作品タイトル不明
379.お父様や双子からの相談
ヘンリック様はよい父親になった。レオンの話を遮らずに聞いてくれるし、抱き上げたり一緒に過ごしたり。育児そのものを楽しんでいる感じがした。
フランクは「最近涙脆くなりまして」と、目頭を押さえる。よほど嬉しいのね。レオンは元々素直な子だから、優しくて抱っこや遊びを一緒に楽しめる人に懐く。母親が欲しかったから、私にはすぐ警戒心が解けたけれど。父親であるヘンリック様に対しても、遠慮がなくなってきた。
男二人、こそこそとカーテンの間で何かを始めた。私は交ぜてくれないの? と聞いたら、ダメなんですって。残念だわ。
お父様やエルヴィンの領地視察の報告を受けて、次の対策を練る手伝いをする。ちらりと確認するも、まだダメと返された。時間が経てばいいのかしら? お父様達には、最強家令フランクを推薦した。彼なら適切な対応を教えてくれるわ。
「お姉様、今度お茶会に誘われてて」
私の手が空いたと見るや、ユリアーナが相談を持ちかけた。お茶会の相手は、バルシュミューデ公爵家だ。招待状は公爵夫人ユーリア様のお名前だが、追記された文字が女性らしくない。
「これはどなた?」
「私もわからないの」
困惑した様子で、ユリアーナが首を傾げた。それで参加を迷っているのね。怖いなら一緒に行くと約束した。まずはお誘いのお礼を丁寧に記し、後半部分に姉も一緒でいいかと尋ねてみたら? とアドバイスする。
こういった手紙は代筆も多いけれど、相手が格上なので手筆の方が喜ばれる。イルゼがそっと耳打ちしたので、その意見を採用してユリアーナ自身が書くことになった。
「書いたら確認してね、お姉様」
「いいわよ」
妹の髪を撫でて、微笑む。なんだか久しぶりだわ。以前はよく双子の頭を撫でたわね。エルヴィンも甘えさせてあげたいし。
「リア姉様、俺のピアノなんだけど」
話が一段落したのを待って、ユリアンが口を開く。弦楽器のアルノーから、提案があった。私やヘンリック様が忙しくしている間も、アルノーやビアンカはユリアンのレッスンに通った。その際に話が出たみたい。
「もっと上の先生をさがしてくれ、と。もう教えることがないんだってさ。俺はもっと上手になりたい」
意外だわ。ユリアンはピアノの才能があったのね。騎士になる道を模索していたけれど、新しい道があるなら挑戦するべきだわ。
「次の先生をみつけましょう」
「……うん。お金、かかるのか?」
たくさんお金がいるんだろ? そう心配するところが、可愛くて抱きしめたら抵抗されちゃった。腕を突っぱねて「ったく、恥ずかしいだろ」と拒まれた。
「子供がお金の心配をしないの。まず己の進む道を決めて、全力で頑張ればいい。親はそれを後押しするのが、楽しいんだから」
「リア姉様は、親じゃないけどな」
「あら、母親のつもりよ?」
明るく返したら、ユリアンはきゅっと唇を噛んだ。泣きそうと思ったのに、笑顔を作って悪態をついた。
「若過ぎるっての!」