軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百五十八話 激戦の五芒星

戦いは熾烈を極めた。

夕飯時が稼ぎ時だと言う『灼熱飯』のパーパラスの焼き飯、いわゆるチャーハン。米に肉や野菜の具を混ぜて、オーク等の魔物から取った油で炒めた香りは、一仕事終えた肉体労働者の食欲を刺激する。

また、北国であるため雪が昔から珍しくないアルクレムでは、『気紛れスープ』のシングのスープの売れ行きも好調だ。屋台で夕食を済ませる客には、大きな肉と野菜が入った濃い味付けのスープ。酒を飲んだ帰りの酔客には、締めに魚から出汁を取り塩で味をしめたあっさり風味のスープ。二種類のスープで、上手く客を取り入れている。

『混沌を握る』ミッチェムの屋台では、握り飯が一定のペースで売れていた。

彼女の商品の握り飯には様々な具材が包まれているが、包み紙代わりの植物の葉で見る事が出来ない。値段は全て同じで、客は何が当たるか博打のような感覚で購入している。

ただ、全くの博打ではない。外れは無く、全て値段相応の具材が使われている。特に夕飯時は、昼よりも食い応えのある具材を中心に握っているらしい。

……オルバウム選王国では、流石に握り飯とその製作者を、異世界の知識に同じ物があると言う理由で弾圧する事は無いらしい。アミッド帝国だとどうなるかは分からないが。

夕飯時は客足が減ると言っていた『甘々甘味スイーツ』のトムの屋台も、油断できる程客は減っていなかった。

アルクレム公爵領の北部ではテンサイ、砂糖大根が栽培されており、それから砂糖を生産している。彼はその砂糖を使ってカラメルを作ったり、魔境産の果物を使ったジャムを作り、スポンジケーキに乗せたり、間に挟んだりして売っている。

クリームやバターは使っていないが、美味しいデザートであるため食後の贅沢なデザートとして買っていく客もいるようだ。

『たっぷりサンドイッチ』のサンディのサンドイッチは、確かに昼間よりは客の勢いは落ちているが、やはり楽勝とは思えない。

暗黙のルールや良識、そしてバランス感覚で縛られたヴァンダルーの屋台は、接戦を強いられていた。

「肉串と野菜串を頼む! チーズをたっぷりかけてくれよ!」

「チーズの串焼きを頂戴っ!」

ヴァンダルー達が用意した商品は、肉や野菜の串焼きに熱で蕩けさせたチーズをたっぷりかけた、チーズフォンデュ風の串焼きである。

『どうですか、陛下。私の火加減は♪』

『アタシがチーズを操作しているのも、忘れないでよ』

サイモン達が仕入れて来たチーズを、レビア王女の絶妙な火加減で一定の温度で温め続け、更に溶けたチーズをオルビアが操作して撹拌する事で焦げ付きを防止する事で可能になった商品である。

「絶妙です。この調子で頼みます」

『はい♪』

『任せてっ!』

チーズをたっぷりかけた串焼きはやや割高だが、安さを求めるならチーズをかけていない串焼きを注文する事も出来る。

他にもサイモンとカチアが仕入れたチーズの中に、温めた時の蕩け具合が微妙な物が幾つかあり、せっかくなのでそれでカチアが口にしていたチーズの串焼きにも挑戦してみた。

軽く焦げ目がつくくらいで仕上げると、美味しいと客にも好評であった。

「しかし、チーズそのものを焼くとは……思いつかなかったでござるな」

『カナコさん達によると、異世界ではバターやチーズを油で揚げる料理があるそうですよ』

「……想像を絶する食生活でござるな」

カナコ達から聞いたらしい料理をレビア王女が口にすると、ミューゼの目が遠くなった。余人には声が聞こえないレビア王女はともかく、ミューゼは異世界について口にしないようにしているので、注意はしているようだが。

「いや、常食にしている訳じゃないと思いますよ。多分……む?」

ヴァンダルーは思わず目を瞬かせた。視界に、突然『【測量の魔眼】:10レベル』と文字が浮かび上がって来たからだ。

一瞬戸惑ったが、それが眼精疲労や幻覚の類によるものではなく、【深淵】スキルが他者のスキル……【測量の魔眼】とやらの効果を反射した結果だと感覚で理解した。

(あのラルメイアと言う騎士、思ったより厄介な相手だったか)

そして、【測量の魔眼】の所有者もすぐに思い至った。今も姿を消したチプラスに見張られている事に気がつかないまま、こちらを見ている何処にでもいそうな男。

『アルクレム五騎士』の一人、『慧眼の騎士』ラルメイア。彼がそうだろう。

(名前は表示されませんが、年齢、性別、身長と体重まで表示されていますし。他に【忍び足】に、【能力値強化:任務】……表示されるスキルに偏りがある。ステータスを全て見られる訳じゃないのか?

それに能力値が、知力以外は数字が常に動いている。正確な数値が表示される条件があって、知力以外はそれが満たされていないのか? 【鑑定の魔眼】とは違うようだ)

【測量の魔眼】の詳しい効果を知らないヴァンダルーは、話に聞いていた【鑑定の魔眼】とは違う事に困惑した。しかし、誰がこのスキルを使っているのかはすぐ見当がついた。

(まあ、それはともかく彼に違いない)

アミッド帝国の『邪砕十五剣』よりは大分落ちるが、アルクレム公爵領の切り札である『アルクレム五騎士』の一人。何故それが地元の名物屋台との決闘騒ぎの黒幕なんてしているのかと思ったヴァンダルーだが、今ならその理由が大体察する事が出来る。

恐らく【測量の魔眼】の条件が関係しているのだろう。対象を一目見ただけで全てのステータスを見抜くと伝わる【鑑定の魔眼】よりも、ずっと不便な魔眼のようだ。

(さて、どうしましょうか?)

情報の秘匿を考えるなら、早急にラルメイアを始末するべきだ。どうやら二つ名やジョブ、ジョブ履歴は表示されないようだが、それでもステータスの情報が広まるのはあまり面白くない。

だが、今すぐラルメイアを殺すのは、躊躇われた。

『ボス、何でしたらあっしが心臓麻痺に見せかけてぶっ殺しましょうか? あの野郎、隙だらけですぜ』

キンバリーがそう提案するが、ヴァンダルーは『いえ、今は止めておきましょう』と念話で答える。

【深淵】が跳ね返した、【測量の魔眼】の効果で見たラルメイアの能力値やスキルから推測すれば、殺す事自体は難しくないように思える。

しかし、ここは夜になっても人通りの多い中央広場だ。殺した後、それが周囲にばれず騒ぎにならないようにするのは難しいかもしれない。

それに正確な数値は分からないが、ラルメイアの生命力はそれなりに高いようで、一撃で殺しきる事は出来ないかもしれない。

(それに、これから会う事になる相手の腹心の部下ですからね。送り込んできたのは向こうでも、ここで殺したら敵対すると宣言したのと同じでしょうし。

ある程度、俺の能力値やスキル等の情報が相手に渡って、アルクレム公爵が俺の力をある程度把握した方が、今後の為には良いかもしれない)

情報が不確かな状態よりも、ある程度ヴァンダルーの情報がある状態の方が、公爵達は穏当な判断をするかもしれない。

怒らせれば、自分達もただでは済まないだけの力を持っている。そう理解している方が、慎重になるはずだ。

……ラルメイアがどれくらい正確な情報を見る事が出来たのか、ヴァンダルーは知る事が出来ないので、若干不安は残るが。

「このアマァ! 優しくしてればつけ上がりやがって! 人間様に対する態度ってもんを教えてやるぜ!」

突然物騒な怒鳴り声が響いた。見ると、カチアに袖にされて激高した傭兵か冒険者らしい酔っぱらいが、何と剣を抜いていた。

カチアとダルシア、そしてナターニャは変身装具で変身して売り子やウェイトレスをしていたので、勘違いした男が声をかけて振られ、恥をかかされたと激高したのだろう。

周りの客が悲鳴をあげ、気がついた衛兵やサイモンが男を取り押さえようと走り出す。

「教えて貰わなくても、知ってるわよ!」

しかし、カチアが動く方が速かった。剣を振り上げた男に、腰から護身用の木の棒を抜き、力強い踏み込みと同時に皮鎧に包まれた腹を一突き。

「げうっ!?」

鎧を突きぬけて内臓に届いた衝撃の大きさに呻く男の腕を掴んだカチアは、強引に脚を払って地面に引き倒して取り押さえる。

「あんたみたいな酔っぱらいの扱いは、これで十分よ!」

鮮やかに危険な酔っぱらいに対処したカチアに、客や通行人が拍手と賞賛の声を浴びせ、衛兵達も「お見事です」と褒めて男の身柄を預かって、詰め所に向かって行った。

「ははっ、用心棒代わりの意味が無いっすね」

自分よりもカチアの方がずっと腕が立つ事を見て取ったサイモンが、乾いた笑い声を漏らす。

「サイモン、見た目だけで判断する人の方が多いので、あなたは立派に用心棒をしていますよ。

それにしても、カチアもすっかり立派になって……」

あの男は泥酔していた事を考慮しても、人種からグールになったばかりのカチアと同じくらいの実力だろう。それを簡単に、大きな怪我もさせずに取り押さえた彼女の成長には、目を見張るものがある。

約八年前、当時伸び悩んでいた彼女が魔術を習得するのを、ヴァンダルーは手伝ってきただけに、彼女の成長を実感でき感動を覚えていた。

……魔術は一切使っていなかったが、この際それはどうでもいい。

『ボス、あいつもカチアを見てますぜ』

キンバリーの言葉に呼び戻され、ラルメイアに視線を戻すと確かに彼はカチアを見ていた。そして、何やら驚いているようだ。

『多分、カチアのステータスを見て、能力値や【剣術】スキルのレベルの高さに驚いたのでしょう』

念話でそう返事をしてから、ヴァンダルーは気がついた。ラルメイアがカチアを見ていると言う事の意味に。

彼はカチアの能力値や一部のスキルだけではなく、年齢、身長、体重、そして身体の各種サイズの数値を見て取っている。

いや、カチアだけではなく、ダルシアやプリベル達女性陣も見られているだろう。自分とサイモンは別にいいし、恐らくラルメイアが存在に気がついていないだろうレビア王女達ゴーストやグファドガーンは、魔眼の対象外だろうが。

ラルメイアからすればカチアやサイモン、そしてファング達ヴァンダルーの仲間は全員調査の対象だ。やましい気持ちではなく、仕事として調べている筈である。

だが、ヴァンダルーとしては気分が悪いし、カチア達もこれを知ったら不快に思うだろう。

皆魅力的だから、思わず目が向くのは当然なのでそれについてヴァンダルーは何も思わない。しかし、ラルメイアの場合は身体のサイズや体重も把握している。これは、「当然」の範囲を逸脱している。

「始末しますか?」

「いえ、そこまでではありません。でも、機会を見てお仕置きしましょう。母さんが気にしている体重や、ギザニアの首のサイズを知ってしまった彼が悪い……」

オリハルコン製の骨格を持つダルシアは見た目より重い自身の体重を、ギザニアはウシオニにランクアップして角が生えてから、首が筋肉で太くなったと気にしていた。

それを暴き立てるとは、任務であっても許されるべきではない。ヴァンダルーがそう思いながら視線をラルメイアに向けると、再び彼のステータスの一部が視界に浮かんできた。

(【精神汚染】? さっきは無かったのに……それにこの感じ……導かれている?)

すると、ラルメイアはいつの間にかヴァンダルーに導かれていた。

「拙者の首がどうかしたのか?」

屋台の横でプリベルやユリアーナと一緒に、歌を歌っていたギザニアがヴァンダルーの呟きに気がつき、そう尋ねた。しかし彼女に答える前に、新たな客が屋台に並ぶ。

「肉と野菜の串を四本ずつ。チーズかけで」

見るからに厳めしい顔つきをした大男だった。目つきは悪く、眉間に刻まれた深いしわが気難しそうな印象を与える。何より、太い首に盛り上がった肩、そして筋肉でゴツゴツとした腕。

あの裏路地から手紙を投げて来た男、アーサーであった。

「毎度―」

そう答えながら、アーサー達が接触して来てもいいように用意していた手紙の返事を串焼きと一緒に渡す。

それを終えた時には、ラルメイアは広場から逃げ去っていた。まるで何かに追われているかのような様子で駆けだしたので、広場の人々は彼の背に困惑の視線を向けていた。

そして、やはりアーサーも串焼きを受け取ると気配を消して去って行った。まるでネコ科の大型肉食獣のようで、背後にダロークが憑いていなければ、ヴァンダルーも見失っていたかもしれない。

この夜の決闘の勝者は、僅差でヴァンダルー達が一位だった。

料理の味もあるが、ダンピールやアラクネ、スキュラ、そしてユリアーナ等見た事の無い種族の見物ついでに串焼きを買っていく客や、変身したダルシアやカチア、ナターニャを目当てにした客、それにマロル達ネズミ三姉妹の芸等、物珍しさに惹かれて串焼きを買った者が多かったらしい。

「スキュラやアラクネのお嬢さんの歌とか、あの変身とか、ややズルいと思わなくもないけど……それも込みで決闘を申し込んだのは私達だから、納得するしかありませんね」

「あの酔っぱらいが余計な事をしなければ、勝機もあったのですが……偶然を商機に変えるのも商人の腕の内ですからね」

総売上と客数が二位のミッチェム、三位のパーパラスがヴァンダルーの勝利を称える。

「いやいや、商品も中々のもんじゃったよ。特にチーズの串焼きはコゲが堪らんな」

どうやらトムは、決闘の最中にこっそりヴァンダルーの屋台の串焼きを購入していたようだ。多分、人に頼んだのだろう。

「トム爺さん、決闘相手の売り上げに貢献するなよ……」

「仕方ないじゃろう、次に食べる機会があるか分からんのじゃから」

「何でしたら、まだ串がありますけど要りますか?」

「本当か!? 頼むぜ! 今度はチーズを使ったスープでも考えてみるか」

「あんたも食べたかったんじゃないかい、シング。まあ、あたしも興味はあったんだけどね」

そう口々に言いながら、結局シングやサンディも残っていた串焼きを買っていく。ヴァンダルーも、彼等の屋台の売れ残った商品をすべて購入した。

「しかし、あんた沢山持ってくね。あたし等は儲かるから良いけどさ」

「拙者達は、見た目通りよく食べるからな」

料理を大量に購入したヴァンダルーに不思議な顔を向けるサンディに、ギザニアがぽんっと自分の腹を叩いて見せる。それに合わせてファングやマロル達が鳴き声をあげると、「なるほどね」と納得した。

実際にギザニア達はよく食べるが、本当は今も留守番をしているブラガ達が食べる分である。

「では、これから一週間よろしくお願いします」

そう言って決闘に勝った証しに、ロゴ入りの布を配って行く。これから一週間、『アルクレム屋台五芒星』は、ヴィダの聖印であるハートマークを屋台に掲げて営業する約束だ。

「俺達は一週間経つ前にアルクレムを出てしまうと思うので、返さないで良いですよ。布巾代わりにでも使ってください」

「いやいや、お前さん達の名声が広まっている内は屋台に飾らせてもらうつもりじゃよ。あのモークシーの『屋台王』、『変身装具の守護聖人』と鍔競り合った証しじゃとな」

「まあ、名声が悪名になったらすぐ外すから、気にするなよ。じゃあ、お互いこれからも商売に精を出すという事で」

そして握手を交わし、ヴァンダルー達と『アルクレム屋台五芒星』の決闘は穏やかに幕を閉じたのだった。

その頃、帰還したラルメイアの姿を見たアルクレム公爵達は、とても穏やかとは言えない心境だった。

「ラルメイア、その姿はどうしたのだ!?」

タッカード・アルクレムが見たラルメイアは、理知的な顔つきのまだ三十前後で自分よりずっと若い男だった。

しかし、今のラルメイアは別人のようにやつれた上に黒かった髪から色が抜け落ち、まるで老人のようだった。

「公爵閣下っ、一大事です。あのダンピール、いえ、あの一団と事を構えてはなりません! 襲撃、暗殺はもっての外! 謀で陥れるのも、同様!

出来る限り良好な関係を、それが無理ならせめて不可侵……距離を置き、お互いに関わらないよう、密約を交わすべきと具申致します!」

会議室に入って来たタッカードに、ラルメイアはそう必死に訴えた。だが、その直後急に口の端を釣り上げると、笑い声をあげ始めた。

「関わらない? ハハハ、距離を置く? ヒヒッ、とても無理だ、あれほどの力を持つ存在から、どれだけ距離を空ければ、関わらずにいられると言うのだ? アッハハハハハァ!

私達は、あの瞳から逃げられない! 逃げられないのですよ、閣下ぁぁぁ!」

狂ったように笑い声をあげるラルメイアの姿に、他の五騎士の面々は沈痛な眼差しを向け、タッカードは思わず呆然と立ち尽くした。

「誰かっ、ラルメイア殿はお疲れだ! 部屋に通し休ませて差し上げろ! 侍医と魔術師に体調を調べさせ、治療させるのだ」

代わりに家令が人を呼び、ラルメイアを会議室から別の部屋に運ばせる。彼の笑い声が聞こえなくなってから、タッカードは我に返った。

「あれは、どう言う事だ? ラルメイアに何が起こったのだ?」

「分かりませぬ。精神に影響を与える毒物かと思いましたが、【解毒】の魔術も効果がありませんでした」

「何か、恐ろしい幻術でも見せられたのかもしれません」

『轟炎の騎士』ブラバティーユと、『遠雷の騎士』セルジオも苦い口調で答える。

「ラルメイアの部下達は全員正気だったので、話を聞いていますが……彼が何故ああなったのかは、要領を得ません。ただ、閣下が来る前、正気に近い状態だった彼が紙にこれを書いていました」

『千刃の騎士』バルディリアが差し出した紙にタッカードが視線を落とすと、そこにはやや乱れた筆跡でラルメイアが測量したヴァンダルー達のステータスの一部が書かれていた。

「これは……! 本当なのか? 万を超える能力値に、高いレベルのスキル。彼の仲間も、この数字が真実ならかなりの強さだ!」

「ええ。今まで我々は、『アルクレム五騎士』が揃ってかかれば勝てると思っていました。ですが、この数字が確かなら五騎士が揃おうが、公爵軍の全戦力を投入しても勝ち目は薄いでしょう」

『崩山の騎士』ゴルディがそう纏める。タッカードも、彼と同じように考えていた。何かあっても、ヴァンダルーと敵対し、すぐに戦う事になっても五騎士が揃っていれば楽勝とは言えなくても、彼等を止める事が出来るはずだと。

しかし、それは大きな間違いだったようだ。

「まさか、彼がランドルフ並の実力の持ち主だったとは。……話し合いの方針を変える必要があるな」

明け方、ヴァンダルーは、『水と知識の女神』ペリアの神託にあった地点に向かっているクワトロ号に乗っている骨人から、通信機で珍しい魔物が出現するようになったと呼び出された。

『中々の強敵で、私でも簡単には倒せない相手なのですが、最近は群れで現れるようになりまして。お蔭で日が昇っても海中に中々潜れないのです』

『まあまあ強いんだがよ、それを抜きにしても中々面白い魔物だからお前等を呼んだんだ』

『とんでもないの、間違いだと思うが』

「面白い、ですか?」

「ボークスさんやミハエルさんがそう言うって事は、余程変わった魔物なのね」

「それは兎も角……一面海だ! ダンジョンの中にも海はあるけど、これはこれで凄い!」

遥か下の海面を見つめるヴァンダルー達の横で、プリベルがはしゃいだ声をあげる。それに答えた訳ではないだろうが、海面が不自然に波打つ。

そして、海面から巨大なクラーケンが出現し……そのまま海面から空を飛ぶクワトロ号に向かって飛び上がって来た。

「クラーケンが、空を飛ぶ!?」