作品タイトル不明
第334話
あ…アンディーがまだ寝ていたいと言ったから寮の部屋に置いてきたんだった。カーン=エーツさんに紹介しそびれた。まぁ、そのうち会うだろうから今日はいいか。今のうちに市場で餌の野菜を買っておかないとね。アンディーは苦味が強すぎなければ野菜と果物は何でも食べる。茹でただけの芋類も食べるしな。トウモロコシは生でも茹ででも問題なかった。流石にトウモロコシの芯は食べなかった。という訳でピーマンを克服したパイクお義祖父さまの事はアンディーも一目置いている。というか、 巣箱(ケージ) の件もあるので尊敬している模様。素敵なご一家だったので俺としても実家が出来たみたいでちょっと嬉しい。ちなみにリンド=バーグさんの家はお兄ちゃんの家だね。
カーン=エーツさんが『反省のポーズ』を広める為に仕込み『飲み拳』をしに冒険者ギルドに出掛けていったところでパイクお義祖父さまが商業ギルド支部長に防音の魔道具の使用を申請した。まだ何かヤバいネタって有ったっけ?
「いや、ミーシャ=ニイトラックバーグには何を持ち込まれても驚かなくなったがね」
「それはどうかのう…」
パイクお義祖父さま、そこは否定しないで!! ぶっちゃけ何が残ってるのか教えてほしい。
「商業ギルド支部長、おりいっての相談が有るのじゃよ。ところで『スワロー』の拡張計画は本当なんじゃろうか?」
「まぁ、隠し立てする事も無いだろう。現在、『スワロー』は外縁部の拡張計画が進んでいる。現『スワロー』を市街地、拡張部分を郊外扱いにする予定だ」
「郊外の土地は個人で購入出来るのかのう?」
「いきなりだな。郊外は工業地区と農業地区が中心になる訳だが、そこで働く者の住居も必要になるからな。居住地区ならばある程度は売り出されるだろう。勿論、利用目的は個人宅及び工房に限られるだろうがね」
「なんじゃと。ミーシャ、良かったのう」
「えっ!? ボクには何が何やら………???」
「ほれほれ、家を買う話じゃよ」
「え〜〜〜〜っっ!!!!」
いきなり降って湧いた“ ミーシャ、家を買う ” 。ちょっとついて行けない。
「年明け早々、『スワロー』拡張計画が公式発表される。領都『ネオラグーン』からは開発許可が下りているよ。原因はミーシャ=ニイトラックバーグ、君なんだけどね」
「ボク…ですか?」
「おいおい、惚けられても困るんだがな。散々、追加産業を提示しておいてその反応は無いだろう。【 緋(あか) 茄子】、【デンプン】、拭き草、紙芭蕉の追加栽培の為の畑の確保。それらを使った商品を作るための工場や作業場の増設。原状、今の『スワロー』ではそれらを扱うには手狭でね。近隣に新しく町を作るにしても開拓しインフラ整備に建築に…では勝手が悪いのだよ。それよりならば『スワロー』に外縁部を増設した方が早いだろう…となった訳だよ」
「あ…、ボクのせいかもしれません」
「まぁ、ミーシャさんの仕業だったのね。凄いわよ。大々的なゴーレム開発や錬金施設を作るときでも外縁部を作ったりはそうそうない事よ」
うーん、これって喜んでいいのか?
「ミーシャ=ニイトラックバーグは確か獣魔枠で【 運魔(ウマ) 】を二頭保有していたね。それ用かね?」
「それが商業ギルド支部長、違うんじゃよ。ミーシャ、 ア(・) レ(・) を見せて差し上げるんじゃ」
「 ア(・) レ(・) ですか?」
「 ア(・) レ(・) じゃよ ア(・) レ(・) 。 母体樹(ぼたいじゅ) の枝じゃよ」
「あ、 ア(・) レ(・) でしたか。今出しますね」
そう言いながら 母体樹(ぼたいじゅ) の枝を鞄から取り出す。一応、普通の鞄に入れてあるのよ。
「 母体樹(ぼたいじゅ) だと!?」
「先日ミーシャがじゃな、職校の炭焼き実習の時にじゃ、サポートに来ていた検脈師の居る冒険者グループの『 脈(みゃく) 見役(みやく) 』とじゃな、【 木々奇鱗(きぎきりん) 】に侵された 母体樹(ぼたいじゅ) の治療を手伝ってじゃな、そのお礼にと 母体樹(ぼたいじゅ) が接ぎ木の枝を渡してくれたという事なのじゃよ」
「待て待て待て待て」
「冒険者ギルドに報告が上がっていると思うんじゃが」
「それは管轄外だな」
ですよね~。連絡がいくのは百歩譲って農業ギルドまでだと思う。
「 母体樹(ぼたいじゅ) が分身たる接ぎ木の枝を渡してくれたのじゃよ。そこら辺に適当に植えられぬじゃろう?」
「それはそうだな。然るべき場所に植えるのが筋だ」
「残念ながらミーシャには家が無くてのう。 母体樹(ぼたいじゅ) の期待に添えぬのじゃよ」
「それで、肝心のミーシャ=ニイトラックバーグは家を購入したいのかね?」
「はい。将来的には獣魔と過ごせる家が欲しいです。庭には 母体樹(ぼたいじゅ) を植えたいと思っています」
「【 運魔(ウマ) 】は馬車組合の厩舎預けで問題があるのかね?」
「いえ、ボクの獣魔は他にグライダー=カーバンクルと、もうすぐ孵化するコカコッコが居るので…」
「いきなり増えたな」
「ちょっと寮だと同居が厳しくなりそうなんです。かと言って非戦闘系の獣魔を専用の獣魔の預かり所に預けるのも気が引けるんです」
「まだまだ増えそうじゃしな」
パイクお義祖父さま、それ、増えるフラグだから!!
「確かにそれでは家を保有した方がよさそうだ。と言うか『スワロー』の上層部としては購入して欲しいのが本音だろうな」
「そうなんですか?」
「ミーシャ=ニイトラックバーグは『スワロー』拡張の一番の功労者だからね。家の一つも保有してもらわないと格好がつかないだろうよ」
「まぁ、それはよろしいですわね」
「本気で郊外の土地購入を考えているのならば私も推薦人に挙手しようではないか」
マジ!? マジでマジか!? ちょっと待って、頭の中の整理が追い付かない。でもこれってチャンスだよね?