軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

633.レオンには嫌々が発動しないのね

ランドルフとレオンは、先に食堂へ行ってもらった。ローズの様子を見に、私は猫部屋に向かう。最近は忙しくて後回しにしていたわ。今は猫の世話係の使用人を雇っているから、遊びに行く場所という感覚ね。屋敷中を走り回ってもいいのだけれど、掃除をする下女達が大変だもの。

壁紙で爪を研いだり、家具を傷つけたり。金額的な問題より、それを見つけた使用人の苦労が申し訳ないわ。猫は狭い部屋でも縦運動が出来れば平気と、前世に何かで読んだ気がする。

猫部屋の前で、ローズの声が聞こえた。

「いやぁあああ!」

絶叫して、リリーの前で仰け反っている。寝転がった状態で、全身でイヤイヤを繰り出した。リリーはじっと眺めた後、侍女服でぺたりと床に座る。驚いて見上げるローズへ手を伸ばした。

「抱っこにしますか? それとも手を繋いで歩きますか?」

ここに残るという選択肢を外し、ローズに尋ねる。その声は優しくて、嬉しくなった。選択肢を提示して選ばせる方法は私が実践して、見て覚えてくれたのなら良かった。

「ローズ、リリーを困らせているの?」

少し手前から話しかける。私を見たローズが、きゅっと唇を尖らせた。

「ちゅなぐ」

抱っこは赤ちゃんだ。そんな口ぶりで起き上がる。リリーも立ち上がって、そっと手を差し出した。手のひらを上にして、促すことなく待つ。私とリリーを交互に見たローズが、リリーの手を取った。得意げに歩き始めたため、私は一歩遅れてついていく。

「リリー、ローズのことありがとう」

「いえ。奥様ほど上手にできませんでした」

「やっ!」

そんなことないと伝える前に、ローズが嫌だと訴える。繋いでいない左手を揺らして持ち上げたので、私の手を差し出した。不満そうな顔のまま、ぽんと手を置く。しっかり握り返したら、機嫌が直ったみたい。

一緒に食堂へ入れば、レオンが「ろじぃ、こっち」と呼んだ。あっという間に私とリリーの手を離して走っていく。レオンに対しては「やっ!」が発動しないのね。

昼食を食べるときも、あれが嫌これが嫌と訴える。レオンが「あーん」と声を掛けたら、ぱっと口が開くの。タイミングを計ったリリーが、さっと食べさせた。もぐもぐと咀嚼する様子は、本当に可愛くて天使なのだけれど……。

「レオンは偉いのね」

褒めると嬉しそうなレオンが足を揺らす。そうだったわ、この癖はレオンからローズにうつったのね? ヘンリック様の脛は、しばらく災難続きになりそう。今朝の様子を思い出して、くすくすと笑ってしまった。

「午後は何をするのかしら?」

そう尋ねたら、ランドルフは読書をする。近くでお絵描きをするレオンと……ローズは同じ部屋でお昼寝? だったら、絨毯の部屋がいいわね。

「お母様は?」

「ユリアーナのお部屋よ。呼ぶときは、リリーに頼んでね。階段が危ないわ」

頷くレオンに安心し、妹の看病を続けるために階段を登った。