軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

484.気負っていた何かが落ちた

出迎えた時、ヘンリック様は落ち着いていた。夕食を食べ終えて、団欒の間に移動した頃からそわそわし始める。

こういうところが、レオンと同じね。隠し事ができなくて、バレちゃうタイプよ。行動は可愛いけれど、隠している内容も可愛いといいわ。

お風呂に入るレオンを見送り、私は自らも体を清める。怠い日は体を拭くだけに留め、入浴しない日もあるの。お湯で丁寧に拭くリリーに、答えにくい質問をした。

「ねえ、妊婦の体って……どう思う?」

「妊婦でございますか? 奥様はお綺麗ですけれど」

「うん、ごめんなさいね。変な質問をしたわ」

イルゼが目配せをして、リリーに退室を指示する。入浴せずとも、大きなタライを使って髪を洗う。いつもはリリーの仕事だけれど、今日はイルゼが担当した。

先に体を拭いたので、寝着を纏って横たわった。頭をタオルで固定し、丁寧な手つきでイルゼが髪を洗い始めた。泡立てて流す。使用するお湯を何度も交換するから、大変だと思うわ。温かさと気持ちよさに目を閉じた。

「奥様……何か不安がおありですか」

「っ、そうね……少し」

「話し合いをなさいませ。旦那様は誤解されやすい方ですから」

「ふふっ、そうだったわ」

戯けた口調でこき下ろすイルゼに、肩の力が抜けた。おかしくて笑ってしまう。結婚式の直後も、重要な調印の仕事があって戻った。説明もせず、誤解を招く態度だったわ。その後も私に歩み寄ることはなくて……。

でも、小さな願いは全て叶えてくれた。実家のことも、レオンのことも。あの人は上手に感情を表現できないだけで、鈍感なわけじゃない。きっと今頃、私がもだもだしている気持ちを察して、慌てているかも。

想像できてしまうくらい、私はヘンリック様を知っている。それ以上に幼い頃から知るイルゼが言うんだもの。あの人はきちんと話してくれるわ。

「ありがとう、イルゼ。きちんと話してみるわ」

「旦那様は仕事こそ人並み以上ですが、人付き合いは不得意なままです。奥様のような方が嫁いでくださり、幸いでした」

「そう思ってもらえたなら嬉しいわ」

気持ちがすっと楽になる。気負っていた何かが、転がり落ちたよう。肩も気持ちも軽くなり、私は下から彼女を見上げた。ヘンリック様を我が子のように慈しんだ女性、私にとっても義母同然ね。

「イルゼがいてくれて、よかった」

自然と本音が口をついた。微笑み合い、濯いだ髪を拭いてもらう。乾いたところで、自分の手でブラシをかけた。

うん、大丈夫よ。落ち着いて話ができるわ。まずはヘンリック様が何を思っていたのか、聞くところから始めましょう。