軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パーティー参加

俺の死亡手続きは撤回され、生きているということが普通の冒険者たちにも周知された。

三年ほど働いていた山猫亭のオヤジさんからは、「無事ならすぐに連絡をしてこい」とお怒りの手紙が届いた。

出身の村からも手紙が来た。

村長が「優秀でなにより。誇りに思う」、村長の息子エドガーは「今後の冒険者活動をどうするか、迷っているなら相談に乗る」、引退した冒険者アーデンからは「俺のクランの下っ端どもが、すまん」

――そんな内容が綴られていた。

緊急の連絡ではないので、ギルドの通信用の魔道具は使えない。

こちらの国に来る冒険者や商人に依頼料を払って、送ってくれたものだ。

パーティーメンバーに殺されかけた時は、世界中に嫌われているような気がして、絶望した。

だけど、こうやって俺を気にかけてくれる人たちがいる。

大丈夫だ。俺は「殺されて当然」なんていう人間じゃない。

俺は、宿の部屋でこっそりと泣いた。なぜか涙が熱いと感じて、頭がのぼせたような状態になった。

この手紙を大切にしよう。心からそう思う。

「手紙をしっかりと収納できるバッグを買いに行きたい」

いいバッグを買えるお店を相談したら、ルナに突っ込まれた。

「その前に、返事を書く方がいいんじゃないか?」

その通りだ! うっかりした自分が情けない。顔が赤くなる。

「トーマが浮かれるの、珍しいにゃん」

からかいながら、サァラは自分のことのように喜んでくれる。

「ふふ、まずは、封筒や文具が揃っているお店にご案内するわ」

フォンが微笑んで、案内してくれた。

そのあと、食器や水筒、毛布など、借りて凌いでいた物を買い揃えた。

遠出するときの修理セット、ランタン、手ぬぐい、縄も購入。

プレゼントされた火打ち石や、使い込んだ包丁、あれこれ書き込んだ手帳だけは返してほしいんだが、俺が死んだと思って売り払ってしまったらしい。

そういう被害も自己責任で、保証されないのが辛いな。

盗まれたものは自分で取り返せと言われる……冒険者は弱肉強食の世界だ。

そろそろ新しい生活をどうするか考えて、三人とは別行動すべきだろう。

こちらの国に移るか、元の国に戻るか。戻ったとしても、「鮮血の深淵」が拠点にしている街はなしだ。

悩んでいたら、三人に木に擬態するモンスター「トレント」の討伐に一緒に行かないかと誘われた。

パーティーに臨時加入という形で、依頼を受けられるから、と。

トレントはCランクのモンスターなので、討伐したことがない。

それは参加してみたいぞ。

問題はいったん置いておき、初めてのモンスターに心が弾む。

冒険者ギルドの受付で「『花猫風月』に、ようやく『花』が入ったんですね」と言われた。

「あら、言われて見れば、そうですね」

フォンがにっこり微笑んで、答えた。

きょとんとする俺に説明してくれる。

「東方には『花鳥風月』という美しい物を意味する言葉がありますの。

ネコ獣人のサァラ、風の魔法使いの私、ルナが月で、「花猫風月」です」

「それは素敵なパーティー名ですね。でも、俺が『花』はないでしょう」

苦笑いで返す。

「いいと思うけど。正式に加入しちゃえよ」

ルナがすごく気軽に言う。

「いえいえ、とりあえず臨時参加で」

はっきりと言っておく。

受付嬢は、「いつでも加入手続きしますんで」と、こちらも気軽に言ってくる。

「あれ、俺は『鮮血の深淵』を脱退したことになってます?」

俺からは手続きしていないが、死亡扱いなら自動的になってるか。

ちょっと待ってと言われ、しばし待つ。

兎獣人の受付嬢は「情報閲覧禁止になってます」と、しょぼんと耳を垂れて教えてくれた。

「まだ殺人未遂の捜査中なんだろうね。臨時で参加できるなら問題ないですよね?」

俺は他人事のように言い、他のメンバーと受付を離れた。

トレントの情報を調べると言って、三人とは別行動にさせてもらった。

実は、パーティーを組むのが怖いと思ってしまったんだ。

近くにいて憎まれていることに気付かなかった。そんな自分が信用できない。

それに、背後から嫉妬の視線がビシバシ飛んできて、痛いくらいだった。

別の意味でも怖いぞ……。