作品タイトル不明
第273話
使い道がよく分かっていないけど【 時(とき) 刻みの 尖晶(せんしょう) 】と【磁鉄】を取り敢えず購入することにした。素材の確保は大事だからね。素材からデザインが生まれたりもするし。奮発して【 時(とき) 刻みの 尖晶(せんしょう) 】は小指一本分くらいの中サイズを一個、アーモンド大の小サイズを二個、【磁鉄】は割り箸を割った片側程度の細いものを一本買ってみることにした。会計は身分証引き落としで。先日のラパンとワギュの購入手続きで残高が激減したハズなのに特に何も言われなかったのが不気味だ。俺の知らない金が水面下で動いているに違いない。
「ミーシャ、まだ冒険者ギルドにおったのか。やれやれ間に合ったわい」
買い物をしていたらパイク=ラックさんが姿を現した。
「明日、商業ギルドから 三毛皇(みけおう) 閣下へ【 魔多々媚(マタタビ) 】の新年飾りを送ろうと思っておってのう。ミーシャが手紙を出すなら教えねばと思っておったのじゃよ。そうしたらホーク=エーツがミーシャは冒険者ギルドに行ったと教えてくれたんじゃよ」
「そうだったんですね。教えてくれてありがとうございます。ボク、お手紙書きます」
ラッキー!! 手紙はこれから書くとして、同梱する “ 黄金色の菓子 ” は何にするか…。前に考えたみたらし団子のタレにでもしようかな。だったらデンプンを練り上げたワラビ餅でも作ればいいか。どうせなら、蒲焼きのタレと焼き鳥のタレも入れてみる?
「パイク=ラックさん、 三毛皇(みけおう) 様にお菓子を差し上げるとして、鮮度を落とさずにお渡しできるでしょうか?」
「商業ギルドの備品に時間経過を遅らせる効果のあるマジックバッグがあるのじゃよ。レンタル料は少し高いがのう…」
「そうなんですね。時間停止かそれに準じる物ってあります?」
「有るには有るがのう、レンタル料が更に高いんじゃ」
「でも、 三毛皇(みけおう) 様に差し上げるなら鮮度は落としたくないし。ボク、商業ギルドで聞いてみます」
「何を差し上げるつもりなんじゃ?」
「それは、わら……、いや、商業ギルドでお話しします」
危ない危ない、ついわらび餅と口走るところだったよ。
商業ギルドに移動し周囲を確認してからパイク=ラックさんにわらび餅の事をコッソリと伝えた。
「今回はデンプンを練り上げて作る冷たいお菓子を差し上げようと思っています。それに【粗相豆】と水飴を混ぜたタレを添えます」
「それで鮮度の話になるのじゃな」
「はい。生物ですので輸送時に時間停止か、それが無理なら時間経過がゆっくりになるマジックバッグが必要なんです」
という事で商業ギルドの輸送業務担当に聞いてみる事にした。流石は商業ギルドというか、所有しているレンタル用マジックバッグは時間経過に関しては三種類あって、時間停止しないもの、時間経過がゆっくりになるもの、時間停止するもの、この三つに分かれている。それに容量が関わってくる。こちらは大中小の三種類。この組み合わせで九種類のマジックバッグが存在する。
ちなみに、容量無制限で時間停止というマジックバッグは存在していない。存在したらそれは【 神級工芸品(エクストラ・アーティファクト) 】と呼ばれるアイテムだ。という訳で俺のユニークスキル『 次元収納(インベントリ) 』は規格外なスキルだったよ。一般的な次元収納スキルは前述の九種類のどれかになる。それとは別に『キーボックス』は時間停止なしの極小〜小サイズだ。
「それでしたら、『容量=小・時間停止有り』が宜しいかと思われます。ミーシャ=ニイトラックバーグ様の場合ですとレンタル料は……一日あたり金貨一枚になります。黒猫印の配送便でスタッフに預けるのであれば返却までに掛かった日数分の金貨を自動的にギルド証より引き落としいたします。勿論、黒猫印のスタッフの持ち帰りではなく転送陣での返却でも構いませんよ」
想定内というか、そこまで高くなかったな。一日あたりのレンタル料がゴボウ二本と同じなのか……。ゴボウ、恐ろしい子!!
「では明日レンタル手続きをしようと思います」
「ありがとうございます。お待ちしております」
ちなみにレンタル料の基本の計算式は “ サイズ ✕ 時間停止の有無 ” 。大=金貨三枚、中=金貨二枚、小=金貨一枚。停止なし=一枚、遅延=二枚、停止=三枚。更にレンタル料が一日あたり金貨六枚以上のマジックバッグには追加で金貨一枚の補償金が発生する。それと特例で三つ以上のギルドに所属している場合は最大で金貨二枚までの割引が発生する。最低レンタル料は金貨一枚。タダにはならない。俺は特例割引の対象だったので本来なら一日あたり金貨三枚かかるところ金貨一枚で済んだ訳です。有り難いことです。その分、年会費が取られているんだ。オマケしてもらわないと割に合わないぜ。
なので大容量で時間停止の物を割り引き無しで借りる場合、一日あたり金貨九枚プラス補償金で金貨十枚が必要という事になる。誰が借りるんだよ…と思ったけど存在するってことは借りる人がいるって事なのか。
商業ギルドにはデンプン餅と申請したい所だが、餅と言っても多分伝わらなさそう。ゼリーでもないな。スライムとかクラゲとかには例えたくないし……。うーん、プディングか? デンプンの流通名がカルトープンだったよな。カルトープディングにでもしとくか。 三毛皇(みけおう) さんにはわらび餅で伝わるだろうし。わらびって漢字はどう書いたっけ? そういや蕨市ってあったよね、あの漢字と同じだな。
そうそう、みたらし団子のタレって黒いけど実は黒砂糖は関係なかったんだよね。あの色は醤油由来。醤油、砂糖、水、デンプンで作るタレでした。黒砂糖は黒蜜の材料だよ。
みたらし団子のタレとわらび餅は明日商業ギルドで作り、わらび餅は箱詰め、タレはポーション瓶に詰めればいいだろう。きな粉はまだ無いので仕方ない。こんな事ならちゃんと【 蔓野豆(ツルノマメ) 】の研究をしておけばよかった。見通しが甘かったのは反省しないと。
今回の手紙の内容は決めてある。
『 海鮮一家の長男風味の出汁は存在していますか? 』
これだよこれ。鰹節に関する質問です。昆布はオロール先生由来の情報で存在は確認出来ているので次は鰹節があるかどうかの調査だ。猫に鰹節じゃないけど知ってそうな気がする。知らんけど。