軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第175話

俺が気が狂った様に【 蔓野豆(ツルノマメ) 】を収穫しまくっている間、『地底 娘(こ) 』の五人は竈に火を起こし湯を沸かして野草の下茹での準備をしていた。イルマさんが生食用食材の【大バジル】の葉と実、【藪イチゴ】に光魔法の『浄化』を掛けていた。

光魔法は回復系の魔法系統で、冒険者パーティーに使える人が一人いたら凄く嬉しい。別に光魔法が使えなくても教会勤めをする僧侶や聖職者になれるけどね。この世界、回復はポーション頼みの殴り僧侶は珍しくないし。そもそもドワーフ、教会建てて主要な神様をお祀りするとかしてないぞ。

ヒト族は戸籍というか住民の人数確認や、スキル確認の為に教会を利用しているけど。それでも多神教の世界なので教会と言っても主神を筆頭に、竈の神様、水の神様、戦の神様、癒しの神様、太陽の神様、月の神様、商売の神様……等々、生活に重要な神様達をお祀りしている訳なのだが。ドワーフが教会建てたらお酒の神様をトップにお祀りするんだろうなぁ…。ならば神官は杜氏なのか?

話が逸れたが、光魔法の『浄化』は強力で、『汎用魔法』の JSS(浄化清浄殺菌) トリプルコンボが同時に掛かったのと ほ(・) ぼ(・) 同(・) じ(・) 効果がある。 ほ(・) ぼ(・) 同(・) じ(・) と言った 理由(わけ) は、『汎用魔法』の『清浄』の水洗い部分が発生しないので水濡れさせたくない物にも掛けられるという違いがあるから。そもそも『汎用魔法』は “ 有ると嬉しい些細な効果を発動させる魔法 ” なので、手間暇かけた多重処理で上位魔法に似た効果を生み出すことを可能にしているだけだからね。

イルマさんに光魔法の『浄化』と『解毒』をサルモネラ菌対策で鶏卵に掛けてもらいたいなぁ……。何ならスモークサーモンにもかけてもらうか?

俺には『解毒』は無理だから、似た様な事を『汎用魔法』で発動させるなら……毒素分離か? 俺、何だか分離コレクターになりそうな予感。ただ、生体からは抜けないだろうから、鶏卵だったら無精卵に掛ける事になるの?

「ミーシャちゃん、チビ豆は後でもいいからーー!! 草が煮えたよー!!」

アリサお姉ちゃんに叫ばれた。仕方ない、残りの豆集めは昼ご飯の後だな。

「はい、ミーシャ以外は手持ちの【十滴瓶】を出す。私は魚醤と【リモー】汁だ」

「私も【リモー】汁。後は海塩ね」

「油を五つっす。後は岩塩」

「【シークワ】汁を一つ、『 生命之水(蒸留酒) 』は六つやね」

「奮発して【蜂蜜リモー】を三つなのです」

こっ、これは……見慣れた【粗相豆】の外身。しかも調味料入れにされてるし!! そして本来入っているべき醤油は見当たらなかった。そうか、醤油を抜いて再利用する時は【十滴瓶】って呼ぶのね。

「それ……【粗相豆】の莢ですよね?」

「そうだよー。調味料の携帯に便利だからミーシャちゃんも【粗相豆】見つけたら収穫しといてね。残念ながら今日は見つからなかったけど」

「うちらにはイルマの『浄化』があるやさかいに、 コ(・) レ(・) を便利に使うてはるのよ」

「普通は大瓶で持って来るか塩だけっしょ? 味付けがチョー貧相で食いたくねーっす」

どうしよう、【粗相豆】の中身の話をすべきか……。どうせ数日もすればギルド経由で醤油の秘密も開示されるだろうし………。じゃないと大事な醤油部分が捨てられちゃうよ。醤油、お前のことは俺が護る!!

「あの…、アリサお姉ちゃん。アリサお姉ちゃんだけじゃなくてチーウさん、クララさん、イルマさん、マヤさんに伝えたいことがあるんです……」

「なんやなんや、エラい深刻な顔してますやん」

「あの……」

「ミーシャちゃん、どうしちゃったの?」

「実はその……、その【粗相豆】なんですけど……その汁、粗相汁なんですけど……」

「ん?」

「それって美味しい調味料……なんです!!」

(なんですー、なんですー、 なんですー すー すーー (心の声のエコー))

「なん やて!?」

「はあっ!?」

「ええっ!?」

「マジかー???」

「ヤバっ!!」

はい、その反応、分かってました。

「ちょっとミーシャちゃん、頭打った?」

「自分、『 軽癒(ヒール) 』掛けよっか?」

「皆さん、信じられないでしょうが、【粗相豆】の中身は、植物性の魚醤なんです。魚醤が魚の発酵調味料なのと同じで、【粗相豆】の豆が完熟して鞘の中で発酵して調味料になってるんです」

言った、言っちゃったよ俺。

「ちょいまち、なんやその粗相汁がイヤガラセ汁やなくて、実は粗相 醤(・) なんやって?」

「とても信じられないのです。【粗相豆】は服飾業界では嫌われ者なのです」

「おい、皆、落ち着け!! それでミーシャ、それは本当なんだな?」

「はい。ホーク=エーツさんが商業ギルドに提出してくれています。本当はまだ秘密にしてなくちゃいけない期間なんですけど……」

「けど?」

「ボクとしては粗相汁を捨てられたくなかったので禁を破りました。皆さんに莢はあげます。中身を下さい」

「ぶっ……」

「んなアホな…」

「ヤバいっす」

「マジかー」

「心配して損しました」

皆、本気で俺の ア(・) タ(・) マ(・) 具合いを心配してくれていた模様。

「だったら探すか!!」

「売り出し前に食うてみたいわ」

「『 軽癒(ヒール) 』も『解毒』も任せろ。バンバンかけるぜ」

イルマさん、酷いや……

「ミーシャちゃん、その粗相汁に合う料理は出来そう?」

「そうですね……【ポキポキ草】の油炒めの味付けに使いたいです。もし、トカゲか蛙のお肉が有れば照り焼きにでも…」

「照り…焼き?」

「謎料理!! 蛙、取るか」

「クララ、ウサギ狙え」

そして唐突に【粗相豆】探しが始まったのだった。