軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18◇次なる戦い

「なに……?」

王都に戻ったオレのもとへ、驚きの報告が入ってきた。

「カナカス国との国境を守護していた十二魔将『剛力』のマスキュラテイン様、戦死!」

「タカアマメドウ国が国境付近で大規模な軍事演習を行うと通告!」

「エーデン国軍、侵攻! 敵軍には勇者ゼニスパーティーの姿も確認されているとのことです!」

「十二魔将『爆轟』のゼンバーグ、離反! エルフの使節団を拉致し、ぐっ、グレンスフィオール様の自刃を要求!」

……おかしい。破滅エンドを回避しようと良い四天王になろうとすればするほど、原作と異なる危機がどんどん押し寄せてくる。

しかし、文句を言っている暇はない。

対処せねば。

魔王様との謁見の間にて、オレを含む四天王全員が膝をついている。

ちなみに魔王様の玉座周囲には御簾がかかっており、そのお姿を拝見することは出来ない。

グレンは幼い頃に顔を見たことがあるが……まぁ今はいいだろう。

「カナカス国境は……マグニチュルス、頼めるか」

「ハッ」

『四天王』『岩の番』マグニチュルスは、貴公子然としたイケメンだ。

クールな性格らしく口数は少ない……というのが原作から読み取れる要素。

グレンの記憶によると、後輩であるマグニチュルスに実力で追い抜かれたグレンは、心中穏やかでなかったらしい。

しかも、原作ルートではコキューリアに負けて他の四天王に敬語を使うことになったので、腸が煮えくり返る思いだったろう。

オレからすれば、同僚が有能に越したことはない。ぜひともカナカス国境を守護してほしいものだ。

「タカアマメドウ国境には、テンペスティア」

「仰せのままに~」

テンペスティアは妖艶な美女だ。やけに布面積の少ない衣装を身に纏う、緑髪の魔人である。

「本来であれば、エーデン国への対応は他の十二魔将に加えて、コキューリアとグレンスフィオールの両名に任せたかったのだが……」

「愚かなる反逆者ゼンバーグについては、私にお任せ頂きたく」

さすがに魔王様の前で『オレ』とは言えない。

「……うむ。では、そのように。コキューリア、他の者と協力し、勇者共を撃滅せよ」

「必ずや」

「グレンさん」

マグニチュルスに声を掛けられた。

「……なんだ?」

今はこれ以上考え事を増やしたくないのだが。

「いえ、その……感謝をお伝えしたく」

クールな少年が、恥ずかしそうに頬を染めている。

……こんなキャラだっただろうか?

「感謝だと?」

「正直、一度は貴殿に幻滅してしまったのですが……」

「時間がない。迂遠な言い回しはよせ」

「ですね、失礼。おれも貧民窟出身なのです。貧しい出身の者から人材を発掘する試みが始まったのは、グレンさんとシンラさんという前例があったからだと聞きました。ですから、おれはお二人に感謝していたのです」

なるほど。だが実際にグレンに会ったらすぐブチ切れるクズだったので、幻滅したと。

最近それが演技だと知ったので、感謝の念が復活し、この機に伝えたわけだ。

「ならば、この先登用される者たちは、貴様に感謝するだろうな」

「――――ッ。……そうなるよう努めます」

マグニチュルスは肩を震わせると、誇らしげに微笑んだ。

「死ぬなよ」

「グレンさんも」

「……あら~、なんかあの二人、仲いいわね」

「そうですね。四天王同士の仲がよいのは素晴らしいことです」

「でもグレンくんには、シンラくんがいるのにね~」

「……あの、わたくしとは違う話をしていますか?」

女性陣が何やら話しているが、よく聞こえなかった。

マグニチュルスと別れて一度執務室に向かう。

するとコキューリアが隣に並んだ。

「……随分と楽しそうでしたね」

「『氷の番』が嫉妬の炎を燃やすとは、可愛いところもあるものだ」

「……意地悪ですよ」

頬を染めながら拗ねるように言うコキューリア。

「すまん、許せ」

「許しましょう」

一瞬、二人でフッと笑う。

「……ゼニスと勇者パーティーだが、気をつけろ」

「心配してくださるのですか?」

「当たり前だ」

「……そ、そうですか」

自分から聞いておいて照れるコキューリアが愛らしい。

「聖剣は没収したが、それでもゼニスはとその仲間は充分脅威だ」

「グレン殿が既に一度倒しています。今回も問題ないでしょう」

「あの時はバーンズを失った」

ちなみに、オレがバーンズに死んでもらう予定だったことは、誰も知らない。

バーンズのエルフ狩りに乗るふりをして証拠を掴み、エルフたちを保護したのち、告発するというのが表向きの作戦だったのだ。

「そうでしたね……」

「可能な限り、直接戦闘は避けろ」

「……分かりました。砦の防衛を指揮し、魔法による支援程度に抑えます」

彼女の氷結魔法で砦を覆い、防御力をアップ。更に冷気で敵の動きも鈍らせる。

彼女の得意としているのは本来、防衛戦なのだ。

もちろん攻撃も得意なので、隙がない。

「お前が後ろを守っていると思えば、兵士たちも安心して戦えよう」

「あら、嬉しいことを言ってくれますね」

コキューリアが柔らかく微笑む。

「事実を言ったまでだ」

「……グレン殿、一つお願いをしてもよろしいですか?」

「なんだ?」

「次の戦いが終わったら、わたくしと王都を散策いたしましょう」

「散策? 構わんが……」

ピンときていないオレに、コキューリアが小さく頬を膨らせた。

「恋仲の二人が街を歩くとなれば、それは逢瀬以外にないでしょう?」

そう言われて、ようやくデートの誘いだと分かった。

思えば、デートらしいデートなどしたことがない。

忙しかったとはいえ、確かにこれはいかん。

「分かった。何か考えておこう」

だが同時に、死亡フラグに思えて心配が増した。

「あら、それは楽しみですね」

と笑う彼女は美しい。

「しかし、オレとの逢瀬など怖気が振るうのではなかったか?」

「うっ……あの時のことは忘れてください!」

決闘の日のことを思い出して言うと、コキューリアが顔を真っ赤にして叫ぶ。

「ふっ」

オレが思わず笑うと、コキューリアは涙目でオレを睨みつけてきた。

「すまん、すまん。皮肉が染み付いてしまってな」

「必要なことと理解しますが、恋人を虐めるのは悪趣味ですよ」

「気をつけるさ」

「……ミュークル殿のこと、お願いしますね?」

「あぁ、必ず助け出す」

そうだ。

転生して困ったことばかりだが、悪いことばかりではなかった。

よかったことも、確実にある。

それらを守る為にも、なんとか乗り切らねば。