作品タイトル不明
第359話
「サッキュバスとかインキュバスって聞いたことくらいあんだろ?」
「はい。性的に魅了してきて 致(・) し(・) て(・) くる魔物ですよね」
「そうそう。そいつらがアンデッドって情報は?」
えっ!? 淫魔ってアンデッドなの!?
「サッキュバスとインキュバスってアンデッドなんですか?」
「あいつらは元が水子だからな。水子は分かるよな? 生まれ落ちる事が出来なかった水に流れた 子供(ガキ) の事だ」
「はい、分かります。サッキュバスとインキュバスってそんな存在だったんですね」
「別にサッキュバスもインキュバスも 致(・) そ(・) う(・) と襲って来てる訳じゃなくてな、未だ見ぬ親を、母性や父性を求めて寄ってきてるだけだ。ただ、 子供(ガキ) が産まれてくるって事は 致(・) し(・) て(・) ナ(・) ン(・) ボ(・) だからな、それだけの話だ」
「知らなかったです」
「似た様なアンデッドでヴァンパイアがいる。あいつらは魅了してきて吸血するが、その時に 性的興奮(エクスタシー) を感じるらしいからな」
致(・) さ(・) れ(・) て(・) アンデッドの眷属にされるか、吸血されてアンデッドの眷属にされるか、その差なだけなのかよ。どっちにしても出会いたくないな。
「そして聖女ガブ=リヨルはアンデッドを祓うことに長けていて、サッキュバスもインキュバスもヴァンパイアも退けたって伝説が残っている。そして聖女ガブ=リヨルの 御印(みしるし) が百合の花だ」
「つまり、【百合の 星留(ホシル) 】には聖女ガブ=リヨル要素もアンデッドを祓う要素もあると言う事ですよね」
「正解!」
「教えてくださりありがとうございます。この後何か物語が浮かぶかもしれません」
「まぁ無理すんな。さて、それ持って商業ギルドに行くか。その【 星留(ホシル) 】の形状も面白いからな。それも登録しとかねぇとダメだ」
あ〜〜、結局、ラルフロ=レーンさんも一緒に商業ギルドに行くパターンだよ。
商業ギルドに行ったらカーン=エーツさんが大黒帳?を開いていた。何を計算しているのか知らないけど真面目に見えるぞ。
「あれ、ラルフロ=レーンやん?」
「ん? カーン=エーツ、仕入れか? それとも報告か?」
「あれ、ミーシャはんも一緒やん」
「おはようございます。ラルフロ=レーンさんの工房に用事があったので寄ったんですけど、名称登録が発生したので同行してもらいました…というか、ラルフロ=レーンさんが付いてきました」
「そうなん」
「あ、ミーシャ=ニイトラックバーグ、おはよう。試作の準備は出来てるよ」
(「ホーク、シーーッ………」)
「ん? 試作すんのか? 食いもんか?」
「いや、ちゃうねん」
「俺はどうせヒマだからな。味見してってやるぜ」
(「あほ!! ホークのあほーー!!」)
結局、ラルフロ=レーンさんも辻占せんべいの試作に混ざる事になった。カーン=エーツさんがボソボソ言ってたのはスキルを使用した小声での会話で、密談ならぬ『 談密(だんみつ) 』。『 談密(だんみつ) 』スキル持ち同士なら、相手を指定してやればヒソヒソ話が普通に聞こえるというスキルで『念話』の下位互換。『念話』はかなりの上位スキルなので大抵は『 談密(だんみつ) 』でヒソヒソ話をする模様。ただ、所詮はヒソヒソ話なので小声の囁きが音漏れして聞こえる人には聞こえてしまうのが難点。商業ギルドで 「頭の中が真っ白になって……」 と言う謝罪文句を『 談密(だんみつ) 』する母親の声が息子だけでなく他者にも聞こえてしまった食堂の親子の謝罪なんかは有名です。
「で、クッキーを作る訳か」
「せや」
「で、中に仕込む印を付けた紙を鑑定結果を隠す様にシールすると」
「せやで。恋人探しのクッキーや。引く時にワクワクするやろ?」
「まさか、鑑定結果を隠したり、要人宛ての手紙を保護する目的の封印術を遊びに使うとはな」
「な。ヤバいやろ?」
「ああ。あり得ねぇな。だが面白い」
「一回のみ保護出来るやつでええよね?」
「複数回保護してどうする」
「それはそれで揺れ動く乙女心みたいでええやん…」
「それは乙女心じゃなくて浮気性だ。貴様と同じだぞ」
「いややわ、浮気性やのうて博愛精神って言うてくれへん」
「言わねぇわ」
漫才の様な二人のやり取りを目の当たりにすると、どうしてもクスッと笑ってしまう。
「お二人って仲良しなんですね」
「ちゃうわ!!」「違う!!」
「自分らが仲良しやったらミーシャはんもお仲間やで」
「え………ボクは仲間外れでいいです」
「今更だろ。俺らは “ 同じ樽の酒を飲んでる ” だろうが」
「 “ 同じ 坑道(アナ) を掘った仲間 ” とも言うんやで」
同じ釜の飯を食うって表現のドワーフ語版って事だね。お願いだからそこに俺を混ぜないで!!
「割って楽しむ菓子やけど、ギャンブル性も欲しゅうない?」
「えっ? 俺はそのままでいいと思うけど。その【 クジ引き(ロット) クッキー】はそれで完成形だと思うけどね。カーン兄貴はバクチしたいの?」
「バクチやのうて、選択肢って言うかな、もう少し色々当たれば売上的にも 面白(おもろ) いんやないんかな〜? って思うてんねん」
「だったら【クラッタラトル】方式にすりゃあいいんじゃねぇか? そこの景品に【 クジ引き(ロット) クッキー】を入れとく。【 クジ引き(ロット) クッキー】だけやりたい奴はそれ専で買わせればいいだろ」
「せや、【クラッタラトル】があったわ。回してポン、ガラガラポンや」
「【クラッタラトル】って何ですか?」
「回転式抽選機だよ。商業ギルドの倉庫にもあるから見てみる?」
【クラッタラトル】を見せてもらったらガラポンこと福引の回転式抽選機そのものだったよ。多分、俺より前の日本人転生者が伝えたやつだ。異世界では【クラッタラトル】という名前だけど “ 喰らったら取る ” ではない模様。ガラガラとかガチャガチャとかそんな音がするからそう呼ばれている。ニュアンス的にはガラポンと変わらないんだな。