軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三百四十話 増えて探るネズミ達

まるで羽虫が飛び回っているかのように、不愉快な気配が王宮からする事に、六道は気がついた。

『……ヴァンダルーとその手先か。私が潜んでいると気がついたか? いや、まだ確証は得ていないな』

確証を得ていたら探るのではなく、もっと直接的な手段に出るはずだと、六道は推理した。

テルカタニスに命じて、自身が作った剣と盾を【魔王の欠片】を利用した武具として他の貴族達に見せ、偽装情報を流した。

この事態は、その成果と言える。

手先を送り込まれて探られているのに、成果と評するのは奇妙かもしれない。しかし、六道の推測ではヴァンダルーは元々彼の事を警戒しているはずだった。

『オリジン』で戦いに負け、しかし魂を喰われず逃げ延びた六道。彼がロドコルテによって何らかの調整をされ、『ラムダ』に送り込まれる事を、ヴァンダルーが予想しないはずがない。

ウルゲン・テルカタニスが突然【魔王の欠片】を、神殿ではなく自身の手元に集め始めた事。ヴァンダルーならそれを自分の存在と結び付けるはずだと六道は予想していた。

『今のところは、テルカタニスの周辺を嗅ぎまわっているだけのようだ。だが、ヴァンダルーなら手駒ではなく、その黒幕……私を直接叩こうとするはずだ』

『オリジン』と違い手足となって働く者が限られているこの世界で、テルカタニスを失うのは痛い。痛いが、既に新たな肉体は手に入れ、転生は終わった。

テルカタニスが殺された場合は、彼の魂が知っている全ての情報を吐くので、準備が整う前にここから全力で逃げなければならなくなるので、六道としては致命傷だ。

しかし、六道はロドコルテの神域でヴァンダルーについての情報を調べた。それによる推理では、ヴァンダルーなら、事態が切迫しない限りそれはしないと予想した。

ヴァンダルーは警戒し、恐れるはずだからだ。追い詰められた六道が暴れだし、オルバウム選王国の人々を戦いに巻き込む事を。

『ヴァンダルーでも、まさか私がグドゥラニスの魂の欠片を完全に制御し、【魔王の欠片】で作った肉体に転生したとは夢にも思わないだろう。しかし、ヴァンダルーは私が『アークアバロン』以上の力をつけるなど、何らかの勝算があってこの世界に転生してきたと考えるはず』

実際、勝算がなければ六道も『ラムダ』に転生しようとは思わなかった。世界の片隅に逃げ延び、ヴァンダルーに滅ぼされるまで怯え続ける人生など、ただの拷問だ。

だからこそ、六道は勝算を手に入れるためグドゥラニスの魂の欠片を吸収するという我が身を危険に晒す賭けに出て、その賭けに勝ったのだ。

そして、前のように六道を楽に倒せるはずがないと警戒したヴァンダルーは、慎重になるはずだ。そう彼は考えていた。

その思考は、前世で自らの野望を挫き、殺したヴァンダルーに対する警戒。そしてそれ以上に、六道が自分自身を高く評価したいが故のものだ。

一度は自分を倒した存在なのだから、再び動き出した自分を大きな脅威だと警戒しているはずだと、そう考えたいのだ。

有象無象の人類から進化し、世界に君臨する存在に至ったと確信し肥大した自尊心は一度死んでも元の大きさには戻らない。

『だが、稼げる時間にも限りがある。この体を早く完全に私の物にしなければ……』

六道は、そう言いながら体の調子を確かめるように拳を握る。

「ブギィィィィィ!」

「グモオオオオオ!」

その背後に、オークやミノタウロスらしい魔物が出現した。

それぞれランク10を超える強大な魔物に見える魔物達は、無防備な六道の背中に武器を振り下ろす。

「ブギィ!?」

「モ゛っ!?」

しかし、次の瞬間、魔物達が振り下ろした武器が砕け、さらに胸の中央や頭部の半分が何かに削り取られたように消えた。

「オォォォォ……」

「グルルルゥゥゥ」

その魔物達がまき散らした血や脳漿の臭いに惹かれたのか、さらに魔物が現れる。ランクは先ほど六道が倒した魔物と同じかそれ以上。

そんな魔物が数百匹、六道の周囲を囲んでいる。しかも同士討ちをする様子もなく、ただただ六道に狂気にも似た凶暴さを向けている。

A級冒険者でも死を覚悟し、S級冒険者であっても死闘を覚悟しなければならない状況。しかし、六道は微塵も恐怖していなかった。

『丁度いい時間だな』

六道はそう言うと手を伸ばすのと同じ感覚で、背中や肩から触手状の何かを伸ばした。

魔物達は咆哮をあげながら鉤爪を、牙を、武器を振るい、炎や氷、電撃、衝撃波を放って六道を殺そうとする。

そしていくつもの断末魔が響いた。しかし、六道は先ほどと変わらない位置に立っていた。

『【魔王の欠片】はそれなりに使えるようになった。少なくとも、この手足と同じ感覚で。……もっとも、その手足も【魔王の欠片】でできているのだが』

六道は順調に【魔王の欠片】の使い方を学習し、人間とも、そして『アークアバロン』とも異なる肉体に適応しつつあった。

この世界の人間や魔物は【魔王の欠片】を使用する事で、【魔王侵食度】スキルを獲得し精神を徐々に乗っ取られるが、そうした事もない。やはり【魔王の本能】や【魔王の記憶】といった、グドゥラニスの魂の欠片を取り込んでいるからだろう。

『そして私自身の精神も影響は受けていない……とは言えないか。以前の私なら、こんな食生活は考えられなかっただろう』

六道は転生してからずっと、魔物しか喰らっていなかった。しかも生きたまま、肉も内臓もドロドロに溶かして骨も残さず啜っている。

『オリジン』で文明人として生活してきた六道にとって、そして魔物の肉を食材として利用しているこの世界の人々にとっても、異常な食性だ。

しかし、六道はその事に嫌悪感を覚えず……もっと言うなら、こうして自分の精神は【魔王の欠片】の影響を受けていないかと考えるまで、意識もしていなかった。

皿の上に乗った料理を食べるのと同じような感覚で、魔物を食い殺していたのだ。

『やはり肉体の影響を受けているという事か。君達はどう思う?』

魔物が使っていた武具が転がっているだけで、六道以外には生命が存在しない空間に彼の声がむなしく響く。

『問題があるとは思いません、六道さん』

しかし、六道の声に応える者が存在していた。【シャーマン】の守屋幸助だ。

『体が変われば、精神に影響を受けるのは当然ですよ。人間の感覚のままでは、【魔王の欠片】でできた体を使いこなす事はできません』

しかし、そう言う守屋の姿は輪郭がぼやけており、半ば透き通っている。そう、彼は物理的に存在していない。

そう、彼は転生せず魂のまま六道に憑いてこの世界に降りた存在、ゴーストなのである。

彼以外にも【アルテミス】のキャサリン・ミラーに【アレス】の杉浦七夜や【スレイプニール】の西鏡義彦、【バロール】のジョニー・ヤマオカ達もいる。【コピー】の井口健男はヴァンダルー……の分身であるバンダーに魂を傷つけられたので、顔も確認できない人型の靄としか確認できない状態だが。

彼らが転生せずゴーストと化して六道に憑いているのは、彼の力となるためだ。人として転生しても、短い時間で前世以上の力を手に入れるのは難しく、さらには彼らから足がついてヴァンダルーに存在を察知される可能性まで生じてしまう。

それぐらいなら、六道が【死霊魔術】で使うためのゴーストとなったままの方がいい。そう考えたからだ。

なお、【倶生神】のダー・ロンは円滑に情報をやり取りするために、ロドコルテの神域に残っている。

『そうか。私の事をよく知っている君達の言葉は信用できる。これからも頼むよ。

ランチの次は魔術の訓練と開発を行いたいが……ダンジョンでも強い魔物の生成には時間がかかるのが面倒だな』

六道がいるのは、王宮のある地下室に彼自身が創ったダンジョンの内部だ。魔王グドゥラニスの魂の欠片を持つからか、彼はヴァンダルーと違い通常と同じダンジョンを創る事が出来た。尤も、ダンジョンで生まれる魔物は制御できなかったが。

【魔王の欠片】は六道を魔王として認識しているのに、ダンジョンで生まれた魔物達は六道を異物として激しく敵視し、ついさっきのように殺そうと襲い掛かってくる。

その事に六道は若干違和感を覚えていた。魔物は本来、グドゥラニスがロドコルテの輪廻転生システムを模倣した魔王式輪廻転生システムによって魂が輪廻しているからだ。

だが、六道はグドゥラニスでもその配下の邪悪な神でもない。しかし、創ったダンジョンでは魔物が問題なく発生している。確認したが、魂も宿っていた。

なら、その魔物に宿っている魂は何処から来て、何処へ還るのか。ヴァンダルーに情報が漏れないように、ダンジョンの入り口には二重三重に結界を張り、霊が出入りする事はできないようにしている。だから、外部から入ってきた霊が魔物に転生しているという事もない。

だが、六道は『それは重要な事ではない』と考え、すぐに考察を辞めてしまった。

もしかしたら、魔王グドゥラニスの魂の欠片を持っているため、無意識に魔王式輪廻転生システムが干渉しているのかもしれない。または、ダンジョンが発生すると自動的に魔王式輪廻転生システムが干渉して魔物を供給する仕組みになっている可能性もある。

どちらにしてもヴァンダルーという強敵、そしてその後はアルダ勢力とも戦わなくてはならないかもしれない六道にとって、『自己の研鑽より優先するものではない』と結論付けた。

『オリジン』の時の実験体のように、魔物を手駒として使えれば戦力の足しになるかとも思ったが、それは『くだらない考えだ』とすぐに思い直した。前世の時のようにヴァンダルーに寝返るか、殺された後アンデッド化して寝返るだけだろう。

彼は、ヴァンダルーが創ったダンジョンで発生した魔物は、ダンジョン内では魂の宿っていない肉人形同然の存在である事を知らないため、自分が創ったダンジョンで発生した魔物の奇妙さに気がつかなかった。

『しかし、数か。アルダ達が育てている英雄候補達や、既に転生しているマオやゴトウダ、そしてオルバウムの将兵を駒として使えれば役に立つのだが。

特に、何も知らない将兵を利用できれば、ヴァンダルーは殺すのを躊躇うだろう』

何も知らないただの将兵でも、六道が武具を揃えてやれば多少は役に立つはずだ。しかし、それも先日の会議があの様子では、難しいだろう。テルカタニスに協力させれば、部隊の一つや二つ程度なら、時間と手間をかければどうにかなるだろう。しかし、時間と手間をかけてその程度では、支払う労力に成果が釣り合っていないのでやる意味はない。

『ステータスシステム。初めて聞いたときはゲームのようだと思ったが……自分だけがその恩恵に与れないとなると、羨ましいものだ』

そう言いながら、六道はダンジョンの奥に向かった。

オルバウムの王宮に入り込んだネズミは、物陰や天井裏、床下を這いまわり情報を集めていた。

『ちゅー、ちゅー』

『ギィィ~、ギュギィィィ~』

『チュ~チュ~』

『ヂュォォ~、ヂュォォ~』

「チュ~チュ~」

「さすが偉大なるヴァンダルー、どのような状況でも余裕を忘れない」

『いえ、ちょっと時間が出来てしまったのでネズミの真似をしていただけですが』

グファドガーンの魔術によって空間を歪め、拡張された王宮のある部屋の天井裏は、王宮へ潜入したヴァンダルー達の前線基地となっていた。

そこにはネズミらしく偽装した使い魔王や、おそらくネズミの真似をしているらしいヨモツシコメ、ネズミデーモン、生前ネズミだった骨人、そして本物のネズミがネズミらしさを競っていた。

ナンバーワンネズミコンテストでも開催しているのだろうか。

使い魔王の頭部にあるのは大きな単眼と蟲の触角で、足にはカエルなどの吸盤があり、レギオンの人格の一つであるイザナミが創る分身であるヨモツシコメは、皮膚がなく筋肉繊維が剥き出し、骨人に至っては変装も何もしていないので、鳴き真似以前の問題だ。外見だけで落選間違いなしである。

ネズミデーモンは小さな角が生えていて眼球が真っ赤な事を除けばネズミそのものの外見をしているので、もっともネズミに近い。

『とりあえず、優勝は新しく友達になったタダノ・ネズミさんです』

「残念だねぇ。ヨモツシコメも、皮膚さえあればねぇ」

『元ネズミとしては悔しいですが、今は勝者を称えましょう』

「チューッ!」

ネズミのタダノは喜ぶと、優勝賞品であるヴァンダルーの血と肉が入ったスープ皿に頭を突っ込み、ごくごくと飲んでいく。そこに同じ群れの仲間なのか、それとも家族なのか、複数のネズミとネズミデーモンと小ネズミたちが走り寄ってきて血を飲んでいく。

それをほほえましい光景を眺めるように見つめる一同。一匹参加者が混じっているが、細かい事は誰も気にしない。

ウルゲン・テルカタニスの企みと、おそらく彼を裏で操っているだろう六道について探っているはずなのに、こんなことをしている時間があるのかという意見もあるだろうが、時間はあるのだ。

ヴァンダルーは今のところ、強引な情報収集を……情報を持っていそうな人間を拉致して拷問や洗脳を用いて情報を絞り出すような事は、控えている。

その代わりに行っているのが、小動物に擬態して王宮の各部屋に忍び込んでの盗聴や、ブラガ達による書類の窃盗である。

また、対象を拉致しての尋問も行っている。常習性がなく後遺症も残らない薬を用いて前後不覚にした人を拉致し、尋問して、薬の効果が解ける前に元いた場所で解放するという親切仕様で。

そのため、人手が余るのだ。

王宮は広いと言っても部屋に限りはあるし、盗聴する対象も同様だ。同じ部屋に複数のネズミを忍ばせるのは無意味ではないが、十何匹も配置するのはただの過剰だ。

情報収集のために盗む書類も、一度ヴァンダルーの分身である使い魔王に見せれば【完全記録術】スキルの効果で、一文字も違えることなく覚える事ができる。

それらの書類を書き写すのも、分身の使い魔王が行うので問題ない。

薬の調合も、患者達が色々な意味で患者ではなくなったため暇になった精神治療院の院長が行っているので、順調である。

しかし、それでも情報収集は順調とは言えない。腐敗貴族の不正の証拠や、歴史に埋もれたオルバウム選王国の暗部の情報だとかは、既にダース単位で手に入れられた。しかし、六道聖の影やテルカタニス宰相との関係、何を企み何処にいるのかといった情報は、全く手に入っていない。

『しかし、六道はどこにいるのでしょうね?』

「テルカタニスが【魔王の欠片】や【装具】を集めていた証拠は割と簡単に手に入ったんだけどねぇ。まあ、これは写しだけれど」

前髪を真っすぐ切り揃えた日本人形に似た、美少女と美女どちらと見るか微妙な年齢に見える『レギオン』の人格の一人であるイザナミは、そう言いながら小指を引きちぎって投げ捨てた。

『ギィア゛ァァァ!』

投げ捨てられた小指は、大きめのドブネズミ程度の大きさの猿に似たフォルムの醜悪な獣、ヨモツシコメに変化する。

前世では生み出したイザナミ自身も、自分達を襲わないようにすることしかできなかった制御不能の凶暴な怪物である。

当然、そんな存在に諜報活動ができるはずがない。

「次は私。さぁ、手術しましょうねぇ」

しかし、イザナミは一瞬で褐色の肌のエキゾチックな雰囲気の美女、イシスに変身して逃げ出そうとするヨモツシコメを踏んで捕まえ、その頭部に用意してあったメスを突きさす。

「ギイィィィィ~っ!」

「フフフ……はい、できた」

だが、メスを数度動かして小型使い魔王を埋め込むと、すぐ北欧系の美女、ワルキューレに交代する。

「さあ、新たな勇士よ! 戦装束を受け取り、戦列に加わるのだ!」

『ギィ』

イシスによって改造されたヨモツシコメは、ワルキューレに従って戦装束……ネズミと同じ色の毛皮を羽織って、他の改造済みヨモツシコメ達と同じ場所に並んで待機する。

「キング、直接テルカタニスに聞くのはダメなのか?」

『それをしたら手っ取り早く済むのでしょうけど、同時に六道が気づくでしょうからね。奴に対して情報を何も掴んでいない段階では、それは避けたいのです』

六道とテルカタニス宰相が繋がっている事は、状況証拠としては真っ黒だ。書類を調べてみたが、やはりウルゲン・テルカタニスは【魔王の欠片】に関する研究の類は一切していなかった。それなのに、突然宰相は【魔王の欠片】を集め、先日には【魔王の欠片】製の武具を貴族達にお披露目した。

当然彼がハドロス達に説明するとき存在を語った職人や錬金術師たちも存在しない。テルカタニス家の屋敷はもちろん、所有する施設は既に調べてある。家臣の中に武具職人はいないし、錬金術師は王宮に出入りしていなかった。

こうなると、テルカタニスは何者か……貴族や商人、そして犯罪組織や既に虫の息である邪神派の吸血鬼組織以外の存在と組み、それの指示で動いているとしか思えない。

そうであるなら、その「存在」は限られる。『法命神』アルダか、ロドコルテのバックアップを受けた六道聖だ。この二者なら、『神託』という手段を使って痕跡を残さずテルカタニスと接触できる。

しかし、アルダの線は調べれば調べるほど薄いと思われた。アルダなら【魔王の欠片】製の武具を、ハドロスによればカモフラージュとしてだが軍で採用するようにテルカタニスに提案させるとは思えない。

それに、アルダの指示で動いているならテルカタニスはもっと堂々と「これは神の意志だ」と言いそうなものだからだ。陰謀を企むにしても一人だけではなく協力する同志を募るか、神殿に協力を要請するなりなんなりするだろう。アルダから何らかの指示を受けていたとしても、アルダが神である以上地上で行動するのは人間であるテルカタニスなのだから。

だから六道の可能性が濃厚であると、ヴァンダルー達は考えていた。

『主よ、六道はもしやまだ転生していないのでは?』

「なんだとっ!? それではこうして探しているのは無駄だったというのか!?」

「ワルキューレ、声がでかくてびっくりする」

「私の魔術で振動を遮断しているため、この部屋での音は外には漏れない。だが、気を緩めすぎるのは良くない」

「むっ!? それはすまない!」

『小声で叫ぶとは器用になりましたね、ワルキューレ。それはともかく、転生はしているはずです。テルカタニス宰相に【魔王の欠片】製の武具を渡したのは、彼でしょうから』

『なるほど、たしかに。しかし、その推測が正しいとすると、六道聖は【魔王の欠片】を体に寄生させているか、【魔王の装具】を使用して材料を作っていると。

やはり後者でしょうか?』

「偉大なるヴァンダルーと同じく死属性魔術の適性を持つと言っても、六道聖なる者に偉大なるヴァンダルーと同じことが可能とは考えにくい。私も後者であると考えます」

【魔王の欠片】を体に寄生させると、徐々に欠片に意識を乗っ取られてしまう。だから、封印が維持されている限り危険性の無い【装具】を使っているのではないか。そう骨人とグファドガーンは推測していた。

「だが、六道が体に寄生させていないならテルカタニスが集めたはずの【魔王の欠片】の封印がどこかにあるはずだ!」

小声でそう叫ぶワルキューレの言葉に、使い魔王達が頷く。

『六道が【魔王の欠片】を体に寄生させているかはともかく……おそらく隠し部屋の類がまだあるか、空間属性か、六道が開発した新たな死属性魔術か、それとも何らかのチート能力で特殊な空間を作ってそこに籠っているのでしょう。

もしかしたら、ダンジョンを創って入り口を物理的に塞いで普通の壁に偽造するとか、そんな事をしているのかもしれません』

「なるほど、それで数を揃えるためにネズミを変化させようとしているのですね」

『まあ、それもあります。野生の勘が助けになるかもしれませんから』

そう話している間に、ヴァンダルーの血肉をたっぷり食べて腹を満たしたネズミたちは、スープ皿から顔を上げて鳴き声を発した。

「チュ~」

大きさも顔つきも色も体重も、外見は何もかもネズミのままだ。

『見た目は変わっていませんが、魔物です』

「普通、魔物は大きくなる。小さい魔物は弱い。頭が良くて小さい魔物、珍しい」

『とりあえず、小悪魔ネズミ……インプマウスと名付けましょう。さあ、城の中を探すのです』

「ヂュゥゥ~!」

インプマウスと名付けられたネズミたちは、六道聖を探すために城中に散って行った。