軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第343話

ウミユリの化石の前にロードナイト三点の再チェックをする。目立つキズも気になるクラックもヘコミも無い。所謂、#800耐水ペーパーで表面を整え終わった状態だ。出来ればもう少し細かい番手相当の 木賊(とくさ) があれば…。まぁ砥石で対応出来なくはないけどね。ラルフロ=レーンさんに頼るか職校に頼るかだろうな。

木賊(とくさ) は栽培でどうにかなるけど、どうしても番手のバリエーションが寂しい。砥石の微粉末を紙芭蕉に塗布固着して耐水ペーパーみたいな物、【 人造(ドワーフメイド) 木賊(とくさ) 】みたいのが作れないかな。俺はコスパより利便性を求めているのか…。金剛砂みたいな物は存在しているから採算度外視なら…。いかんな、採算が取れないものは自己満足の私用品だ、それでも使いたい 人(ドワーフ) が増えたら生産コストが下がるかもしれない。そうだ、耐水ペーパーこと【 人造(ドワーフメイド) 木賊(とくさ) 】を卒業研究にしよう。って、先月入校したばかりなのにもう卒業研究の検討かよ。しかも最長で六十年先の話なんだがなぁ……。

三個まとめて『浄化』をかけ、拭き草で包んで『 次元収納(インベントリ) 』へ。三時の鐘が鳴ったので休憩だな。午前十時と午後三時には休憩を知らせる鐘がなる。鐘と言っても激しく打ち鳴らす訳ではないので集中し過ぎていると聴こえないレベルだ。始業、昼、終業の鐘はもう少し大きいけど、それも無視出来るレベル。それにフルタイムで作業する必要もないので儀式的というか様式美というか慣例なんだろう。実はこの午前十時と午後三時の鐘はオヤツタイムを知らせる鐘ではなく、魔道具を休憩させる時間を知らせる鐘が由来だった。今は二時間でヒートしたり魔石が尽きたりしないけど、昔は二時間強が連続使用の限度だったとか。なので、本来は魔道具を停止し魔石の交換を知らせる鐘だった訳ね。

三時か…。四時半までには作業を終えてお風呂を済ませてパイクお義祖父さまの家に向かわねば。

「おーう、今大丈夫かー?」

「はい。休憩してます」

「お前さんも風呂は好きか?」

「はい、大好きです」

「おーう、いいね。ところであんた、髭はどうしてる?」

「髭ですか?タオルで持ち上げてます」

「髭を浸けないのはマナーだからな。で、お前さん、コレ出来るか?」

そう言いいながら茶髪のドワーフが髭を空中に浮かせてきた。

「ええっ!? 髭が空中浮遊してる!!」

「これは時空魔法の一種でな、『 髭(テイ) 魔(マ) 泊(パーク) 』って言うんだよ。空間魔法なら『 飛空髭(ひくうてい) 』。『汎用魔法』でも『 髭陣(ていじん) 』という名前で同じ様に髭が浮く」

「俺は『 髭陣(ていじん) 』だな」

「おーう」が口癖の 人(ドワーフ) も髭を浮かせる。この 人(ドワーフ) は『汎用魔法』派なのか。

「どれでもいいんだけどな、髭を空中に浮かべられる様になると次元収納が使える様になるんだぜ」

「本当ですか!?」

「おーう、マジのマジよ。『キーボックス』と同じで種族特性だな」

「嘘か本当か知らないが、空間やら時空やらのコントロールの触りが髭を浮かせる魔法に含まれているらしくてな。原理的にはフェアリーなんかが浮いているのと同じなんだとよ」

マジか!?

「本当だったらお風呂も汚さなくて済むし、次元収納も習得出来て良いことずくめですね」

「髭を浮かせられる様になったらな、そのまま空中で髭をコントロールする様に色々と試すんだよ。そうやってたらそのうち生える」

「おーう、髭だけにな。生えるぞ」

「それ、本当ですか〜?」

「あー、信じてねぇな? フェアリーの浮遊は物理的な飛行じゃなくてな、魔法は魔法でも空間把握系な訳なのよ。俺等ドワーフは酔っ払った時に無意識に空間把握とコントロールをやってるんだよ。素地が有るって訳よ。そこに髭という身体の一部でありながら異物であるソレを空中浮遊させてやって次元収納を覚える訳だな」

「手っ取り早く言えばな、『キーボックス』もそうだけど次元収納は架空エリアに荷物置き場を作るだろ? 髭の浮遊は可視エリアに髭置き場を作る、それだけの話だ」

「えー、分かった様な分からない様な……」

「時空魔法も空間魔法も非属性魔法だから、覚えようと頑張れば誰にでも習得可能だしな」

「おーう、次元収納を覚えたらな、ドワーフ領内だと次元収納持ちはサイズはともあれ、割りと当たり前過ぎてそこまで気にも止められねぇんだがな、ヒト族の多いエリアに行くときは気を付けないとな。ポーター代わりにしようと攫われんぞ」

「普段からマジックバッグを使って、容量が少ない振りをしとくんだぞ。あと次元収納のサイズはスキルオーブで分かるけど他人に申告は不要だから常に隠して報告だぞ」

「色々と教えて下さりありがとうございます」

「丁寧な返事すんなぁ…。むず痒くなっちまう」

「それとだ、マジックバッグ詐欺はするんじゃねぇぞ」

「はい!!」

「そのうち寸劇芝居で見るだろうけどな」

あ……、あのマジックバッグ詐欺、ダメ、絶対!! のやつか。

「ところで、ドワーフでもお酒に弱い方ってたまにいるじゃないですか。その方ってどうなんですか?」

「どうって……」

「多分、習得し辛いと思うぞ。それで言ったら髭無しは習得してる奴の方が珍しいしな」

「おーう、何でまたそんな事を聞くんだ?」

「知り合いにお酒の弱いドワーフがいるので気になりまして…」

それでホーク=エーツさんが冒険者や商人ではなく、商業ギルド職員という文官職に就いていた理由が分かった様な気がした。