軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三百九十五話 偽魔王はアルクレムに

不完全復活したグドゥラニスが、自身の魂の欠片を集めている。その情報は、ヴァンダルーの使い魔王によって各地に広まった。

「マジですか!? ……もしこっちにそれが来たら、脳蟲君がいくらいても足りませんね。砲弾型使い魔王の残りも少なくなってきましたし」

カナコがいるのは、アルクレム公爵領の首都、アルクレムだった。彼女はオルバウムにおけるアイドル活動の原点であるアルクレム公爵領を、暴走状態の亜神や魔王軍の幹部から守っているのだ。

魔大陸やガルトランド、そしてヴィダル魔帝国のファンも大切だが、オルバウム選王国のファンが最も危なそうだからと言う理由で。

もちろんアルクレムはヴァンダルーにとっても重要な場所であるため、カナコ以外にも十分な戦力が配置されている。

『不完全復活したグドゥラニスって、どれくらい強いの? ジャックは魂の欠片が一つか二つならたいした事ない気がするよ』

その戦力の中でも最も大きな存在感を発揮しているのが、カナコ達を乗せているレギオンである。

街の上空を浮かぶ巨大な球形の肉塊は、アルダが送り込んだ神々の攻撃から我が身を盾にして街を守り、【カウンター】で逆にダメージを与え、動けなくなったところで逆に拘束している。

「うおおおおっ! 放せ! 何故殺してくれないのだ!? グドゥラニスの魂を埋め込まれていると言っているだろう!?」

具体的には、十万年前にヴィダとアルダの戦いで封印された原種吸血鬼を拘束し、封印しようとしている。

『ええい、煩いぞ! 静かに人の話を聞けないのか!?』

『ワルキューレ、彼も君にだけは言われたくないと思う』

『埋め込まれた魂の欠片は、安全に除去できるから、今は大人しく封印させてほしいって説明したはずだけどね』

『無駄だ。話が通じる状態なら、『暴走』とは言わない』

「止めろーっ! 理由は何でもいいから死なせてくれ~っ!」

『多分、この人に埋め込まれた欠片は【破滅願望】ね』

『【絶望】かもしれないよぉ』

『何にしても、本当に碌な魂の欠片がないね』

『まあ、魔王だしね』

原種吸血鬼の男性、アルアベルは肉に包まれて死なせてくれと叫びながら封印されたのだった。

ちなみに、封印にはヴァンダルーが吸収した【魔王の欠片】が封印されていたオリハルコン製の容器を使って行っている。

『……そういう訳で、私達は不完全復活したグドゥラニスがどれほどの脅威なのか、目算が付けられずに困惑している』

『自分の体験だけを物差しにするのはどうかとは思うけど』

「まあ、無理もありませんね。少なくとも、ダークアバロンよりは弱いと思いますけど……どうなんです?」

問われた脳蟲君こと、使い魔王はすぐに答えた。

『当然ですが、ダークアバロン……六道とエドガーを乗っ取ったグドゥラニスよりは弱いと思います』

【本能】と【記憶】と【粉】が、【アバロン】の六道聖とエドガーの魂を乗っ取り、【魔王の欠片】で出来た肉体を手に入れた存在。宿っている魂も肉体もグドゥラニスの物で、抵抗する存在は無い。

六道とエドガーという異物を抱えているが、完全に吸収して彼らのスキルを利用していた。さらに、周囲にいる六道の部下の魂まで従えて、十万年前は出来なかった人工精霊まで創り出していた。

それに対してアルダが放ったのは、グドゥラニスの魂の欠片を寄生させられ暴走しているヴィダ派の神々や魔王軍の幹部だ。欠片が宿主を乗っ取ったとしても、グドゥラニス本来の肉体である【魔王の欠片】は一つもなく、乗っ取った魂の欠片の種類によっては……仮に【狂気】や【性欲】だった場合は無差別に暴れるだけの存在になる可能性も高い。

そして、肉体を持つ亜神や魔王軍の幹部ならともかく、ヴィダ派の神々を乗っ取った場合、神域に戻らず地上に残り続ければ消耗が大きくなり、消滅してしまうだろう。

『とはいえ、欠片自身の種類と寄生している宿主次第でしょうか。あるかは不明ですが、【闘争心】とか【闘魂】とか【奸智】とか【狡猾】等の魂の欠片が、強力な魔王軍幹部の肉体を乗っ取った場合は、厄介だと思いますよ。

オルバウムで『魔城の悪神』ギュピャレスラがそうなりかけましたが、グファドガーンが封印してくれました』

しかし、結局は埋め込まれた魂の欠片の種類と、乗っ取られた宿主の組み合わせ次第で脅威の度合いは変わる。

「つまり、残りの魂の欠片の種類と解放された神々が分からないと、予想できないという事ですか……アルダを締め上げられたらよかったんですけどね」

アルダ信者が聞いたら絶句しそうなことをカナコが言い出す。そして実際、封印から解き放った神々も、神々に埋め込んだグドゥラニスの魂の欠片の種類も、アルダしか知らない。

『それと、不完全復活したグドゥラニスが使うだろう死属性魔術と魂砕きには警戒してください』

「ヴァン様と同じ事が出来る……という訳ではないはずよね?」

そこにやって来たエレオノーラがそう尋ねながら、脳蟲型使い魔王のシワの間に手を入れ、内部に保存されていたブラッドポーションを取り出す。

『はい。特に魂砕きの方は』

実はポーションのホルダーでもあった脳蟲型使い魔王は、脳の隙間に指を突っ込まれても気にせず答える。

ヴァンダルーにとって【魂喰らい】は得意技であり、ダークアバロンやフィトゥンなどとの殺し合いでは基本的に常に使っていた。

しかし、グドゥラニスにとって魂砕きは、奥の手である。砕く魂の強さによって比例するが、大量の魔力を消費して行う必殺技だ。しかも、グドゥラニスは魂を砕けるだけで喰らえるわけではないので、魂を砕いてもそれによって魔力が回復する訳でもなければ、力が増すわけではない。

神話の時代、ボティン達が封印されるだけで済んだ事や、傷を負って眠りについたリクレントやズルワーン、ペリアが魂を砕かれなかったのは、そうした理由だ。

もし、グドゥラニスがヴァンダルーと同様に魂を喰らう事が可能だったら、この世界の神々は悉くグドゥラニスに食われ、ザッカート達が召喚される前に魔王軍が支配する世界に変貌していただろう。

『ですが、神未満の強さ……ランク12以下の人やランク13以上の存在と互角以上に戦う自信のない人は、危険です。

神未満の存在の魂を砕くのは、グドゥラニスにとって大した手間と消耗ではないでしょうから』

「つまり、レギオンやエレオノーラさんは大丈夫でもあたし達は危ないから、ヴァンに守ってもらわないといけないと言うことですね!」

「なんでそうなるの!? ヴァン様の手を煩わさないよう、警戒して自分の身を守りなさい!」

「もちろん冗談です。それはともかく、どこにいるんでしょうね? 魂の欠片を集めるのが目的なら、ここにやってくるかもしれませんが」

グドゥラニスの魂の欠片を集めている者の目的が、それを続ける事ならカナコが言ったように、ヴァンダルーに喰われる前に欠片を入手しようとするはずだ。

その場合、食われる前の魂の欠片があるここにやってくる可能性は十分ある。

『GYAAAAAAA!』

今も、その魂の欠片が寄生されている活きのいい宿主が、所々石化させられた状態で悲鳴を轟かせている。

「しぶといですね。手足は全て切断するか石化させたというのに」

『ヂュオォォ……ならば開きにしては?』

蠅に似た頭部と前後合わせて八本の足を持つ猿に似た体を持つ、『蝕腐森の悪神』パラファルパは、触れた物を何でも溶かして啜る恐ろしい悪神だったが、ベルモンドと骨人によって脚をすべて奪われ、芋虫のように転がされている。

オリハルコン製でもネメシスベルのような量産品なら、数分で溶かせる自慢の溶解液も、斬撃によって生み出した真空の刃で切り刻む骨人の絶技には、全く意味が無い。

パラファルパを縛っているベルモンドの糸は長時間触れているため、何度か溶かされているが……。

「ところで旦那様、新しい糸をお願いします」

『ふしゅるるる!』

彼女の腕に張り付いている小さな使い魔王が、溶かされる度に追加の糸を吐くので問題ない。

「あの、殺しちゃまずいんじゃなかったっけ?」

二人の様子から、パラファルパを封印、もしくはヴァンダルーが喰らう前に殺してしまうのではないかと、『陽炎の神』ルビカンテの元英雄候補だったカルロスが、控えめに止める。

戦いが始まる前に「邪悪な神々を殺さないように」と言われても、「やろうとしても、できるもんじゃない」と思っていたカルロスだったが、実際に戦ってみるとベルモンドと骨人はしぶとさ以外には苦戦せずパラファルパをほぼ無力化してしまった。

彼と仲間達も援護したが、信じ難い。まるで、自分達だけ神話の世界に迷い込んでしまったかのような錯覚を覚える。

(まあ、現実なんだけどな)

そう彼が視線を向けた先でも、神々の戦いが繰り広げられている。

『あなたは何者? 名を名乗りなさい!』

『『聖槍の女神』エルクだと、何度名乗らせるつもりだ!』

『そうか、我は『吹雪の女神』メルメディア。さあ、あなたも名乗りなさい!』

『だからっ、我はエルクだ!』

『そうか、我は……ええっと、そう、我は『泉の女神』メルメディア……?』

『何故我に尋ねる!?』

カルロスと同郷の英雄候補であるヘンドリクセンに加護を与えた、『聖槍の女神』エルクが降臨し、十万年前に封印されたヴィダ派に属するペリアの従属神、『吹雪の女神』メルメディアと刃を交えていた。

戦いの余波で街に被害が出ない十分離れた距離で争っているが、その神々しい姿とコミカルな掛け合いは街からでも見る事が出来る。

『エルク、心を静めるのだ。メルメディア殿はグドゥラニスの魂の欠片に侵され、正気を失っている。その影響だ』

そして、『弦の神』ヒルシェムも降臨してメルメディアを封印しようとエルクの援護を行っていた。

親しかったヘンドリクセンとエディリアにそれぞれ加護を与えた神が、力を失う危険を冒しても降臨までして人々のために戦っているのを見ると、ルビカンテに見捨てられた自分との差をカルロスはつい考えてしまう。

ただ、実際は元アルダ勢力の神であるエルク、そしてヒルシェムがヴィダ派に加わった事を明らかにする必要性を覚えて降臨した、と言う事情もあったのだが。

『全力で自害しようとしていた原種吸血鬼の人は封印したから、次はこの人だね』

『グルアアアアア!』

『っ!? や、やめろっ、我は……ええと……うわぁぁ!?』

そして動きが止まったメルメディアの背後から、直径一キロメートル程のレギオンが迫る。ヴァンダルーはいないため粘液と触手塗れになる事は免れたメルメディアだったが、触手状の肉の塊に飲み込まれ内部で封印されてしまった。

戦いの末にダルシアに封印されたビャゼクビョクトの方が、外聞的には幸運かもしれない。

そして、そのさらに向こうでも戦いが続いていた。

『なんだ、こいつは!? 何故グドゥラニス様の気配がしないのに、グドゥラニス様と似た気配がするのだ!?』

矛盾している事を雨に打たれながら叫んでいるのは、魔王軍との戦争の後期に封印された魔王軍幹部の邪悪な神、『永刃の悪神』スバヴォロ。

本当に強力な邪悪な神々がベルウッド達に封印されてから抜擢された、名ばかりの大幹部だ。しかし、それでもフィディルグやゾゾガンテよりも数段上の力を持っている。

銀色の長い体毛に顔まで覆われたゴリラのような姿も、邪悪な神にしては大人しく見える。しかし、その体毛一本一本が鋭い針で出来ている。しかも、スバヴォロの思うままに変形し、束ねられて槍の穂先や巨大な刃のようになったかと思えば、無数の矢として射出する事もできる。

そして攻撃を受けるときは堅牢な鎧にもなる……はずだった。

「■■■■■■!!」

白髪のダンピールの少年の姿をした者が口から放つ衝撃波が、スバヴォロの体毛をものともせず彼の本体と精神を打ち据える。

そう、彼こそが『真魔王』ヴァンダルー……の偽物。『偽ヴァンダルー』として知られるキュールである。

彼は訓練の結果、なんとランク13のヴァンダルースライムにランクアップする事に成功した。そう、ヴァンダルーのスライムである。

ヴァンダルーの外見や声、仕草をそっくりに真似られるだけではなく、ヴァンダルーが持つスキルを模倣して真似する事が出来るのだ。

もちろん、死属性魔術や死霊魔術が使える訳でもなく、吸収していない【魔王の欠片】を使う事も不可能だ。だが、【冥叫喚】スキルを真似て恐ろしい絶叫を轟かせ、スバヴォロの肉体と本能を苛む事は出来る。

『ギイイイイイイ!』

繰り返し【冥叫喚】で痛めつけられたスバヴォロが、怒りのあまり金属が軋む時に立てる音に似た絶叫を轟かせながら、全身の体毛を逆立てさせる。そして、数百万本の体毛を射出した。

体長約百メートルのスバヴォロの全身から放たれた体毛は広範囲に飛び散り、レギオンはもちろんエルクやヒルシェム、そして彼らの背後にあるアルクレムの街にも及ぶと思われた。

「【アイギス】!」

しかし、スバヴォロの巨体以上に大きな結界の壁が出現し、全ての体毛を防いでしまった。

結界を張る【アイギス】のチート能力を持つ転生者、メリッサだ。

「オラオラ! 残り少ない花火をサービスだ! 行ってこい!」

そして、結界の向こうから彼女と同じ転生者の【ヘカトンケイル】のダグ・アトラスが、念動力で攻撃を行う。

『行ってきますー』

『追加の俺はもうちょっと待ってくださいねー』

そして、結界が張られていない地面を通って、ダグの念動力で操られた砲弾型使い魔王がスバヴォロに次々と命中する。

『ガアアアアア!? ウゴアアアアアア!』

彼の体毛がどんなに硬く鋭くても、砲弾型使い魔王は触れただけで……何なら、触れていなくてもヴァンダルーの意思で爆発する。

しかも、使い魔王は【魔王の欠片】製。スバヴォロの体毛がどれほど鋭さと硬さを誇っても、グドゥラニス程ではない。そのため、爆発で飛び散る【魔王の欠片】の破片は彼の体毛の防御を突き抜けてくる。

『っ!?』

痛みにもがき苦しむスバヴォロの前で、結界が消えた。好機と見た彼は反撃に出ようとする。

「まだなんですか、ヴァンダルーさん!?」

そこに、【聖弓姫】ジョブに就いたミリアムが放った矢が降り注ぐ。

「お願いですから早く来てください! この悪神、さっきから滅茶苦茶怖いです!」

スバヴォロの巨体と絶叫に怯えているミリアムだったが、雨の中で弓を構えて矢を放つ動作には迷いがいない。そして、そんな彼女が放つ矢も【魔王の欠片】やオリハルコン製のもので、スバヴォロに的確にダメージを与えている。

「うおおおおおおおっ! 滅せよ、【魔王剣】!」

そして、ミリアムと妹のカリニア、そして幼馴染のボルゾフォイの援護を受けたアーサーが、特訓で編み出した必殺の武技でスバヴォロの体毛ごと脇腹を大きく薙ぐ。

『負けてはいられん! 【魔王剣】!』

それに続いて駆けつけた骨人も、アーサーが羨ましくて仕方がなかったので教えてもらった同じ武技で、スバヴォロの脚を切断する。

『ギャアアアアアアア!? 何故だ!? 苛むのも、切り刻むのも、我の方であるべきなのに!? この雨さえ、忌々しい雨さえなければ、人間共の肺から嬲り殺してやれるものを!』

スバヴォロが勇者軍との戦いで得意としたのが、肉眼ではほとんど見えない程細かな体毛の破片を空気中にばらまき、それを吸い込んだ人間の肺を傷つけ呼吸ができないようにするというものだ。

だが、それも彼の周りだけに振り続ける雨のせいで体毛の破片が空気中を舞わずに地面に落ちてしまい、不可能になってしまった。

それをしているのが、十万年前には存在しなかった『雨雲の女神』バシャスである。エディリアと依り代に宿った彼女の歌に合わせて雨雲は集まり、アーサー達には恵みの、スバヴォロにとっては災いの雨を降らせる。

さらにエレオノーラとカナコも戦闘に加わり、全身の体毛と四肢を失ったスバヴォロもレギオンの中に飲み込まれるようにして封印されたのだった。

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名前:キュール

ランク:13

種族:ヴァンダルースライム

レベル:70

二つ名:【偽ヴァンダルー】

・パッシブスキル

打撃無効

飢餓耐性:3Lv

捕食超回復:5Lv(UP!)

身体形状精密操作:6Lv(UP!)

業毒分泌:1Lv

魔術耐性:10Lv(UP!)

剛力:1Lv(怪力から覚醒!)

物理耐性:6Lv(UP!)

自己強化:導き:8Lv(UP!)

能力値強化:擬態:5Lv(UP!)

・アクティブスキル

忍び足:7Lv

業血:10Lv(UP!)

限界超越:2Lv(限界突破から覚醒!)

巨大化:6Lv

格闘術:7Lv(UP!)

連携:7Lv(UP!)

突撃:3Lv

並列思考:8Lv(UP!)

遠隔操作:8Lv(UP!)

寄生:4Lv

擬態:10Lv(UP!)

・ユニークスキル

ヴァンダルーの加護

スキル模写:ヴァンダルー:2Lv(NEW!)