作品タイトル不明
ワクワク冒険者
ホテルの仕事が終了した。
外国の視察団が別の街に行くことになり、送別パーティーも無事に終わった。
そのパーティーには領主様がお見えになるということで、いつも以上にピリピリしていたし、ひたすら地下で野菜の皮を剥いていた気がする。
パーティーの規模によっては給仕を手伝うのだが、粗相があってはいけないと、厨房に籠もっていた。
料理の補充や温め直しだけになる時間帯になれば、暇になってくる。給仕している方が気が楽なんだけど。
副料理長がブツブツ言っていて、怖いんだが……。
そんな日々から解放されたのだ。
また大きな規模のパーティーがあったら、臨時で入ってくれと言われた。
「商業ギルドで募集していたら、都合が合ったときには来ます」と確約を避ける。
しばらく、調理関係から離れたい。
そんな気持ちも後押しになって、冒険者ギルドで依頼を探すことにした。
ワイバーン討伐の現場がどうなっているか、情報が入っていないかも気になるし……。
冒険者ギルドに、同じ村出身の冒険者たちがいた。
拠点にしていたクランが解散になったので、それぞれ違う街に散っていくらしい。
その中に、同い年のガルドがいた。
「よお、トーマ。まだ冒険者になるの、諦めてないのかよ」
久しぶりに会ったというのに、ずいぶんな言葉だ。
……いや、クラン解体をしているときに顔を合わせてはいたか。
だが俺はアーデンとエドガーといった主要メンバーと行動していたから、ガルドとはしゃべっていなかった。
横領に手をつけたのは中堅でくすぶっていた連中だから、駆け出しのこいつは声をかけられなかったのだろう。
もし、声をかけられていたら、誘惑を撥ねのけられたのか……そんなことを考えながら、顔をじっと見てしまう。
「この街で何ヶ月か働いてるんだろう? この街はどうよ?」
ガルドに問われた。
「大きな街だけあって、活気があるよ。
外壁があるから街の中は安全だが、外は危険だ。依頼の数も種類も多い。
それから、資料室が充実してるな」
同郷のよしみで、教えてやる。
ガルドの後ろで聞いていた何人かが、感心したようにうなずいた。
この街で冒険者をやる人も、他の街に行く人もいるみたいだ。
「入れてやってもいいぜ」
と、ガルドに声をかけられた。
「ガルド。お前、今、パーティー組んでるの?」
確か、ガルドが所属するパーティーのリーダーは、捕縛されたはず。残ったメンバーで継続できるんだろうか。
「いや、この街で作る。村の出身者以外とも組んでみたいしな」
ああ、そういうこともできるか。
同じ村出身者で作ったクランは、気心が知れた顔ぶれで面倒を見てもらえたが、新鮮味はなかっただろう。
まあ、いいか。パーティーを作っていくのも楽しそうだ。
「じゃあ、よろしく」
なんとなく、握手を交わす。
おう、冒険者っぽいな。これだけで少しワクワクしてしまった。
宴会のパーティーから離れて、冒険者のパーティーに加入する……いかん。
ダジャレを言うオッサンみたいだ。
こほん、気を取り直して……。
ついに、俺の冒険者生活が始まるのだ!