軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56-1.(ローラント)音と踊りを楽しむ時間

不思議な光景が広がっていた。母のピアノに合わせ、ティール侯爵夫人がバイオリンの音を添える。そこから木琴や太鼓が加わり、オーボエやフルート、ヴィオラとコントラバスなどの弦楽器、トランペットに至るまで。様々な楽器が舞踏曲を奏でた。

バランスが悪いのを補うように、楽器を持った数人が勝手に加わる。貴族のようだが、顔を知らない者ばかりだった。子爵家以下で嫡子でなければ、私も顔と名前が一致しない。その辺りの貴族子女だろう。

ケンプフェルト家の演奏に参加するため、母上の演奏を眺めていた。ピアノを弾くのは久しぶりと言いながら、毎日練習し始めたのは驚いたな。ケンプフェルト公爵夫人に関わることになると、まるで恋する乙女のようだ。社交界に君臨する女帝と呼ばれたこともあった人なのだが。

気持ちよさそうに演奏する舞踏曲に、少し足が動いた。この曲は何度も練習したな。

「ローラント様、踊りませんか?」

まさか、婚約者のヴェンデルガルト嬢から誘わせてしまうとは。紳士失格だな。優雅に足を引いて一礼し、ヴェルの手を取る。

「私から誘わせてください。どうぞ私の手を取って踊っていただけますか? 美しいお嬢様」

「もちろんですわ」

ヴェンデルガルト嬢と踊り始めれば、ティール侯爵令息とシュミット伯爵令嬢も踊る。伯爵令嬢の促しで、領民も手を取り進み出た。カップルや夫婦、中には可愛い子供同士の輪も生まれる。くるくると回る子供達の様子に、見守る大人から拍手が起きた。

舞踏会だったらあり得ない。貴族と平民が一緒に踊るのはもちろん、演奏する貴族の音に平民が靴音を重ねるなんて。だが、今日はこれこそが正しい気がした。

ふと見れば、ケンプフェルト公爵夫人が夫である公爵閣下と踊っている。二人の間で手を繋いだ小公爵殿が、笑顔ではしゃいだ声を上げた。微笑みながら三人で輪を作る姿は、ダンスとは何かを思い出させてくれた。そうだ、楽しく踊らないと!

「ヴェル、楽しい?」

「ええ、とっても!」

婚約者の声がはしゃいでいて、二人で目を合わせて頷き合った。お行儀よくステップを踏むのをやめ、近くの領民達のようにくるくる回ってみる。途中で反対に回り、時々彼女の腰を掴んでくるりと回って。腕を上げてくぐる上品な踊りではないけれど、とても楽しかった。

息が切れて足を止め、音楽の終わりを知る。

「いき、が……きれ、たね」

「ふ、ふふっ、こんな、の……ない、わ」

今までに経験したことがないと笑うヴェルが可愛くて、ぎゅっと抱きしめた。すぐに人目があるのを思い出して離れたけれど、手はしっかりと繋いだまま……領民が譲ってくれたベンチに並んで腰かけた。

次の曲が始まったけれど、まだ動けそうにないな。