軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

738.育児スキルの上達が著しい

朝食で提案しようとして、ユリアーナを見て口を噤んだ。ついていくのは内緒なのだから、バレては意味がないわ。穏やかに食事をとる。ご飯を食べるときに消化が悪くなるような話を持ち出すのは、体に良くないわ。

「今日は夕方までに帰ります」

「わかったわ」

予定を告げるユリアーナに頷く。専属侍女のアンネも同行するので、心配はしない。

貴族令嬢が一人で屋敷を出るなんて、普通はないのよ。以前は平民同然だったから、家から走って出かけたけれど。いまは馬車の御者がいて、専属侍女や護衛がつく。

「アナ、でかけるの?」

きょとんとした顔で尋ねるレオンに、ユリアーナが頷いた。

「お友達と会うの。美味しいお土産を買ってくるわね」

「うん!」

良かったわね、とレオンに微笑んだ。卵料理を口に運ぶレオンは、にこにこと笑顔を返してくれた。ローズはヘンリック様の膝の上で、ハムを手掴みしている。ただ、そのまま口へ入れずにパンの上に乗せた。

「おと、たま……こりぇ……ちて」

お父様、これ……して? 翻訳しても意味が分からないわ。首を傾げた私に対し、ヘンリック様は「わかった」と承諾して手を貸した。丸い大きなパンを薄切りした上に乗ったハムに野菜を少し重ねて、半分に畳む。

「あんと」

素直に受け取ったローズは、イヤイヤ期ではなかった。さすがに終わるには早いけれど、一時的にストップしているみたい。驚いて見つめる先で、ぱくりと齧り付く。後ろから落ちた野菜を拾って、ヘンリック様は口へ入れた。

「いつの間に……」

驚いて呟いたのは、ヘンリック様の育児スキルの上達具合だった。斜め後ろに控えるリリーがそっと耳打ちする。

「奥様の真似をしておいでです」

「……私、外から見るとあんな感じだったのね」

確かに行動自体は覚えがある。レオンが食べやすいよう工夫して、零れた食べ物は食べちゃってたかも。こうして見せられると恥ずかしくなる。貴族夫人らしくないから、使用人達は驚いたでしょうね。フランクが何度も「公爵夫人らしく」と口にした言葉が身に沁みた。

「おとちゃ、ま……あー」

どうやら途中で飽きたようで、齧った残りをヘンリック様の口へ押し込む。ローズが渡した食べかけを、当たり前のように食べる夫……。イクメンという単語が浮かび、苦笑いした。

「準備がありますので、お先に失礼します」

挨拶して席を立つユリアーナを見送り、ヘンリック様と目配せする。私の支度はユリアーナより短いから、問題ないはず。だとしたら、急がないといけないのは説明ね。

「レオン、ラルフ……ローズも聞いて頂戴」

切り出した説明に返ってきた反応は、意外だった。拍子抜けするほどあっさり「いいよ」と承諾される。成長の証なのだとしても、母親としては複雑だわ。