軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

慌ただしい後始末

翌日、俺とエドガーは山猫亭に移った。

夜中にドアを控えめに叩く音がして、クランで働いている女性たちが代わる代わる、猫なで声で「開けて」と言うのだ。

合鍵を持っていたら怖いので、荷物をドアの前に置いて、耳栓をして寝た。

なんだよ、夜這いか。ハニートラップか。

クランが解体されたら行き場所がないから、寄生するつもりか。

冗談じゃないぞ。

だから、エドガーが「出されたものを口にするな」と言いだしたんだな。

媚薬とか睡眠薬とか?

そんなこと俺にしかけて、村長の息子のエドガーにバレたら、村に帰りにくくなるだけだぞ。

というか、彼女らはエドガーの部屋に先に行っているかも……。

あの人なら、きっと誰が来たか記録を取ってるぞ。

もう、失恋して恥ずかしいとか言っている場合じゃない。

夜が明けてすぐに、山猫亭に移動した。

朝食の準備を手伝うことで、まかないの朝食をいただく交渉をした。

安心して食べられるのって、大事だな。

数日分の宿泊を予約してから、俺とエドガーはクランハウスに戻った。

アーデンは寝不足のひどい顔をしていた。

信用していた……というか、何とかなると思っていたクランが、めちゃくちゃになっていると知ったからだろう。

今回クランをたたむ事態に陥ったから判明したけれど、冒険者を続けられる状態だったら気がつかなかったのだ。

ちょっとは反省した方がいいかもな。

それから、村に戻ったら、元片腕に平謝りすべきだ。

「モンスター相手の方が、楽だ……」

アーデンが弱音を吐いた。

「はい、はい、はい。

じゃあ、僕が采配を振るっちゃうね」

エドガーがテキパキと動き出す。

みんな村の出身なので、エドガーの指示に抵抗なく従う。

まず、ワイバーンの現場に向かう冒険者たちを指名した。

俺は彼らと計画を立てる。

予算を確認して、行きがけに購入するもの、連れ帰るか現地での生活支援をするかの判断基準、妬まれないように多少現地にも寄付をして……考えることは山ほどある。

彼らと一緒にホテルのある街まで行き、俺だけ離脱してホテルに戻ることにした。

エドガーは、アーデンのクラン仕舞いを手伝う。

横領していた奴らは、冒険者ギルドに突き出すことに決まった。

そのために邪魔な、クランの経営を担当していた人間を害したことも、許されない。

アーデンの管理能力も問われてしまう。だが帳簿が何ヶ月分も白紙なのを、今から作成することもできない。なので、それ込みで報告した。

奴らは冒険者の資格を剥奪された。

故意に冒険者仲間を傷つけた分は、一日、訓練場に磔にされる。その間、奴らに何をしても不問にされる刑が科された。

ただし、労働刑が待っているので、作業できなくなるような暴行は禁止。暴言とか、ゴミを投げつけられるくらいかな。

磔の間はトイレに行けないので、それだけでもプライドは粉々になるだろう。

奴らの財産を没収して、横領の穴埋めをするのは当然のことだが、もちろん足りない。

残りは労働刑で工面するために、どこかに移送されるらしい。行く先は、誰にも知らされない。

冒険者に奪還を計画されたら面倒だからだ。

クランハウスは、別のクランから購入希望が来たので、エドガーが商談に入った。

家具をどうするかとか、犯罪が発覚してイメージが悪くなったとか、お互いに交渉材料を使って有利な条件を勝ち取りたい。

腕っ節ではない、経理担当のガチンコ勝負。これも、そうとう迫力があった。

そんな中で、アーデンは松葉杖で歩く練習を始めた。

それを支えたり、献身的に面倒をみたりしている女性がいた。

エドガーは、彼女にだけ「アーデンと村に帰ってくるか」と訊いていた。

どうやら、二人はいい雰囲気になっているらしい。

村に一緒に帰ったら、所帯を持つ流れになるだろう。

俺たちに夜這いをかけて依存先を探している間に、真面目に仕事をしていた女性が幸せを勝ち取る。これが王道というものだ。

クランハウスに残された、そこそこの冒険者たちに構う余裕はなかった。

普通に、他の村の出身者がやっているように、自分の力でやっていけばいいんだから。

もしくは、他のクランに自分たちをアピールしに行ったり、な。

至れり尽くせりの「村の庇護」がなくなっただけだ。

こうして、ワイバーンの登場によって、多くの人の人生が変わっていった。