軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第227話

商業ギルドに宴会メンバー全員が揃った。

「パイク=ラック、先日言われた猫の人向けタワシの試作品が出来たぞ」

「試作品?」

「タワシ本体に使う火口麻に、細く裂いた【 魔多々媚(マタタビ) 】を混ぜ込んでもらったのじゃよ」

「【 魔多々媚(マタタビ) 】入りタワシですか。それは猫の人に受けそうですな」

パイク=ラックさん、あなたは猫の人を堕落させる闇の商人なの!?

「もう少し硬めの繊維が見つかれば、竜人族を筆頭にトカゲの人や亀の人等の鱗を持つ種族にバカ売れするだろう。今、探してもらっているところだ」

「タワシに適した繊維は見つかったんですか?」

「【シュロット】という樹の外皮を精錬したら採れる繊維が今のところ最適かと思われる」

「タワシの話はさておき、ミーシャの新作料理をたのしもうではないか」

「そうそう、今日はボクが職校でお世話になっている古代エルフのオロール先生も一緒です。皆さん、会話は共通語でお願いします」

(共)「タワシの話はドワーフ語で語らってしまったな」

(共)「そこは気にしてないよ」

(共)「今日は【粗相豆】、古代エルフだと【つゆ豆】と言うんですが、その素晴らしさをドワーフの皆さんに伝える料理を用意しました」

(共)「ミーシャから聞いたよ。【つゆ豆】の改良品種の種が欲しいんだってね」

(共)「はい。正式に種の購入を考えております。もし完熟した豆の汁が一定量購入できるのならば、正式に輸入を申し出たいところで」

(共)「私一人でどうこう言えるものではないが、反対はされないだろうから長に話を持っていくよ。改良品種の【つゆ豆】はそれなりの量を作っているからね」

(共)「それは有り難い。それではドワーフ語の名称を変えることを提案せねば。【粗相豆】では如何せん聞こえが宜しくない。【十滴魚】も出てくる汁が十滴どころではなくなってしまえば意味を成さぬし」

(共)「【 豆醤(ずしょう) 】か【 豆醤(とうしょう) 】もしくは【 醤豆(しょうず) 】。そんな感じにするのがええんとちゃいます? あ、鞘もデカくなるんやな、ポーション瓶業界と競合せえへんか?」

醤油一つでそれぞれの思惑が渦巻く食事会が始まろうとしていた。まぁ俺としては醤油が受け入れられて供給量も増え、流通が円滑になればそれで良しなんだけどさっ。

(共)「今日は【サモン】を中心に料理を作ってみました。先ずは生の【サモン・ロー】の【つゆ豆】汁漬けです」

(共)「おおっ!! まさか【ヴォーダ】の卵の【つゆ豆】汁漬けか!?」

(共)「【サモン】は古代エルフ語では【ヴォーダ】ですか?」

(共)「厳密には『ブルー=フォレスト』の隣、 三日月熊(ムーンベア) 獣人と 魔打鬼(マタギ) 族の住む『オータム=パディ領』の言葉だよ。あ、あそこには 二首犬(オルトロス) もいたな…」

なにその濃い 種族(メンバー) 。『オータム=パディ』領って魔境なのか!?

(共)「 二首犬(オルトロス) ……いるんですね」

(共)「いるよー。『ハイ=ウィズダム』領には 三つ首犬(ケルベロス) がいるけどね。それはそうとミーシャちゃんが連れてきた【蛇魚】なんだけどいつ食べるの? スネちゃん、かなり太ってきたよ」

わっ、忘れてたーー!! バタバタし過ぎてリンド=バーグさんの家にウナギを置きっ放しだった………やばい。

(共)「そろそろ食べ頃かと。それよりアリサお姉ちゃん、スネちゃんって……?」

(共)「蛇っぽいからスネークのスネちゃんね。スライム 甕(かめ) や 魚籠(ビク) で過ごしてもらってるけど、様子を見に行くと餌をおねだりしてきて可愛いんだぞ」

(共)「それはペットにされる前に食べてしまわねば」

(共)「確かミーシャが【蛇魚】を捌く用の刃物があるとか言ってたな」

(共)「はい。ボクも話で聞いただけなので詳しい形状は分からないのですが……。後で説明します。それと【蛇魚】料理にも【粗相豆】と水飴を使うものがあります」

(共)「ほう、【蛇魚】裂きか……」

(共)「気になるな」

刃物でスイッチが入る大小鍛冶師。説明したらウナギ包丁も作り上げそうな予感。でもウナギ包丁は蛇を捌くのには使えないんだよな。肋骨の形状が違うし。

(共)「それより料理を食べましょう。【塩サモン・ロー】も買ってみたんですけど…」

(共)「おおっ!【スンズ】だ」

筋子を目の前にして超ご機嫌なオロール先生。筋子は多分好きだろうと仮定していたけど、やはりというか食い付いてきてる。そりゃあ俺も筋子のおにぎりを出されたら釣られるけど。

(共)「塩気が強いので多食出来ませんが、スライスしたパンと食べれば酒が進みますな」

(共)「そうそう。チョイと摘んで、そこに『 生命之水(蒸留酒) 』をキュッとやるのが最高だよ」

(共)「これは我々よりも頼もしいかもしれないぞ」

(共)「ホーク、そこのエルフのお嬢さんの真似したらアカンのやでー」

(共)「しかし、生の【サモン・ロー】を【粗相豆】の汁に漬けたものはもっと生臭いものかと想像していたのだが、全くそんなことは無かったな。漬け汁に秘密があるのか?」

(共)「薄めた酒を炙って 酒精(アルコール) を飛ばしたものに【粗相豆】汁と水飴を混ぜてたよ」

(共)「本当はオロール先生がお持ちの【ケルプ】入り【つゆ豆】汁の方が風味豊かになるとおもうんですが…」

(共)「今度はそちらで作っておくれ」

皆でオロール先生の危険な魚卵の食べ方を見ながら『 生命之水(蒸留酒) 』を口にする。反面教師ってやつだな。