作品タイトル不明
クリスマスの雰囲気近い?遠い?
ホムラ:ただいま
菊 姫:おかえりでし
お茶漬:おかえり
レ オ:おー! おかえり!
シ ン:遅かったな! 恋人か?
ホムラ:仕事。寒いし、店が軒並み閉まっている不具合。
ペテロ:おかえり、お疲れさまw
こちらはこちらで、クリスマスイブだというのに全員『異世界』にいる不具合。
ホムラ:どこか行ってるのか?
お茶漬:僕と菊姫はクランハウス
菊 姫:お茶漬の手伝いで、素材の生産してるでし
お茶漬:イブに浮かれたカップルに金出させないと
お茶漬は何か小金を儲けに勤しんでいる様子。素材がお茶漬が作れないものなのか、作るのが面倒なのか、菊姫が手伝っているようだ。私も『活性薬』を作る時、素材になる『回復薬』は面倒なので買っている。『回復薬』も自分で薬草から作った方が安いが、作業時間を考えたらその分『活性薬』を作って売った方が時間単価は高い。
シ ン:カジノ
レ オ:こっちクリスマス仕様だぜ!
シ ン:ディーラーのねぇちゃんが、ミニスカサンタだぜぇ!
ホムラ:……素寒貧になるなよ?
シンとレオは一緒にカジノにいるようだ。カジノは他の場所と比べて、現実世界のイベントと連動した飾り付けになっていることが多い。
ペテロ:扶桑で笊を選んでるw
ホムラ:笊……
ペテロ:毒草を干す笊がすぐ痛んでwww
通常運行すぎる。
乾燥を早めるスキルもあるが、スキルポイントを使用しないと取れなかったりする。 生産メイン(ほんしょく) の人は取っているのだろうが、戦闘をメインに据えている私たちに、そこまでスキルポイントの余裕はない。
ランクの低い素材はすぐに使えるようにか、変化は一瞬。現実世界より早いものの、ランクの高い素材ほど状態の変化はゆっくりな上、痛むとかダメになるとかする特殊素材が多くなる。ランクが低ければ、他の生産スキルの応用も割とできるんだが、高ランクは縛りがきつい。
ペテロが手を出している毒の生産、高ランクなんですね? わかります。
ペテロ:ホムラは調薬、どうしてるの?
ホムラ:リデルが干してくれてる。あとは【料理】の【時間促進】流用。
ペテロ:【醸造】で出たやつ?
ホムラ:うむ。【調薬】のレベルに対してランクが低ければ流用できる。
【料理】に限らず、珍しいレシピか、難易度の高いレシピを作るとスキルがついてくることある。なので作る手順を知っているからと言って、レシピを手に入れないという選択肢はない。
ペテロ:うらやましいから、後でビール頂戴w
菊 姫:あてちも! 労働の後の一杯でし!
シ ン:俺も俺も!
レ オ:オレもー!
お茶漬:僕これからお風呂、ゲーム時間で明日の朝集まろうか。わりと珍しいナッツ手に入れたから提供する。
シ ン:おうよ! イベント行ってから宴会だな!
レ オ:ようやく金儲け終わるのかー!
お茶漬:みんなが生産の手を止めてる時に作って売る! でも揃ったしイベントも行っとかないと。
『異世界』では現実世界と時間の流れが違うため、イブもクリスマスも数日続く。だいたいイベント開始初日はプレイヤーはこぞってそのイベントをやるものだが、どうやら揃うのを待ってくれていたようだ。お茶漬は昼間、他の友達とクリア済みの可能性もあるが。
プレイヤーの委託販売を覗き、その後は雑貨屋に顔を出す。お茶漬が売ってるの何だろうな。
「主、これからサディラスに行きませんか?」
既に夕方なため、仕事を終えてくつろいでいたラピスとノエルに抱きつかれながら、笑顔のカルの話を聞く。
「サディラスへ?」
「ええ。サディラスではこの時期の夕方から夜中までの間、神殿で月菓子を配ります。あまり美味しいものではありませんが、季節のものですのでどうかと……」
カルの誘いで、雑貨屋の店員さん達とお出かけ。
ドラゴニュートは未だレーノの他に会ったことがないし、カルとガラハドが並んでいると背が高いイケメン二人で壮観、ラピスとノエルは痩せていた時が嘘のように毛並みが良く可愛い。私は白装備のおかげで――マントさんが無駄にばっさっと翻るおかげで注目を集めてしまった。
さっさとファストの神殿からサディラスに【転移】して集まる視線を切る。
「おお? 薄く光ってる?」
サディラスの神殿の、いつもは青灰色の石材が白い月のように薄く輝いている。
「これはどうやって……。ああ、『 月待石(つきまちいし) 』ですか。魔力を通すと暫く光ると聞いていましたが、こんな風なんですね」
レーノが物知りだ。
ラピスが珍しそうに近距離で石柱をしげしげと見ている。尻尾が若干ぼわっと。もふりたいです、その尻尾。
「いつもと一緒なら、外もすげぇぞ」
ガラハドが、ニヤっとニカっとの中間みたいな笑いを浮かべて言う。
外といっても回廊の中、いつもは立ち入り禁止のその場所が今日は特別、サディラスの国民に解放されているのだそうだ。中央の神殿には近づけないものの、その神殿を目に収めて年に一度額ずく日。国民でなくとも許可をもらえれば入れるそうで、入れてもらえた。――まあ、守護獣との対面で中央の神殿にも入ってるのだが。
「おお、すごい」
「主の髪の色のようですね」
「綺麗です」
「綺麗!」
ノエルとラピスの感想の間にカルの感想が入ったせいで、なんか私の髪が褒められている感じの事故が起きたが、中庭は幻想的で綺麗だ。
イルミネーションとは違う、同じ色の淡い光がそこここに。よくよく見ると、神殿と同じだろう石が、涙型に揃えられてあちこちに飾られている。大きさはと数は様々で、小さなものを細い鎖で繋いで壁にかけたものや、大きめのものを目立つ場所に飾ってあったりする。
冷たいような暖かいような淡い光で彩られ、その中央には造形美を浮き上がらせながら建物ごと輝く小さな神殿。
「サディラスの神殿に捧げられた『月待石』のオーナメントです。普段は神殿の奥に納められているものを、この時期に全て飾りつけます。年々、光は増えているそうですよ」
カルの説明を聞きながら周囲を見回す。私もあとでいくつか納めてこの光に貢献しよう。ぷりんも要求されそうだが……。
「人間の建築物の中では歴史あるものなのでしょうね。あまり槍以外の造形物に興味はありませんでしたが、これは綺麗です」
レーノは自然讃美派。というかドラゴンが外で寝起きする生き物で、地形や気候から力を得ている。ドラゴンは宝物を集めることがあるが、それは形の美しさよりも光っているかが基準であることが多い。
みんなで中庭をゆっくり歩いて光を眺める。美しいけれど、年代を感じさせていた建物が今は木々とともに輝いている。
立ち入り禁止の中央の神殿の前で、住民たちに混ざって神官たちが配るお菓子を受け取る。口に入れるまで砕いてはいけないものらしい。
お月様のように丸いお菓子。おそらく、小麦粉と牛乳と蜂蜜だけの材料で、薄く焼いたもののようだ。小さく丸いそれを口に運ぶと、口の中の上にくっついた。
どうしようこれ。少し途方にくれて隣を見たら、ラピスとノエルの尻尾がぼわっと。同じ目にあってるなこれ。そっとカルから紅茶が差し出される。程よく温い。
「ありがとう」
「いえ」
カルが微笑んで、他にも配り始める。こう言う時、アイテムポーチは便利だ。
「この水分奪われるの、どうにかなんねぇかな」
さかんに口の中で舌を動かしているらしいガラハド。
「どうやったら上手く食べられるのでしょうね?」
レーノが首をかしげながら、菓子を受け取る住人たちを眺める。
「後で似たお菓子を作ってくれますか?」
「いいが……」
わざわざ極めるのか?
ちょっとレーノの頼みに困惑しつつ、帰宅。
雑貨屋の夕食は、ベタな感じにチキンとローストビーフ、パイで蓋をしたクリームシチュー、真っ赤な苺の生クリームケーキ、チョコレートクリームのブッシュドノエル。シャンパンとシードルジュースで乾杯した。
……誰とは言わんが、そこの二人はワンホール食うのやめなさい。
あと、 休憩(ログアウト) 前に覗いた委託販売で、YES/NO枕に高額な値段がついてました。製作者の銘が知ってる人の名前だった。