軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百七十九話 ガルトランドコンサート

カチャカチャと音を立てながら、スパナやドライバーを動かして配線を繋ぐ。ネジやボルトをしっかり締め、緩まないよう確かめる。

「おーい、そこを先に繋げると、隣のネジを締めにくくなるぜ」

「なるほど、確かに腕の構造上やり難いですね。じゃあ、触手で締めましょう」

「……おいおい、触手を使うのはありなのかよ。それに、どうせなら魔術師らしく【念動】じゃないのか」

ダグは、手の甲から生やした触手とその先端の鉤爪で器用にネジを締めるヴァンダルーを見て、苦笑いを浮かべた。

「俺の【念動】はダグの【ヘカトンケイル】程器用に使えません。ネジ回しなんてまず無理です」

「触手でネジを回しながら話すお前も十分器用だろ。それはともかく、機械いじりをした事がないから、真似事だけでもやりたいって言ったのはお前だよな? それに俺は付き合っている訳なんだが……お前が触手を使うなら、俺だって【ヘカトンケイル】を使っちまうぞ」

ダグのチート能力である念動力、【ヘカトンケイル】。百腕巨人の名を持つ力を使えば、同時に複数のドライバーやスパナを操る事は容易い。いや、そもそも工具を動かさなくても、ネジやボルトを直接動かして機材を組み立てる事も可能だろう。

それに対してヴァンダルーは、首を傾げた。

「そう言えば、何故今まで使っていなかったのですか?」

寧ろ、何故まだ使っていないのかと、触手でドライバーを操ってネジを締めるヴァンダルー。ダグは、「本物の機械いじりっぽくする」という気遣いが完全崩壊したため、仰け反って頭を抱えた。

「俺も使って良かったのかよ!?」

「ヴァンダルーがやりたかったのは『機械いじりの真似事』で、やり方まで『地球』と同じじゃなくていいって事だったみたいね」

メリッサはそう言って、二人の作業を見守っている。この作業を始める前に、ヴァンダルーは工具はもちろん、ネジ、ボルト、そして配線まで【ゴーレム創成】で創りだした。

そう、態々部品とそれを組み立てるための工具を創りだしたのだ。彼がその気になれば、最初から部品の組み立ても配線の接続も済んだ状態で創りだす事も可能だったと言うのに。

それだけ機械いじりの真似事に興味があったという事だが、同時に今ダグとしている作業がヴァンダルーにとっては遊興に過ぎない事の証拠でもある。

「まあ、良いじゃないですか。こうして大道具の組み立てからやっていると、イベントに臨む意識が変わるってもんです。

ふぅ、スパナを握ったのなんて『激烈オフロード』に出演していた時以来ですよ」

そう言いながら、別の機材の組み立てをしていたカナコが額を袖で拭う。……別に汗はかいていないのだが、ただの気分の問題である。

「確か、その番組ってお前の最後のレギュラー番組だったか? 確か、オフロードカー専門番組の」

「ええ、魔力と電力のハイブリッドエンジンの整備を。でも……最後のじゃありません! 後、ちゃんと『前世の』ってつけてください! 縁起が悪いじゃないですか。今世での芸能活動に影響が出たらどうしてくれるんです、まったく」

そうカナコが文句をつけると、ダグとメリッサは声に呆れを含ませて言った。

「縁起って、まさかこっちの世界でも番組に出るつもりなのか?」

「知っていると思うけど、この世界にはネットもテレビも、ラジオだって無いのよ」

二人が言うように、『ラムダ』世界にはおおよそ『番組』と呼ばれるものは無い。演劇はあるが、劇は番組ではない。

それは当然カナコも知っているが、彼女は得意気にヴァンダルーの頭に手を置いて宣言した。

「確かに無いですけど、忘れましたか!? 私達にはヴァンがいます!」

「はいはい、いますよー」

「いや、いたからって……もしかして、テレビやネットを再現する目途でもついたのか!?」

数々の不可能……ラーメンやカレーの再現を可能とした彼なら、もしかしたら情報伝達や娯楽の分野でも何か成し遂げるのではないか? そんな期待が膨らむ。

「いいえ、それはまだまだです」

「……そりゃそうだよな」

だが、期待は膨らんだだけで萎んでしまった。しかし、肩を落とすダグにヴァンダルーは「でも」と続けた。

「でも、将来は分かりません。数十年か数百年後、未来ではこの世界に合った形の近代メディアが発展しているかもしれません。……映画の再現は出来るようになりましたし」

【魔王の欠片】を使用しての、映像の上映も可能になっている。『地球』や『オリジン』と全く同じとはいかないだろうが、将来的には様々なメディアが情報を伝え、娯楽となって人々を楽しませているかもしれない。

「その日の為に! 今はこうして目の前のイベントを成功させるため一歩一歩行きましょう! 折角ヴァンもステージデビューしてくれる事になったんですから」

そう未来の番組出演に野心を滾らせるカナコがヴァンダルーの肩を叩くと、彼は身体を硬直させ、目を閉じた。

《【猛毒分泌:牙爪舌】、【魔王砲術】、【高速飛行】スキルのレベルが上がりました!》

「ど、どうしたんですか!? 突然動かなくなりましたけど」

動かなくなったヴァンダルーをカナコ達が心配そうに見つめて尋ねる。意識を脳内アナウンスと、使い魔王から伝わって来た感覚から戻したヴァンダルーは、大丈夫だと頷いた。

「偽クワトロ号が予定通り自爆しただけですから、大丈夫です」

昨日の会議で今後の方針が決まった後、ヴァンダルーは爆弾代わりの偽クワトロ号を創った。相応の量の木材を買い、【ゴーレム創成】スキルでクワトロ号そっくりの船を造船し、使い魔王や【魔王の脂肪】を詰め込んだ。

そしてそれをグファドガーンが地上へ【転移】させ、十分に惹きつけてから自爆させたのだ。

魔力は相応に消費したが、逆に言えば相応の魔力と木材、そして時間があれば幾らでも創る事が出来るお手軽な作戦である。

「レポビリスの霊が言っていた通り、空間属性の神がいました。今は、一応奴らを使い魔王に尾行させています。……多分、失敗しますけどね」

小さな使い魔王は、材料こそ【魔王の欠片】だが、この魔王の大陸には【魔王の欠片】を傷つける事が出来そうな高ランクの魔物がうようよしている。

流石に亜神よりも弱いランク12以下の魔物が大半だが、戦闘能力より隠密性を優先して作った使い魔王は、それらの一撃で簡単に壊されてしまうだろう。

ならほぼ透明な使い魔、レムルースを放つのはどうかというと……この魔王の大陸の過酷な環境に、脆弱なレムルースでは耐えられないのだ。魔物に見つかる前に消滅してしまう。

「じゃあ、さっきのは使い魔王が感じた自爆のショックと、脳内アナウンスか何かを聞いていたんですか? 痛みも共有しているのに、よく自爆作戦なんて実行できますね」

ヴァンダルーは、使い魔王が感じている痛みをそのまま共有していた。だから当然、偽クワトロ号で焼かれる使い魔王達の感覚も共有していた。

「いっそのこと、使い魔王は痛みを感じなくした方が良いんじゃないか?」

「ダグ、痛覚を喪失すると動きが大雑把になってしまいますし、感覚も鈍くなりますから。まあ、今回は大雑把になっても構わなかったかもしれませんけど」

何せ船に乗って、十分に惹きつけるまで攻撃を仕掛けるだけだ。動きが雑になったとしても、問題無かったかもしれない。

「それに、痛みについては、感じ方が前とは変わっていますから大丈夫です」

「痛みの感じ方が変わる? それって鈍くなったって言う事?」

メリッサに尋ねられたヴァンダルーは、説明を始めた。

この世界には、レベルと能力値が存在する。そして能力値には、生命力……いわゆるHPも存在する。そのため、一般人が死ぬような威力の一撃を受けても、生命力を成長させた上級冒険者や騎士等は、平気な顔をしている事が多い。

そうした現象は、物理的な傷だけではなく、痛みの感覚にも現れる。痛みは危険を知らせる信号だという言葉もあるが、その信号の基準が生命力の上昇によって変化してしまうのだ。

一般人なら、気絶も出来ないような激痛を覚えるはずの攻撃を受けても、上級冒険者は我慢できる程度の痛みしか感じていない場合が多い。

更に【高速再生】スキル等を覚えた場合は、痛覚はより緩くなる。

【高速再生】スキルは傷だけではなく、失った部位の再生も可能とするスキルだ。そのため、普通なら危険信号がかき鳴らされるような傷でも、「それほどではない」と体が判定を下してしまう。

そして腕を切り落としても数秒で新しい腕に生え変わる【超速再生】スキルを持っている場合は、殆どの痛みはただの信号である。

なので、ヴァンダルーも腕を切り落とされたり、骨を粉々にされたりしても、覚える痛みは我慢できる程度でしかない。

「まあ、爆発によって一瞬でバラバラになるので、今回の場合は痛みを殆ど感じないのですが。だからこそ、砲弾型使い魔王なんて分身も作れるのです」

「……そう言えば、あれも使い魔王なのよね」

モークシーの町の地下に創ったダンジョンで、原種吸血鬼ビルカインと戦った時に使った砲弾型使い魔王は、そもそも自爆する事が目的の分身である。痛みに耐えられないなら、そもそも創らない。

「ところで、装置の組み立てが終わったぜ。イベント前に、試運転した方が良いんじゃないか?」

ダグがスパナを置いて、そう言って機材を指差した。機械いじりの真似事をしながら作った機材だが、当然電気で動く機械ではない。

魔力で動くマジックアイテムだ。では、そんなマジックアイテムに何故配線を繋ぐ必要があるのか――。

「そうですね。では、早速魔力を通して見ましょう」

そう言いながらヴァンダルーは機材に手を向けると、そこから半透明の霊体が出た。そして、激しく発光し、はじけるような音を立て始める。まるで電撃のようだ。

そして霊体は機材に向かって放たれた。霊体から魔力が機材に供給され、それは配線を通って他の機材にも流れ、作動し、色とりどりの光を発した。

「配線を使った複数のマジックアイテムの連結は、成功のようですね。【霊体変化:雷】が、やっと役に立ちます」

配線を繋いだのは、【霊体変化:雷】を活用するためのものだった。

『雷雲の神』フィトゥンと、【マリオネッター】のハジメ・イヌイの魂を喰らった事で獲得した【霊体変化:雷】スキル。それは、霊体とそこから出す魔力の性質を雷……つまり電気に変化させる効果のスキルだった。

性質が電気なので、変化している間の霊体や魔力は水や金属は通るが、ゴムは通らない。しかし、性質が変化していても霊体や魔力である事に違いはないので、感電……感魔しても痺れる事はなく、またすぐにエネルギーが拡散して貯めるのが難しいという事もない。

そこでヴァンダルーは、配線でバッテリーの役割を果たす魔石部分と、複数のマジックアイテムを繋いだ機材を創ったのだ。

これで、これまでは使用者が一つ一つ魔力を流すか、電池代わりになる高価な魔石を内蔵させなければならなかったマジックアイテムが、配線を繋ぐだけで同時に複数動かす事が出来る。

「上手くいったみたいね。大型の蓄電池は『地球』ではかなり高価だった覚えがあるけど……電気っぽくなっていても魔力なのよね」

「魔力ですからね」

電気と違い、魔力を貯めるのは技術的には容易だ。それなりの大きさの魔石が必要だから、原材料費はそれなりにかかるが。しかし、その原価を払えば簡単に魔力を溜める装置を作る事が出来る。

「将来はヴィダル魔帝国中に電線網を整備して、マジックアイテムを活かした快適な暮らしを誰もが送れるようにしたいですね」

「夢が広がっているようですね! でも、その前に今日のステージです。使い魔王の準備も万全にお願いしますよ」

「ええ、勿論です」

モークシーの町から【転移】によってガルトランドに訪れたカナコ達は、街の広場でコンサートイベントを開催した。

ただ歌うだけではなく、神託によって導かれたヴァンダルー、そしてアンデッド達はどんな人達なのか知ってもらうための、身の上話や過去の出来事を題材にした劇、ヴィダル魔帝国についての説明も行われた。

何故今こんな事をしているのかというと、それはガルトランドの住人達を効率良く導くためだった。

これから行う作戦はガルトランドの住人達の協力が、そして何よりも理解が必要なので、そのためだ。

勿論ルドルフ(ランドルフ)達、現地採用のメンバーは連れて来ていないが、その分の穴はヴァンダルーの使い魔王と、新メンバーで補うのでイベントの進行に問題は起きなかった。

『とは言っても、俺はほぼただの楽器ですが』

【弦術士】と【怨狂士】ジョブで培った弦と音に関する力を発揮して、ヴァンダルーは楽器型使い魔王を創りだした。

束ねた【魔王の体毛】を弦にして弦楽器型、【魔王の肺】や【皮膚】等を膜代わりにして反響させてドラム型、【骨】で笛型の使い魔王を創る。

カナコからはこの機会に【楽器演奏】スキルを獲得し、楽器型ではなく楽師型の使い魔王を創れるようになって欲しいと言われているが、中々難しいと、ヴァンダルーは思っていた。

「練習はしていたけど、本番は中々……やっぱり、動画を投稿するのとは違うわね」

『お客さんは、ジャガイモか何かと思えば良いらしいよ!』

『カボチャじゃなかったっけ?』

「プリベルは平気ですか……トランス状態になってる!?」

「ララララ~」

舞台に上がるのを固辞したメリッサ以外、カナコとジーナとザンディアが、このステージでデビューしたレギオンのプルートーをフォローしている。

人の姿に変身して、身体を動かす為にヴァンダルーが作った疑似骨格を体内に取り込んだプルートーは、緊張しながらもなんとか身体を動かし、ステージをこなしていた。

同じく初デビューのプリベルは、どうやら踊っている内にトランス状態になってしまったようだ。メレベベイルやヂュガリオンが彼女を通して神託を下そうとしている……訳ではなさそうだが。

そしてガルトランドの住人達にも、ステージは好評のようだった。

「これが地上のヴィダ信者で流行している説法なのか? 歌の形で信仰を説くのは分かり易くて良いな!」

「カラフルで綺麗ね~。歌も面白いわ」

面積自体は広いが、閉鎖的なガルトランドでは芸術や様々な技術の発展に偏りが生じていた。そのため、カナコ達のステージは煌びやかに映ったようだ。

そしてステージが終わると、住民たちの殆どが導かれたようだった。勿論、ヴァンダルーは人々が自身に導かれたどうかは感覚でしか分からないので、何となくそう感じるだけだが、最初に導士ジョブに就いてからもう何年も経っている。感覚で、大まかに判断する事が出来る。

しかし、その感覚にやや妙な気配を覚えた。別に不快な訳ではなく、胸騒ぎを覚える訳でもない。ただ、少し妙な気がするのだ。

念のためにとヴァンダルーは住民達の何人かに話しかけてみたが、彼等は何も感じていないようだ。

「妙と言えば……たしかに体がいつもより軽く、力が漲っているような気がする!」

「今からでもダンジョンに潜れそうなぐらい!」

と言う話は聞く事が出来たが、それは【導き】スキルの影響を受けて能力値が上昇しているだけなので、ヴァンダルーが覚えた妙な感覚とは関係がない。

「気のせいじゃないですか?」

「うーん……そのようですね」

特に異変は起きていないようなので、ヴァンダルーはこの時覚えた感覚について考えるのを止めた。

《【楽器演奏】スキルを獲得しました!》

《【冥魔創滅夢道誘引】、【導き:冥魔創滅夢道】スキルのレベルが上がりました!》

そしてコンサートの後、能力値が上昇したドーラネーザの【魔王の欠片】の摘出を試みた。

「妾の【魔王侵食度】はまだ3レベルじゃ。しかし、妾では【魔王の欠片】を制御できん。取り出せるなら早く取り出した方が良いのじゃ。

【魔王の粘液腺】には今まで何度も助けられたが、それは変わらん」

生きたまま欠片を取り出す事が出来る。そう聞いた時に、ドーラネーザは欠片の摘出をヴァンダルーに頼んでいた。

ただ、念のため彼女の能力値が導かれて多少でも上がるのを待っていたのである。

「暴走状態のずっと前で、場所も粘液腺なので大丈夫ですよ」

以前欠片を摘出したが、そのまま死んだゴブリンとは違うと考えつつ、【霊体化】した腕でドーラネーザの体内に侵入する。

「う゛ぅっ!」

【……? ……本体っ!? 本体ぃ!!】

ドーラネーザが異物感に喘ぎ声を上げ、同時に【魔王の粘液腺】の気配がヴァンダルーの腕に伝わってくる。

【粘液腺】にとって本体であるヴァンダルーと合流しようと蠢きだすが、まだドーラネーザの【魔王侵食度】のレベルが低いので、身体を乗っ取る事が出来ない。

そのため強制的に発動し、ドーラネーザを暴走状態にまで追い込もうとする。

【我、本体に合流す! 仮の宿主を破棄すべし! 我、本体に合流す! 仮の宿主を破棄すべし!】

「静かに」

【我、本体に……我、鎮静すべし】

騒ぎ出した【粘液腺】に対して、ヴァンダルーが強く落ち着くよう命じると、効果は劇的だった。まるで死んだように沈黙する。

そのまま手で掬い上げるようにして、【粘液腺】を回収し、腕を引き抜く。

【我等、【粘液腺】を迎え入れ、また一歩完全体に近づく】

そしてドーラネーザの体内ではなく、ヴァンダルーの体内から【欠片】の声がした。

「くはっ……もう、終わったのか? う゛、【魔王侵食度】が消えた?」

短い手術だったが疲労した様子のドーラネーザに、ヴァンダルーはブラッドポーションを差し出す。

「ええ、欠片はもう摘出し、俺の体内にあります。お疲れ様でした。水分補給と、身体の再生を促す為にどうぞ」

手術を見守っていた彼女の一族達が、成功を聞いて歓声をあげる。

「ドーラネーザ様が仕方なく、守っていた【魔王の欠片】の封印を解き、バーンガイア大陸から逃げ出してから数年! 欠片から解放される日が来るとは……! きっと先代様も喜んでおられるでしょう!」

ドーラネーザの一族にとって、【魔王の欠片】は代々守って来たが宝ではなく、大きな負担だったのだろう。彼等はドーラネーザが助かった喜びと、解放感に顔を輝かせている。

「ドーラ、よく頑張ったな。ヴァンダルー殿も、心から感謝する!」

「やったね、ドーラちゃん!」

デディリアと、初対面の時から友達になっていたらしいプリベルも喜んでいる。

ちなみに、ガルトランドの神々や住人達で【魔王の欠片】を持っている者は、他にはいない。

ポヴァズ達元魔王軍残党は、グドゥラニスが【魔王の欠片】にされ封印される前に逃げ散っている。マリスジャファーや、デディリア達魔人族に信仰されていた『邪毒茸神』ペリャゼイルも、彼等自身が欠片を守っていた訳ではない。

デディリアの一族が守っていた欠片の封印は、討伐しに来た冒険者に奪われている。今頃はファゾン公爵領のアルダ神殿にあるだろうと、彼女は語った。

「まあ、これで後顧の憂いはなくなりました」

「ヴァンダルー殿! いや、ヴァンダルー様、感謝いたしますぞ! このご恩に報い、偉業を子々孫々に語り継ぐためにも、湖底の神殿にあなたの像を建立致しましょう!」

「ああ、憂いが出来てしまった……」

ドーラネーザの腹心格で、爺や的な存在であるバスティアンの言葉に、ヴァンダルーは思わず膝を突いた。

「ヴァン君……スキルもあるんだし、タロスヘイムには大きな像もあるんだから慣れれば良いのに」

プリベルに、【能力値強化:被信仰】……つまり、誰かに信仰されると能力値が強化されるスキルを持っている事等を指摘されるが、ヴァンダルーの気分は晴れなかった。

「プリベル、慣れてしまったら、もう元には戻れなくなります。越えてはいけない一線が在るのです」

「……ううん、まあ、ボクも種族に姫がついたのはショックだったから、そう言うのは分からなくもないけど」

「あの、今日のコンサートと言う歌劇の影響か、街の神殿でも像を建立しようと言う話が持ち上がっているのだが」

二人の様子を見たデディリアが、そう教えるとヴァンダルーは地面に崩れるように倒れた。

「まあ、ヴァンダルー殿だけではなく、ダルシア殿とカナコ殿の像もだが。ヴィダの信仰を新しい形で説く聖女だと思われているらしい。大きさも、等身大ぐらいだと思う」

「……じゃあ、良いです」

むくりと、立ち上がるヴァンダルー。

等身大という事は、自分の石像は小さいはずであるし、ダルシアやカナコの像が建立されるのは誇らしいので良い事である。

「では、ユラク町長達に話して、協力を願いましょう。ゴーン達相手に手こずっているように偽りつつ……ボティンの封印に直接繋がるトンネルを掘る一大事業に」

《【能力値強化:被信仰】スキルのレベルが上がりました!》

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・名前:ドーラネーザ

・種族:人魚

・年齢:15

・二つ名:【人魚女王】

・ジョブ:上級巫女

・レベル:83

・ジョブ履歴:巫女見習い、巫女、魔術師、水属性魔術師

・パッシブスキル

水中適応

暗視

身体強化:下半身

自己強化:水中:4Lv

敏捷強化:3Lv

魔王侵食度:3Lv(消失!)

・アクティブスキル

漁業:2Lv

高速遊泳:3Lv

舞踏:5Lv

歌唱:5Lv

魔術制御:4Lv

無属性魔術:2Lv

水属性魔術:5Lv

御使い降臨:1Lv

・ユニークスキル

マリスジャファーの加護

■■■■■ーの加護