、商業ギルドの中に入ろうじゃないか」

「あ、はい」

「支部長、悪い、会議室を借りるぞ」

商業ギルドに入るなり、そう一言告げると許可も取らずに会議室に向かうジョー=エーツさん。その後ろを付いてくるのが奥さんのカー=エーツさんか。本家の人なので偉いのは奥さんの方だったか。娘さんのナオ=エーツさんはまだ髭が生え揃ってないのか。年齢的にはアッシュちゃんと同じくらいか少し上かな? 個人的にドワーフで一番可愛いのは髭の生える前だと思う。

「ジョー、ちゃんとアポを取る!! 支部長が不在だったら申請書にサインしなさい」

「あー、カーさん、やっといてくれ」

「自分でやらないでどうするのよ」

カー=エーツだからカーさんなのか、それとも奥さんを母さん呼びしているのか。これ、絶対尻に敷かれてるよね? エーツ四兄妹って男性三人がちょっぴりポンコツなの? それともエーツ氏族って女性陣が強いの? だとしたら俺の目の前にいるピュア可愛いナオ=エーツさんも将来は豪傑化するというのか?

「うちの宿六がごめんなさいね」 そう言いながらカー=エーツさんが利用許可書にサインをする。その騒ぎを聞きつけたのか、奥の方からホーク=エーツさんが姿を現した。

「あ、カー義姉さん。お久し振りです」

「あら、ホーク、仕事中だったの?」

「はい。ジョー兄は相変わらずなんですね」

「ナオ、ホーク叔父さんにご挨拶なさい」

「ホークおじちゃん、こんばんは」

「ナオちゃん、今晩は。ようこそ『スワロー』商業ギルドへ」

「ホークおじちゃんは、パパの弟なんだよね?」

「そうだよ。出来ればホーク叔父さんじゃなく、ホークお兄さんと呼んで欲しいなぁ」

「あら、何ナオに下らない事を吹き込もうとしてるの?」

「カー義姉さん、カーン兄ならナオちゃんに 「おじさま」 って呼ばせようとしますよ」

「そう、カーン義兄さんは一度キッチリ締めなきゃ駄目なのね……」

ジョー=エーツさん一家に続いて俺も会議室に入室する。その後ろからホーク=エーツさんも付いてくる。ドキッ、エーツだらけの会議室ってか?

「初めまして、ミーシャ=ニイトラックバーグです」

「初めまして。ジョーの妻、カー=エーツです。この 娘(こ) が噂のミーシャ=ニイトラックバーグさんなのね」

「初めまして、ナオ=エーツです」

ジョー=エーツさんが書類の束をマジックバッグから取り出す。積み重なったそれは下手な月刊漫画誌より厚いんだけど……。少年漫画誌の週刊J誌、S誌、M誌、C誌を積んだぐらい厚い。

「これが今回申請が通った発案品とその仕様書及び関連事業案のリストだ。マッキー=エーツ女史に説明するのは勿論なんだが、各領内の各ギルド及びギルド支部に報告と説明するのが大変で仕方ない訳だ」

「これ…ボク関連ですよね?」

「一応はな。ガルフ=トングに押し付けた分も含むぞ。とにかくミーシャ関連と言う事だけは確かだ」

「スゴイデスネー……」

「おいおい、発案者がその顔か?」

「ジョー、そこで威圧しない!! これだけ有用案を出してくれたんだよ。感謝の言葉を述べるならまだしも、文句を言うとかお門違いよ」

「ホークおじちゃん、今のはパパが悪いですか?」

「そうだね」

「でも、ジョー兄の気持ちは分からなくもないけど…」 とホーク=エーツさんがボソッと呟いたのを拾ってしまった。

「なにせ派生が凄いことになってるからな。俺が知らない事案も増え続けてるし……」

「それのせいでカーン兄が戻ってきてないよ」

「カーン兄貴も何処に行ってるやら」

「ヒト族領。兎の耳のカチューシャを売り込みに行ったっきりだよ。戻って来たかと思えば直ぐ出掛けるし」

あ……それか。辻占せんべいのせいで業務が増えちゃったからなぁ。

「それは最新の案件の方に合ったやつだな。売り込み時期が時期だけに至急マークが付いてた。そのクセ派生がいきなり増えてこっちが慌てたやつじゃねぇか」

「それで、ナオをあまり激しく移動に付き合わせるのも良くないでしょ? そろそろお願いしようと思ってこっちに寄ったわ」

「最初は勉強にいいかと思って同行させてたんだが、こうも増えると……」

「髭無しにそこまで頻繁に転送陣で移動させたくないのよ」

行商人の一家の場合、子供を連れての行商は馬車移動が基本なのだとか。大人でも人によっては転送酔いには苦しむのだ。大人だったら状態異常回復薬を服用して転送酔いを覚ませばいいけど、成長期の子供にはあまりお勧め出来ないよね。

「私の方のエーツ氏族は転送酔いも酒酔いもしないけど、ジョーの方のエーツ氏族は……ねぇ」

「それは本家と分家の差だろ。仕方ないじゃねぇか」

「ジョー、ナオが心配じゃないの?」

「それは心配に決まってる。こんな状況でなきゃカーン兄貴の家に預けたくないぐらいだ。まぁ、酒の方はホークが居るから心配は無いんだが……」

「そこはチーウに期待しましょう」

「カーさんや、チーウも結構アレなんだぞ」

「カーン義兄さんに預けっぱなしにだけはしたくないわ。ミーシャ=ニイトラックバーグさん、何だったらもっと商人を動かす発案をしてちょうだい。家に寄りつけないくらいで頼むわ」

「おい、待て!! それだと俺らの仕事が終わらなくなるぞ」

「あら、アナタ一人で行けばいいでしょ?」

これがエーツ一家の団欒!? そんな訳はないか。