軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

732.私から見れば解決目前ね

「でも……帽子が飛びそうになって……そのとき」

俯きながら、ぼそぼそと話すユリアーナの様子に、オイゲンがそわそわする。立ち上がろうとして、腿をぺちっと叩かれた。ハンナ様に抑えられる形で、オイゲンが視線をさ迷わせる。

「……帽子が飛んだのはありました。押さえて、でも手は繋いでいません」

きっぱり言い切ったオイゲンは、言おうか迷う仕草を見せた。口を開いては引き結び、数回繰り返してから深呼吸する。大きく吸って吐いたあと、ハンナ様の表情を確認して切り出した。

「レギーナ嬢には婚約者がいて、その……俺の友人なんです。あの後すぐに合流しました」

「事実ですわ」

ハンナ様が肯定したことで、ユリアーナがようやく顔を上げる。オイゲンと視線を絡ませ、すぐにまた俯いた。信じてもらえないのかと、オイゲンが悲しそうな表情を浮かべる。私は肘でユリアーナの腕をつついた。視線で促し、オイゲンの表情を確認させる。

「っ、クラネルト子爵令嬢に……会わせていただけますか?」

ユリアーナは、オイゲンではなくハンナ様に提案した。彼女は微笑んで大きく頷く。

「もちろんです。当事者同士で誤解を解くのが一番ですわ。それに……私はオイゲンの妻はシュミット伯爵令嬢と決めていますの。この子がこんなに惚れて、大切にしているご令嬢ですから」

さりげなく息子の援護に入るハンナ様の会話は、とても参考になるわ。ユリアーナはほんのり耳を赤くしながら「お姉様も一緒に」と強請った。

「もちろん、私も同席させていただくわ。こっそりと……離れたところでよ? そうしないと、クラネルト子爵令嬢が緊張してしまうもの」

ふふっと笑って、承諾を告げた。子爵令嬢が、筆頭公爵家の夫人と対峙するのは怖いはず。だから隣の席とか、少し離れた場所で見守る。ハンナ様の許可と賛同も得られた。ハンナ様も同席なさるそうよ。ほっとした顔になったのは、ユリアーナだけではなかった。オイゲンも胸を撫で下ろしている。

「そういえば、お茶会の招待状ありがとうございました。喜んで参加させていただきます。手土産は必要でしょうか?」

「いいえ。何も持たずにご参加ください。それと汚れても構わない巻きスカートもご持参下さいね」

私とハンナ様が日常会話に戻っていくのを見て、オイゲンがユリアーナに話しかける。ちらちらと様子を見ていたけれど、ぎこちなさは仕方ないわね。誤解が完全に解けたら、自然と戻るでしょう。こういうのも青春の思い出になるはず。

致命傷にならなければ、小さな危機は二人の絆を高めてくれるでしょう。