軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百八十八話 ペルセウスと韋駄天

サルア・レッグストンとジークは、友人同士だった。お互いに親がヴィダル魔帝国の首都タロスヘイムに移住してきた事と、重要人物の子弟であると言う点が共通していたので、会う機会が多かったからだ。

サルアは魔帝国の将軍兼宰相チェザーレと、その弟クルトの甥っ子。対してジークは原種吸血鬼ゾルコドリオの義理の息子である。

何より、年齢が近い。これだけで、子供達は友達になる事が出来る。

「やっぱり、俺はできるだけ早く打ち明けるべきだと思う」

「……隠したまま平穏に生きていく、ってのは無理かな?」

「何度も言ったけど、無理だと思う」

だが、ジークとサルアは共通の秘密によって強く結ばれていた。それは何か悪戯をしたとか、秘密基地を一緒に作ったとか、そう言った微笑ましい事ではない。

「でも、力を使わず、知らんふりしていれば上手く行くんじゃないか? 僕達は名前も顔も違うし……」

「それが出来ると思うか? 確かにカナコやレギオンは俺達を知らないようだけど、その後来た連中は知っているかもしれないんだぞ」

そう、二人は『オリジン』から送り込まれた転生者だったのだ。

ヴァンダルーとの不意な遭遇の結果、本来なら五歳から六歳の間に戻るはずの記憶と人格を、思い出しては忘れる事を繰り返していたが、最近になってようやく安定した。

記憶と人格が不安定だった頃は、次思い出すのは何時か、ヴァンダルーに殺されるのではないか、ばれればアンデッドにされているのではないか?

そう怯えていたサルアだが、偶然ジークも転生者である事を知ってからは、ある程度安心する事が出来た。

そして自分達は重要人物の親類であり、ヴァンダルーに転生者である事がばれても、そう簡単に処刑される事はないだろうと理解できた。

お蔭でサルアは度々襲われていた食欲不振と睡眠不足が、一気に解決した。それを彼の両親は、「歳の近いジーク君と友達になった事で、精神的に安定したのだろう」と解釈した。

そのため、元貴族のレッグストン伯爵夫婦はその歳の近い友達、ジークと息子がよく遊べるようにしたのだ。貴族の子弟が、貴族ではない家庭の子弟と親しく遊ぶ。

これだけでも王侯貴族以外は家畜を飼うための家畜程度にしか考えていない貴族には、出来ない英断である。

だが、お蔭でサルアはジークと今日まで様々な事を話し合い、相談する事が出来た。

同時期に死んで転生したはずのケイ・マッケンジーはどうなったのか? カナコ達は自分達の事を知らないのだろうか? ロドコルテは記憶と人格が安定した後、一回だけメッセージを寄越したが、今は何も言ってこないのは何故か?

そして、ヴァンダルーに自分達の正体を告白するか否か。彼は、サルアとジークによく会いに来た。他の子供達と一緒に遊んでもらった事も、一度や二度ではない。

どうやら、彼は最近まで体調不良が続いていたサルアを気遣ってよく様子を見に来ていたらしい。

「ヴァン兄なら、きっと分かって……くれると良いんだけど」

「凄く不安だよ。ジークは、あの時居たんだろ? 僕も直接は攻撃してないけど、参加していたし」

そのため、二人ともヴァンダルーに対しては前世の記憶と人格が蘇る度に後ろめたさを覚えていた。思い出したからと言って、覚えていない時の出来事を忘れた訳ではないのだ。

それに記憶が戻ってから聞いた、ロドコルテからのメッセージの内容。そして、確認した自身のステータスにあったのはロドコルテからの加護ではなく、【ヴァンダルーの加護】だった衝撃は忘れられない。

二人とも魂を砕かれた【グングニル】の海藤カナタと仲が良かった訳ではなく、ロドコルテを信仰している訳ではない。

しかし、ステータスにロドコルテの加護はなかった。それは、二人にとって他の転生者達から孤立してしまった事を意味する。

自分達が今居るのはヴァンダルーが治めるヴィダル魔帝国であり、ここを出て自力で生きていくのは難しいのは二人共理解していた。前世の記憶と人格を思い出したと同時に、力も戻って来たから実力的には不可能ではない。難易度の高いダンジョンにさえ潜らなければ、ランク3や4の魔物ぐらいなら屠れるだろう。

しかし、高さ数千メートルの山脈を越えて他の国に行くのは無理がある。

「だからって、正直に話して大丈夫かな? 黙ったままでも誤魔化せないかな?」

すっかり貴族のお坊ちゃんらしい容姿になった【ペルセウス】の鮫島悠里……サルア・レッグストンが幼児らしく甲高い、舌足らずな口調で尋ねる。

前世の彼を知るジークとしては、激しい違和感を覚える姿と声だ。

「誤魔化せるわけないだろ。もう思い出しちゃったんだから」

しかし、それは【韋駄天】の田中仁……ジークも同じ事だった。サルアよりも一つ年上だが、傍から見れば二人とも可愛らしい幼児でしかない。

「前と同じように振る舞えるか? 俺はボロを出す自信がある」

「まあ、何事もなかったように振る舞うのは難しいと思う……」

「俺は、絶対無理だ」

「……うん、僕も無理」

前世の記憶と人格を思い出したからといって、現世の自分を忘れた訳ではない。だが、それまでと同じ幼児らしい振る舞いをするのは、難易度が高すぎる。

二人とも前世では軍の訓練を受けたが、軍でも幼児になりきるための演技指導はしてくれなかった。

これが普通の国なら、二人も演技をする事を選んだだろう。一度や二度、年相応でない言動をしても、普通の家族なら「まさかうちの子は前世の記憶があるんじゃないか!?」なんて思わない。精々うちの子は頭が良いなとか、少し変わっているなと思うぐらいだろう。

だが、ここはヴァンダルーが治める国だ。転生者に狙われている転生者が皇帝なのだ。しかも、彼は国民全員に自分や、カナコ達が異世界から転生してきた事を公表している。

それを知った当時、『地球』でその手の作品をいくつか読んだ事があるジークは、その手の事は黙っているのがお約束だったのではないかと眩暈を覚えたものだ。

「しかも、ヴァン兄は俺達に見えない霊と話が出来る。俺達がつい漏らした独り言も……もしかしたらこうして相談している事も、筒抜けかも」

サルアとジークは、周囲を見回して幼児らしからぬ仕草で溜め息を吐いた。

霊を見る事が出来ない二人には、今この瞬間、霊が盗み聞きをしていても分からない。

サルアの【ペルセウス】は、自分を見ている相手を停止させる事が出来るチート能力だ。ただの麻痺や、【デスサイズ】のように動きを止めるのではなく、状態を固定する事が出来るのだ。

能力を受けた相手の時間は止まり、【ペルセウス】が効果を発揮している間は外部から影響を及ぼす事が出来なくなる。斬ろうが撃とうが焼こうが、傷つける事は出来ない。相手の方も、停止している間の記憶は残らない。

まるで英雄ペルセウスが首を斬り落とし、武器として使ったメデューサの生首を見て石化したかのように。……だったら【ペルセウス】じゃなくて【メデューサ】でいいんじゃないかと、コードネームが決められた当時のサルアも思ったが、イメージ的な問題があったらしい。

ともかく、【ペルセウス】は強力な能力だ。流石に録画された映像や写真越しでは発動しないが、ライブ映像なら画面の向こう側に居る相手も対象にする事が出来る。

前世では魔術で聴覚を強化した傭兵や盲目の剣士に追い詰められ、最期はブービートラップに引っかかって死んでしまったが、視覚に頼っている相手との戦いならまず負けない。

しかし、流石にサルアが認識できない霊は能力の対象外だ。……もしかしたら、霊も停止しているのかもしれないが、だからと言って能力を常に発動する訳にはいかない。【ペルセウス】は能力を発動させている間中魔力を消費するし、停止させる人数が増える程その消費量は増えていくからだ。

そしてジークの【韋駄天】は、彼自身と彼が持っている物品の超加速を可能にする力だ。能力を発動した彼は普通に走っているつもりでも、スポーツカー並みの速さで走り、彼にとっては普通のパンチが音速を超える速さになる。

更に触れている機械や植物、動物、人間も一緒に加速する。……身体から離れてしまうため、銃弾等飛び道具は加速しないが、それでも十分強力な能力だ。

なお、加速していてもジーク……当時の田中仁が急に成長したり老化したりはしなかった。流石チート能力である。

しかし、幾ら加速しても霊には無力だ。見えないし、触れられないので。

「でも、もっとタイミングを考えた方がよくないかな? カナコ達も僕達の事は知らないようだし」

「カナコ達以外の仲間は、知っているかもしれないだろ。そいつらがヴァン兄に俺達の事を話したら、最悪だぞ」

「そっか……でも……僕の事で父上達に迷惑がかかったらどうしよう」

「俺だって、パパとマ……父さんと母さんに迷惑がかからないか、不安なんだ。でも、秘密にして、もっと悪いタイミングで、ヴァン兄の敵の口から暴露されるよりいいだろ」

前世の人格と記憶は戻っているが、それで現世の家族への感情が揺らぐ事はない。ヴァンダルーに対する印象も、現世で築いた関係性に準じている。

サルアにとってヴァンダルーは父や叔父の上司で、ジークにとっては父親……ゾッドの弟子だ。そして、何度も一緒に遊んだ事もある、年上の妙な友達である。

「分かった。覚悟を決めて謝りに行こう!」

「ああ、行こう!」

そして二人はストレートに真実を話し、謝った。

そういった事情説明を受けたヴァンダルーは、全てを見透かしているような透明な視線を二人に向けて言った。「良く自分達から告白してくれました。その勇気に免じて、前世の遺恨はきれいさっぱり忘れましょう」

そして二人の頭を良い子良い子と撫でる。

「えっ? いいのか? 俺、前世でアンデッド化したヴァン兄を攻撃しているんだけど」

「僕もその場にいたんだけど、本当に許してくれるの?」

驚いた様子で顔を上げた二人に、ヴァンダルーは透明な視線……実際には節穴な目で二人を見つめ返す。

「構いませんよ。俺も前世で死んだ直後は恨んでいましたし、今でも雨宮寛人、成美夫妻には言いたい事が山ほどありますし、アサギはうざったいし、六道は殺そうと思っていますが」

極自然な様子で前世の仲間達の名前を挙げるヴァンダルーに、サルアとジークの顔が青くなり、不安そうに震えはじめる。

『オリジン』にいるバンダーを通して色々知っているため出た本音が、二人を怖がらせてしまった事に気がつき、ヴァンダルーは慌てた様子で言葉を続けた。

「ああ、ですから、二人に遺恨はありません。恨み言を言うつもりもないし、何かするつもりもありません。神に誓って」

そう誓うが、何故かより不安そうな顔になる二人。困り果てたヴァンダルーの背後に、グファドガーンが現れて助言を囁いた。

「……母さんにかけて誓います」

彼女の助言に従ってそう言った途端、二人はほっと肩から力を抜き、青かった顔色も元に戻った。どうやらヴァンダルーは、子供にも度の強いマザコンであると認知されているようだ。神と違って、母にかけて誓った事は絶対破らないだろうと信頼される程に。

「母さんはヴィダの化身なので、神への誓いでも絶対に守るつもりなのですが……」

「ロドコルテは?」

「あれは神に分類される存在であると言うだけで、俺が尊重し敬う存在ではありません。アルダと同じです。あれに祈るぐらいなら、俺は貧乏神を祭る荘厳な神殿を建立します」

「そうなんだ。まあ、俺も敬うつもりは無いけど」

ジークとサルアも、ロドコルテを敬うつもりはなかった。見捨てられたようなものだからというのもあるが、今になって振り返ると、ロドコルテのやり口が悪辣に思えたからだ。

この場に居ない【ウルズ】のケイ・マッケンジーを加えたジーク達三人は、ヴァンダルーと戦う事を拒否した転生者だ。それはロドコルテも知っている。

知っている筈なのに、サルアとジークはヴァンダルーと縁のある親の子として転生させている。

ジークはまだ自分の実の父親がアミッド帝国前皇帝マシュクザールだとは知らないが、原種吸血鬼のゾルコドリオが義理の父となっている事から、生まれた時からヴァンダルーと遭遇するのは避けられなかったと考えている。

ロドコルテが何を期待していたのかは、考えるまでもないだろう。

実際には、ヴァンダルーが導士になり、導いた対象の魂をヴィダ式輪廻転生システムに移動させる事が出来るようになったため、ロドコルテの期待通りどころか逆の結果になったが。

勿論、二人とも両親に対して不満はない。サルアは叔父の一人がアンデッドだし、ジークは父親が尋常ではないマッチョだが、他の両親の元に産まれたかったと思った事はない。

「それになにより、俺はチェザーレとクルトの甥や師の息子と敵対したくありません。あなた達自身の事も、よく知っていますし」

何より、二人の家族はヴァンダルーに受け入れられる大きな理由になっていた。

アンデッド化し、ヴァンダルーの狂信者となったチェザーレは彼がサルアを殺したとしても、深く哀しむだろうが、主人を裏切ろうとはしないはずだ……精神的に何か壊れるかもしれないが。だがクルトは大きく動揺し、葛藤に苛まれる事になるだろう。

ゾルコドリオは、ジークが転生者である事を理解したとしても、ヴァンダルーが息子を殺せば彼を許さないだろう。生死をかけた戦いに発展するはずだ。

ヴァンダルーとしては、それは何としても避けたい。だから、二人が早いうちに自分から転生者である事を告白してくれて助かった。

「あなた達が俺と敵対する事を選んでいたら、どんな手段を使っても平和的に見えるよう和解しなければならないところでしたからね。ああ、良かった」

「う、うん。俺も、ヴァン兄の敵にならなくて良かったよ」

「ぼ、僕も!」

サルアとジークは、ガクガクと首を上下に振った。ヴァンダルーの言葉から、もしもの時は彼が暴力以外の全ての手段を使って、自分達と強制的に和解するつもりなのが分かったからだ。

【猛毒分泌】で作った薬物と【精神侵食】スキルで洗脳を施し、更に【魔王の影】を使った脳改造までされる、平和的に「見える」和解を避けられたのは、二人にとって間違いなく幸運である。

「まだタロスヘイムに居ないのか、記憶が戻っていないだけか分からないけど、ケイも俺達と同じだと思う。だから……」

「彼女自身が俺と敵対するつもりはないと言うのなら、彼女自身の身の安全は保障します。家族は……まあ、その人達次第になりますね」

この場に居ないもう一人の仲間についても言うジークに、ヴァンダルーはそう答えた。ケイについてヴァンダルーはよく知らない。地球でいったい誰だったのかも、覚えていないのだ。敵対するかもしれない転生者である点でしか関心がなかったので、恨みはない。

彼女はジーク達と同じように、ヴァンダルーと因縁のある家に産まれているはずだ。しかし、ジークのように実の親が誰なのか分からないよう、情報操作されている場合があるので調べるのは難しいだろう。

オルバウム選王国でヴァンダルーが関わった三つの公爵領、ハートナー、サウロン、そしてアルクレム。この三つに限っても、治める公爵家の下には侯爵家が二つから三つ、伯爵家が五以上、子爵家が十数、男爵家以下が沢山あるのだ。

アミッド帝国側は、数える気にもならない程多い。

そして正子だけではなく庶子、更に隠し子まで含めると数え切れないほどの子供が生まれている。

ケイをヴァンダルー達から探し出すのは、今の段階ではまず無理だ。……そもそも、調べ上げても転生したケイに前世の記憶や力が戻っていなければ、普通の幼児と見分ける事はできない。

そしてケイの現世の家族に関しては、その家族次第としかヴァンダルーは言えない。

「ケイについては情報を集め続けるという事で……では、次は二人の家族に自分が転生者である事を打ち明けましょうか」

「や、やっぱり父上達にも言わなきゃダメ?」

出来れば黙っていたいと顔に出ているサルアに、ヴァンダルーは言い聞かせるように答えた。

「ダメじゃないですけど、その内ばれますよ。二人ともまだ自覚していないようですが、前世の力が戻ったという事は、スキルや能力値も戻ったという事です。

子供とは思えない身体能力に、あり得ないスキルのレベル。隠し通すのは難しいですよ」

子供同士で遊ぶにしても、身体能力が異常に高い為常に加減しなければならない。喧嘩で少しでも本気を出そうものなら。相手を殺してしまう。

スキルレベルも高いので、幼児にあるまじきナイフ捌きや弓の腕、魔術の冴えを見せれば、天才児、神童として注目を集める事になる。

「そう言えば……ヴァン兄をどうするか考えるのに夢中で、気がつかなかった」

「ステータス! ……あ、本当だ。僕、今なら父上に腕相撲でも勝てそう」

ただ、ジークとサルアはまだ自覚していなかったようだ。ヴァンダルーをどうするか二人で相談しながら考えていたので、最近は他の普通の子供と遊ぶ機会がなかったため、目立つ事はなかったようだが。

しかし、これからも目立たず隠し続けるのは難しいだろうと、二人とも思い至ったようだ。

「分かった。でも、大丈夫かな?」

「大丈夫になるように、俺も一緒に説明しましょう。なに、記憶があるか無いかの違いだけで、前世は皆他人です」

ヴァンダルーはロドコルテの輪廻転生システムについて詳しくないが、転生者を送り込める時点で、前世と現世に明確な関連はないと考えていた。

親兄弟や我が子は前世でも家族や親類等、親しいものだった。そんな事はないだろうと。そうした関連があるのなら、完全な異物である転生者を異世界から送り込み、特定の人物……自分と因縁のある家の子供として転生させる事は出来ないだろうと推測していた。

そして、その推測は正解だった。ロドコルテの輪廻転生システムに前世と現世に関連性は皆無だ。

母親の前世は威勢の良い大工の親方で、父親の前世はジャングルのハンター、ジャガー。そして息子は養豚場で出荷された豚。そんなものだろう。

「もしかしたら二人のご両親は、あなた達二人を生まれ変わらせるために、自分達の息子として本来産まれてくるはずの魂と取り換えられてしまったと思うかもしれません。だとしても、それは考えても無意味な事です。

本来産まれて来るはずの魂は勿論存在したでしょうが、前世の記憶と人格を思い出す前のあなた達と差はないでしょうから」

輪廻転生を司る神であるロドコルテが、輪廻転生を恣意的にコントロールできる時点で「本来息子として産まれてくるはずだった魂」について考えるだけ無駄だろう。……その「本来息子として産まれてくるはずだった魂」も前世では所詮他人で、記憶も何も全て忘れているはずだからだ。

サルアとジークの両親にとっては、ただ「息子が前世の記憶と人格を思い出した」と考えるのが最も無駄がなく、楽な事だ。

「それに、強いて責任を追及するのなら二人ではなく、俺になるでしょうからね。説明するのは当然でしょう」

【ペルセウス】の鮫島悠里がサルア・レッグストンとして、【韋駄天】の田中仁がジークとして生まれ変わったのは、二人がヴァンダルーと戦う事を拒んだからだ。

だから、二人はヴァンダルーと因縁のある親の子供に転生させられた。なら、責任は自分にあるのだろうとヴァンダルーは考えていた。

「そ、そんな事ないよ! 僕達を転生させたのはロドコルテなんだから」

「サルア、俺もそう思いますが、ロドコルテが悪いのは『悪人が悪い』のと同じくらい当然の事ですから。それに、奴はサルア達の両親のケアをしてくれませんし」

必要なのは本当に悪い存在ではなく、サルア達の両親に事態を説明し不満の対象になる存在である。ヴァンダルーはそう割り切っていた。

「尤も、そんなに深刻な事にならないと思いますよ。俺やカナコ、レギオンという前例がありますし」

その後、ヴァンダルーはサルアとジークの両親に二人が転生者である事を説明したが、彼の予想通り深刻な事態にはならなかった。

サルアの両親は上司、仕える国のトップが直接説明に来た事に驚き、息子が転生者である事に驚いたが彼を拒絶するような事にはならなかった。

ヴァンダルーの説明通り、サルアは前世の記憶や人格を思い出していても、昨日までの事を忘れた訳ではなかったからだ。

それにサルアの両親であるレッグストン家も激動の人生を生きる人々だ。そういう個性を持った息子が生まれたのだと考えて、対応するべきだと彼らの理性は考えたようだ。

ジークの両親はもっと簡単だった。何せ、父親は原種吸血鬼のゾルコドリオである。元から血も繋がっていない。

「種族すら違う私をこの子は父と慕ってくれているのです。私には、それで十分すぎる。ただ、この子が思い悩む事があれば同じ転生者として力になって頂きたい」

母親のレイチェルも、ジークをすぐ受け入れた。彼女もアミッド帝国の諜報機関に記憶を消され、偽りの記憶を植え付けられるなど、激動の人生を生きて来た女性であり、異常事態に慣れていたのだろう。

「でも陛下、将来この子が思春期になって反抗期になったら私もいろいろと考えてしまうでしょうから、よろしくお願いしますね」

「当家もよろしくお願いします」

「はい。こちらこそ末永くよろしくお願いします」

こうして、両家はヴァンダルーと一層深い縁を結び、サルアとジークはヴァンダルーと平和的に和解したのだった。

―――――――――――――――

・名前:ペイン

・ランク:10

・種族:グレートセイタンモス

・レベル:85

・パッシブスキル

怪力:7Lv

高速再生:3Lv

猛毒分泌:毒針鱗粉:10Lv

毒無効

自己強化:従属:9Lv

直感:3Lv

身体強化:針羽口吻:10Lv

魔力増大:1Lv

精神耐性:7Lv

能力値強化:導き:6Lv

・アクティブスキル

突撃:5Lv

格闘術:5Lv

限界超越:1Lv

高速走行:2Lv

連携:10Lv

槍術:5Lv

盾術:7Lv

鎧術:7Lv

縮小化:1Lv

高速飛行:3Lv

御使い降魔:1Lv

・ユニークスキル

ザナルパドナの加護

ヴァンダルーの加護

○魔物解説:グレートセイタンモス ルチリアーノ著

やや毒々しいが美しい模様の羽を持つ巨大な蛾の魔物。サイズは通常のワイバーンを上回り、様々な毒性を持つ鱗粉を撒き散らす、死の象徴とされる魔物……のはずだ。少なくとも、伝説では。

ただペイン自身はパウヴィナのパーティーでは癒し系で、鱗粉も毒性よりも薬効成分を込めてまかれる事が多いようだ。

【盾術】で巨大で強靭な羽を、【槍術】で鋭い口吻を、【格闘術】で足の鉤爪を使い、戦うことができる。

人の言葉は話せないが、知能は高く性格も穏やかである事が察せられる。

ちなみに、ルヴェズフォルと師匠は彼と筆談を用いずコミュニケーションが可能だ。ルヴェズフォルは声で、師匠は触角を触れ合わせる事で。

なお、その際師匠はキュールの鳴き真似をする事が多いが……会話している訳ではなく、鳴き真似に意味はないそうだ。

・名前:ルヴェズフォル

・二つ名:【暴邪龍神】 【パウヴィナのペット】 【フサフサ鬣】

・ランク:10

・種族:イビルロードワイバーン

・レベル:77

・パッシブスキル

精神汚染:3Lv

能力値強化:君臨:5Lv

怪力:10Lv

猛毒分泌:尻尾:6Lv

水属性無効

高速再生:3Lv

能力値強化:忠誠:パウヴィナ:5Lv

自己強化:飛行:7Lv

自己強化:遊泳:5Lv

身体強化:翼尾爪:5Lv

能力値強化:導き:3Lv

魔力増大:1Lv

・アクティブスキル

高速飛行:7Lv

高速遊泳:10Lv

突撃:10Lv

格闘術:5Lv

水属性魔術:10Lv

魔術制御:5Lv

水のブレス:10Lv

連携:5Lv

御使い降魔:1Lv

・ユニークスキル

ヴァンダルーの加護

○魔物解説:イビルロードワイバーン ルチリアーノ著

ワイバーンの新種。もしかしたら、世界で初めてランク10に至ったワイバーンかもしれない。まあ、正確には封印されている龍なので、普通のワイバーンとは知能も含めて比べてはいけないのだろうが。

しかも、飛竜と評されるワイバーンなのに何故か水中でも高速で泳ぐ事が可能で、水属性の魔術を使い、吐くのも水のブレスと言う珍妙さだ。

これは、彼が元々水属性の龍である事が理由のようだ。

ちなみに、我々人間の魔術師の多くが練習用に習得する無属性魔術を使えないが、それに関して質問すると『我を人間の魔術師風情と一緒にするな。我等龍や真なる巨人は、生まれつき自らと親しい属性を操る術を知っているのだ』とありがたい言葉を賜った。

貴重な証言の代償として、私は師匠に「最近彼の鬣は荒れ気味のようだ。もっと念入りにケアした方が良いと思うよ」と助言したのは言うまでもない事である。