軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第215話

【 魔海鞘(まボヤ) 】は出さないでおこうと決めた。一回、色々と試してみてから聞いたほうが何かと面白いかもしれないし。青琥珀の売却代金を受け取る。このお金で生玉子と小麦粉を買ってきて、釜玉うどんを作って食べようかな…と。いや、どうせならパイク=ラックさんも持っている蝋を溶かす時に温度を測る温度計のほうがいいかな? それを使ったら多分温泉たまごが作れる。それとも、香辛料の資金にするか……悩む。

「ん? アリサから連絡がきた。今夜は帰ってこれなくなったのか…。商業ギルドで何かあったな」

リンド=バーグさんはそう言いながら左手に着けた腕輪を見ている。

「それは?」

「これは単純な連絡の出来る魔道具だ。あらかじめ単語を登録しておいたら簡単なメッセージのやり取りが出来るんだ」

『仕事』『帰れない』『追加』から判断したのが、急に警備の仕事が延長になって今日は帰ってこれない、という内容。凄くスペックの低いポケベルみたいだな、それ。

「多分、試飲の続きに突入したな。夜通し飲むんじゃないか?」

「夜通しですか?」

「試飲で済まなかったんじゃろうな」

「あ、大会議か。今年は珍しく ここ(スワロー) でやったとか」

「夜通し……」

何となくホーク=エーツさんの事が心配になったけど、職員は一緒になって飲まないよね?

「まぁ俺達には関係ない事だから、軽く飲んで帰るか」

「『紐屋』のパスタはどうじゃ? 孫娘がオススメと言っておっての、食べに行ってみたら美味かったんじゃよ」

「あの、目の前で伸ばすサービスの店か」

「パスタ? 美味しそうですね」

「よし、決まりじゃな」

「なら、俺も付いて……」

「来なくていいぞ」

パスタ屋『紐屋』は最近人気になった店で、主に生パスタを提供してくれる。カウンター席の向こうでパスタを手延べで伸ばしてみせるパフォーマンスが話題になっている。1本の生地が伸ばされ何度も手繰られパスタの綛になり、それが程よい太さに伸ばされる。ちょっと前世の手延素麺の作り方に似てる気がしないでもない。それを三十センチ程の長さに切り分けたら生パスタの完成。板状に伸ばした生地を包丁で細麺に切り分けるパスタもあるみたいだ。これは、一押し二押ししたらラーメンの麺やウドンに進化する未来が見える。いや、素麺にだって進化するんじゃない? 麺つゆ無いけど……。

「茹でたての麺をシンプルに塩とオリーブ油とで和えたものがエールと合う」

「儂は茹でたてパスタを溶かしたチーズと絡めて食べるのが気に入っておるのじゃ。好みで【 長胡椒(ヒハー) 】を振りかけたり、ドライハーブを振りかけたりすれば風味も変わってまた良いのじゃ」

聞けば、一番人気はトマトソースにミートボールが乗ったものだとか。ガッツリ勢には、潰した【茄子花芋】を生クリームで伸ばしたソースに刻みベーコンを加えたものを和えたパスタが人気だとか。ハードなホワイトソース系なのか? パイク=ラックさんのオススメのパスタもガッツリ系だと思うんだがなぁ…。

俺はトマトソースにミートボールの乗ったパスタを注文した。べっ…別に、前世で見たアニメのワンシーンを思い出したからじゃないんだからねっっ!!

「流石にこの店構えではこっそり ア(・) レ(・) を飲む訳にもいかんからな」

「そうですね」

「なに、一・二ヶ月もすれば ア(・) レ(・) で大騒ぎになっておるじゃろうて…」

「パイク=ラックさんのお孫さんって何歳くらいなんですか?」

「アッシュはミーシャと同じくらいじゃな。暫く会わんうちに髭も生え揃っておった。じぃじ、じぃじと儂を慕ってくれてのぅ、可愛いくて仕方ないんじゃ」

孫話になった途端、デレッデレのお祖父ちゃんモードになったぞ。

「ボクと同じくらいと言うことは、進路とか決まってるんですか?」

「アッシュは調理に興味があるらしくてのぅ、ミーシャの話をしたら是非とも会ってみたいと言うておった」

「今度会いに行きます」

「ミーシャさえ良かったら料理を教えてやってはくれぬか?」

「えっ!? ボクなんかよりプロから習ったほうが…」

「調理への興味もまだ漠然としたものらしくてのぅ、アッシュにやる気があれば職校の調理コースに入ってもらってもいいんじゃが…」

「そういう事ならボクがお手伝いします」

「そうじゃのぅ…、儂でも食べられる野菜料理を教えてやってはくれんか?」

「野菜ですか?」

「儂は野菜が苦手でのぅ。ミーシャの野菜料理を食べた話をしたら、「私もじぃじにお野菜料理を食べてもらうんだ」と張り切ってしまったんじゃ」

孫バカなら苦手な野菜も食べるんだな。パイク=ラックさんの身体の為にもアッシュ=ラックさんと一緒に野菜料理を作ろう。

「ミーシャ、あのだな、ついででいいんだが、アリサの奴にも料理を教えてやってくれ。アッシュ=ラック嬢が拒否しなければだが、一緒に習わせてもいいんだ」

「あ、はい。ボクは構いません。確か前もアリサお姉ちゃんが料理を習いたいとかの話をしてましたし」

「アリサに何時までも冒険者をさせてる訳にもいかないからな。危険が少ないクエスト中心に稼いでいるとは言え 絶(・) 対(・) は無いからな」

「そうじゃな。料理が出来れば家庭の食事も華やかじゃ。店をやってもよいしのぅ」

何だか勝手な妄想が始まってるけど、俺は飲食店は経営しないつもりだぞ。出資とレシピ提供くらいはするけどね。