作品タイトル不明
286.ローラント様の意外な一面
盛り上がったところへ、昼食が運ばれてきた。さきほどパイのお菓子を食べたので、そんなにお腹は空いていない。動かなかったし、散歩でもすればよかったかしら。
「食べたら、レオンも一緒に散歩しないか」
大きな温室を作りたいと話すヘンリック様に、マルレーネ様が業者を紹介すると約束した。公爵家の庭に大きな温室ができたら、何を植えようかしらね。一般的な貴族女性と違って、花より団子なのよ。お花に関しては、レオンと相談して……庭師に任せる方がいいわね。
「ええ、そうしましょう」
約束して手を借りて立ち上がり、用意された食事を選ぶ。まだ寝ていると思ったのに、抱き上げたら起こしてしまったみたい。興奮してあれもこれもと欲しがった。取り分けようとする侍従に断り、レオンに言い聞かせる。
「食べ物は無駄にしてはいけないの。食べられる量だけ選びなさい」
残った分は使用人達に分けられる。それは知っているが、分けるのは大皿に残った分だけ。私達の手元に取りわけた料理は別だ。たとえ手をつけていなくても、捨てることになると教えた。驚いた顔をするレオンは、家で出される大皿と違うことを理解したらしい。
真剣に考えて、これと一つ選んだ。それから私達の顔を見て、これもと強請る。
「いいわ、これは私が食べるから一口交換しましょうね」
「なら、他に食べたいものはあるか。俺が選んで、二人に分けよう」
ケンプフェルト家は筆頭公爵家だ。王族に次ぐ地位を保ち、貴族の手本となる存在だった。その私達の行動に、バルシュミューデ公爵家のユーリア様は目を輝かせた。
「そう、こういうところなのよ。私がアマーリア様を好きなのは……わかるでしょう? ローラント、ランドルフ」
「ええ、母上が親しくされる理由がわかりました」
「レオン、俺のも食べるか? これだけど」
ランドルフ様はマイペースに、自分が食べたいパンと肉を示す。侍従が器用にパンをカットし、中に肉と彩り程度の野菜を添えた。こっそり指示して野菜を減らさせているの、ユーリア様にバレているわよ。くすくす笑う私達の前で、ランドルフ様は叱られた。
「ぼくと、わけうと……めっ、されちゃ、の?」
「違うわ、レオンと分けたから叱られるのではなく、お野菜を減らしたからよ」
勘違いを正せば、レオンは不思議そうな顔をした。
「あさい、おいちい」
「あら、レオンもニンジンは嫌いでしょう?」
ケーキに混ぜて食べさせた経験が浮かび、ふふっと笑った。あのケーキ、お茶会でランドルフ様に食べさせてみたいわ。
「ランドルフ、母上を怒らせてはいけない。野菜はこっそり私の皿に載せればいい」
落ち着いた口調で抜け道を教える兄に弟が頷くも、当然、ユーリア様の雷は落ちた。
「ローラント! ランドルフ!」
二人まとめて叱られ、しまったと顔を顰めたのはランドルフ様。逆に嬉しそうなのがローラント様……もしかして、いい子なローラント様は、不良に憧れる優等生かもしれない。兄弟の意外な違いを見つけた私は、取り分けられた皿を受け取って踵を返した。
主催であるマルレーネ様がお料理を手にする頃、ようやくリースフェルト公爵夫妻が戻ってきた。随分と長いお散歩だったけれど、なぜかパウリーネ様がご機嫌斜めだわ。そのまま夫妻は帰ることになった。何があったのかしら。