軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガルドの後悔

殴られて、脅されて、取り調べを受けた。

エレッサ支部では落ち目だと見下されたが、こんなに根掘り葉掘り訊かれなかった。

ここは故郷のレスタール王国じゃなく、ファルガン共和国だ。獣人も多い国だから、しつこくて荒っぽくて野蛮なのか。

俺は剣士、ガルド。

レスタール王国のエレッサという街を中心に活躍する、「鮮血の深淵」という冒険者パーティーのリーダーだ。

トーマとは幼なじみで親友だ。

俺が冒険者パーティーに誘ったから、「冒険者になる」という夢を叶えられて感謝しているはずだ。しょぼいスキルをもらって気落ちしていたけれど、それでも諦めていなかったんだ。

宿屋に住み込みで入り、平凡な人生を歩んでいくのだろうと同情していたが、まあまあ活躍している。

剣士のスキルを得たとはいえ、俺もすぐに第一線で活躍できたわけじゃない。

ワイバーン討伐のメンバーに選ばれなかった。

討伐は成功したらしいが、クランを率いるアーデンさんが大怪我をしたと連絡が来た。

クランがどうなるのかと不安な日々を過ごしていたら、アーデンさんとエドガーさんと一緒に、トーマがやってきた。

アーデンさんと仲良く仕事しやがって。

俺たちはまだ下の方で、幹部の人たちと話す機会も少ないのに。

クランが解散になって、ブルーノとパーティーを作ろうという話になった。

クランがあったハロルの街から、人が多いエレッサの街に移動する。

そこで女性二人組のパーティーと組むことにした。

エレッサの街にはトーマがいる。誘ってやって、五人で活動するのも悪くないんじゃないか。あいつは、いろいろ便利だしな。

雑用を任せたら、そつなくこなす。まあ、スキルの恩恵があるからだろ。

女と遊んでいるのを見せつけても、何も言ってこねぇ。もっと羨ましがれよ。

事前の下調べが必要だとか言ってトーマがギルドの資料室に籠もっている間に、その依頼を他のパーティーに取られたことがある。

口うるさくて、ケツの穴の小さな男だ。あいつが俺たちの足を引っ張っているんじゃないか?

それなのに、鮮血の深淵の快進撃はトーマのおかげだという奴らがいた。腹立たしい。

追放だ。

あんな奴がいなくても、俺たちは強いと証明してやる。

俺たちに追い立てられて逃げていくトーマは、惨めな負け犬だった。あばよ。

ブロンズタートルを持ち帰り、俺たちはもて囃された。人に囲まれ、賞賛を浴びた。

Cランクにも上がれた。

冒険者ギルドの受付では、トーマは死んだと言ったらすごく残念がられた。不審に思われたらいけないので、神妙な顔をしたつもりだ。

まあ、冒険者なら、メンバーが欠けることもあるだろう。しかも、パーティー内であいつは最弱だったし。

報酬は、トーマが予想していた金額より低かった。ほら、やっぱりトーマなんか先が読めない、使えない奴じゃん。

だけど、五等分ではなく四等分になったので、一人の取り分はなかなかの額になった。

今まで行ったことのない店に行き、豪遊した。武器だって新調できる。女の子たちが寄ってくるんだ。

すげぇ。

討伐依頼も、Cランクは報酬が桁違いだ。

だが、失敗した。違約金が発生する。

残り少ない金を取られて、俺たちは焦った。

トーマが下調べをして、作戦を立てていたからか。それなら、あいつの代わりになる奴を探せばいいんだろう。

――だが、うまく見つからない。

ただ調べて、作戦を考えるだけだぞ。

「そんな人材がいたら、お前たちに紹介せずに自分の仲間にするよ」

と笑われたこともある。

そんな中で、弓使いのセリアが捕まった。

大昔に、犯罪者として指名手配されていたらしい。

だからトーマを殺そうとしたのか、セリア。

そうだ。俺はトーマが目障りだと思っただけで、殺そうなんて考えていなかった。

討伐で興奮している最中に、セリアがためらいなく矢を射かけたから。少し怖い思いをさせてやろうと、便乗してしまっただけ。

全部、セリアのせいだ。

セリアと組んでいた魔法使いのヴェリーに、殺人犯だと知っていたのかと問い詰めた。

酒場で意気投合したから組んだだけだと。素性は知らないと言う。

ふざけるな。無責任だ。騙された。

俺たちはとばっちりを受けて、事情聴取された。

もう、すべてをセリアのせいにしてしまえ。

殺人未遂だと……未遂? トーマは生きているのか。

なんだ。大したことないんじゃないか。

ギルド職員が、トーマを連れ戻してパーティーを再結成できたら、罪を不問にしてくれると言う。

そんなことができるのか?

国王が、トーマの知恵を評価しているらしい。隣国に取られたので、取り返さなければということだ。

それなら、やってやりますか。

しかし、またトーマか。

しょぼいスキルしかもらえなかった、みそっかすが。

今度は、国王にまで目をかけられるなんて、運が良すぎる。スキルがしょぼい分を、運で穴埋めするのかもしれないな。

悔しいが、それしかないのなら、やってやるよ。頭を下げて、連れ戻せばいいんだろう。

まぁ、食事の準備やモンスターの素材剥ぎ取り、夜番――あいつがいたら楽になるからな。

Eランクに落ちたのも、Dランクには戻れるだろう。

それなのに、戻らないと一蹴された。何様だ、あいつ。

人前で馬鹿にされ、もみくちゃにされた。

なんか、ハーレム作ってるじゃねぇか。ふっざけんなよ、マジで。

トゥルメルの冒険者ギルドの牢屋から、王都の牢屋に移送されるという。

トーマと俺たちの仲違いの件だけじゃなく、エレッサ支部やレスタール王国の不正も関わって大ごとになっているって? 知らねぇよ、そんなこと。

移送される前にトーマが牢屋に会いに来たら、今度こそちゃんと謝ろう。

許してくれなかったら、故郷の親に手紙を出してくれるように頼もう。

畑を売って、保釈金を出してくれるはずだ。冒険者になってから一度も戻っていないから、心配しているだろう。

仕方ないから、故郷のカミナ村の自警団に入ってもいい。アーデンさんが冒険者を引退して村に戻ったし、昔よりはマシな集団になっているだろうし。

……トーマ、なんで会いに来ないんだよ。

夜が明けたら、冒険者ギルドから連れ出されて、俺はひどい目に遭うかもしれないんだぞ。

助けろよ。

一緒に冒険者になろうと誓った、幼なじみじゃないか。

王都の尋問室で、取り上げられた俺の剣を尋問官が持ってきた。

「切り傷がどんなに痛いか、体験してみるか?」

俺の剣を、俺の目の前でちらつかせる。

「裏切って切りつけておいて、仲間だ、親友だ、許してくれるはずだ? 寝言言ってんじゃねぇぞ」

涙目になった俺を、もう一人の尋問官が小突いた。

「レスタール王国じゃ、こんなんでもCランクになれるのか。レベル低いなぁ」

悔しい。馬鹿にするな。

「やっぱ、こいつら捨て駒だ。大したこと知らないまま、いいように使われただけか」

そんな言葉を吐きかけられた。

尋問が終わって、怪我の手当もされずに放置された。

粗末な食事だけが差し入れられて、誰も来ない。

声を出すが、反応はない。ブルーノは近くにいないのだろうか。

狭い独房。明かり取りの小さな窓。扉には食器のやり取りができる隙間とのぞき穴。

尋問でも、人としゃべれるだけマシかもしれない。

そんなことを考えるようになった。