作品タイトル不明
38-1.(カール)愚かさのツケは重い
フォンの称号を持つシュミット伯爵家の嫡子として生まれ、相応の教育を受けて育った。しかし両親は早くに亡くなり、親戚はじわじわと距離を詰める。結婚して一時は落ち着いた。妻が伯爵家の出身で、厳しい目を向けていたからだ。
その間に、私が動くべきだった。だが、まだ若く……未熟すぎた私は未来を予測できない。妻が早逝した途端、屋敷も領地も奪われた。残ったのは王都にあった小さな家と我が子四人だけ。屋敷とは呼べない小さな家だが、妻の名義になっていた。
すべてを奪われてから気付いたのだ。妻はいくつも小さな準備をしていた。家の名義、定期的に支払われる積立て、周辺住民との関係。体調がおかしくなり、己の寿命を悟ったのか。動けなくなった後のことを心配したのか。
長女アマーリアにも、貴族の教育以外の知識を与えたらしい。料理や洗濯、掃除は手際がよかった。情けないことに、私はそれらの恩恵に気づくのが遅れた。真綿で首を締めるように、親戚がたかる。金を無心し、なけなしの財産を奪おうと狙われた。
アマーリアが必死に家族を守らなければ、離散していただろう。まだ若いエルヴィンが必要以上にしっかりしているのも、領地を取り戻して立て直す決意をしたのも、不甲斐ない私の所為だ。平民並みに逞しく育った双子は、ほとんど母を覚えていない。
もしかしたら……妻が亡くなったのも私が悪いのではないか? そんな考えが頭を離れなくなった頃、娘アマーリアは後妻に入る話に同意した。
「安心なさって、お父様。私が家族を守ります!」
筆頭公爵家からの話だ。こちらからは断れない。それでも爵位を手放せば、アマーリアは自由になれるはず。
「シュミット伯爵家は、フォンの栄誉を頂く家ですわ。エルヴィンが立派に継いでくれます。私は自分の意思で選びました。後悔はしません」
言い切られて、結婚を認めた。公爵閣下には三歳になる息子がいると聞いた。跡取りもいるのに後妻を貰うなら、乳母のように面倒を見させるためか。悲壮感を漂わせる私と違い、アマーリアは明るかった。
残す弟妹が心配だから、お父様はしっかりね! と念押しする。結婚式での夫の振る舞いにも、アマーリアはからりと笑って馬車に乗り込んだ。本当に何も思っていないはずはなく、傷ついているだろうに。せめて心配させないよう、こちらも頑張らねば……。
それから一か月が過ぎようとする頃、公爵家の離れで食卓を囲んでいた。可愛い孫も出来た。離れに運ばれる料理は豪華で、エルヴィンが驚いている。ユリアンはマナーそっちのけで口に放り込み、叱りつけるユリアーナも手と口が忙しい。
どれだけ我慢をさせてきたのか。目に見えて知り、申し訳なさが募った。だが、このままで終わる気はない。必ず子供達を成人まで育てる! そう覚悟した私は、一年後……大きな決断をした。公爵家の管理人に支えられる領地で、民に文字を教える。やり遂げて、我が子が誇れる父になるために。