軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第156話

「商業ギルド『スワロー』支部長に追加報告があります。『ビレッジアップ』出発後に発生した案件です。これも起業案件になります」

あ……蕗の話だな。

「支部長は拭き草の茎を食べたことがありますか?」

どんよりとした目のままでホーク=エーツさんがそう質問する。

「気でもふれたか?」

「支部長、俺は道中で食べましたよ……。そこにいるパイク=ラック、リンド=バーグ、ミーシャ=ニイトラックバーグと一緒にね」

ガタッ 椅子の脚か机が動いた様な音がした。

「それほど携行食に不自由したのかね? 途中に宿屋も有るではないか」

「いえ……、ミーシャ説明を頼む」

「説明します。実はボクが……」

そこからは『対物簡易鑑定』での鑑定結果の話に始まり、下処理の仕方や調理の話やらが始まる。それこそ栽培の話や瓶詰め加工の話にメイプルシュガーの話まで。

「ただ、拭き草の茎を食べる話から、何故メイプルシュガー作りの話にまで発展するのかね?」

「【鉱夫飴】と同じ原理じゃよ。ミーシャの発案は何故か余計な案件に派生するんじゃ」

「いやー、オモロイで!! これは売れますわ」

ハイテンションのカーン=エーツさんと 廃(・) テンションのホーク=エーツさんの対比がまた何とも…。

「茎の砂糖漬けもエエですが、 商人(あきんど) 相手に “ コ(・) レ(・) 、先が見通せまっせ。縁起物ですやん ” って売り込んだらめっちゃウケますわー」

「あっ、拭き草の茎って結構筋張ってて…、 “ 筋が通ってます ” って表現も商人ウケしませんか?」

「ええなぁ!! それも頂きますわ!!」

前世で幼少期に歌っていた弁当の歌のラスト部分の歌詞を思い出したせいなのは言うまでもない。

商業ギルド『スワロー』支部長さんが喜んだのは、今まで廃棄物として扱われていた拭き草の茎が食用に転用出来るばかりか、他種族向け商品に加工して販売出来ることだった。メイプルシュガーの件は実用化出来るかは樹液を採取するところから始め、検証実験を進めてからになるので商品化まで漕ぎ着けるのは暫く先の話になる。砂糖事業は秘密裏かつ丁寧に進めないと駄目な案件だからね。

「拭き草の茎の瓶詰め、ガラス職人の仕事が増えるな。水煮からの瓶詰めは調理人の担当なのか農業ドワーフの担当なのか。それとも【水飴】や【 赫(あか) 茄子】ジュース製造と一緒にして新しく加工業務部門を設けるか…」

「新工房を作りはりますか。コレ金が動きますやん。エエですなぁ…」

まさか、軽い気持ちで作った水飴と、トマトジュースと、路傍の蕗のせいでこんなことになってしまおうとは……。

「しかし、私も商業ギルドに勤めてかれこれ百年を超えるが、【 紫萌肥し(アルファー・アルファー) 】の発芽直後の物や、【 目出度(メンデルス) 豆(・ビーンズ) 】の若い芽や、髭無し【 穂先(ホ) 黍(キビ) 】、果ては拭き草の茎が食べられる事を初めて知ったよ」

「支部長、安心するのじゃ。儂も二百年は生きておるが、それを知ったのはつい最近じゃよ」

「ちょっとミーシャちゃん、家に帰ったらその話をよーく聞かせなさい。冒険者が現地採取出来る食材が増えるのはとても大事な事なんだからね。って、リンドもその話を何でしないのよ」

「スマン…、忘れてた」

「うーん、『地底 娘(こ) 』でミーシャちゃん借りたいなぁ…。野外採取に連れて行ったら絶対凄い事になるよ」

「その前に俺は『スワロー』から出発したい。明日が無理なら明後日にでも」

「おや? ホーク=エーツは九の月・三の週・六の日付で『スワロー』商業ギルドに配置換えの辞令が出ていたのだが…」

「ナンダッテーーー!!!!」

ホーク=エーツさんの絶叫が商業ギルド『スワロー』支部の会議室内に響き渡った。まぁ、消音の魔道具が稼働しているので外に音漏れはしないんだけどね。

「【 橅(ぶな) 麦】酒の研究は職校に持ち込みするとして、冷やしの魔道具の話がこれまた頭を悩ますな」

「冒険者側からとしても、個 人(ドワーフ) の魔力をチャージして使うことが出来る魔道具の開発を是非ともお願いしたいです。何らかの事情でゴブリンが狩れなくなったら大変な事になります」

「冷やしエールのせいで魔石が枯渇ではシャレにならん」

「これは大会議をするしかないな」

「儲け話が満載ですわ」

「調理ギルドは各領都にあるのが本部で、その他の都市や町村にあるのは出張所なんだが、これは全出張所を昇格してギルド支部にしなくてはいけないのではないか…な気がしてきたな」

「支部長さん、その際には『地母神レミ』様をお祀りする祭壇というか神棚というか、お供え物を乗せる棚を作ってもらえますか?」

「あの気紛れ地母神を祀るのか?」

「レミ神をお祀りしたら、料理のアイディアが湧いて出ますよ…(多分)」

「ホンマでっかー?」

「ボク、創作料理を試していたら『 料理研究(レミレシピ) 』のスキルが生えました」

「………善処しよう」

でも、神棚にブロッコリーがお供えされる未来しか見えないぞ。