作品タイトル不明
ダンジョン二日目
夜番用の線香が燃え尽き、四番目の当番だったルナが俺たちを起こした。
ダンジョン専門の泥棒もいるから、夜番は欠かせない。
しっかり寝ているはずだが、あくびしながら火をおこした。
お湯が湧く間に身支度を整え、準備運動をして体をほぐす。
パンにチーズ、ドライフルーツとナッツを手早く並べた。
目覚めがいいように、紅茶は濃いめに淹れた。
さっと食べて、二層に向かうことにしよう。
朝食を片付け、焚き火の始末をする。
ふと見ると、子どもたちは毛布を畳んでいる。ふざけて怒られている光景は、ありふれた平和な日常に見える。荷造りするのに時間がかかっていたが、慣れだからな。頑張れ。
肩慣らしにラグラットを討伐しながら、二層への階段に辿り着いた。
ここを降りたら、鉱石スライムが出る。
鉱石を食べて増殖したスライムは硬く、斬撃が通りにくい。
無理に斬ろうとすると武器の方が負ける。刃が滑って手首を痛める冒険者もいるらしい。
ルナは半月刀を鞘に収め、手斧に持ち替えた。
「三日月ちゃんが刃こぼれするのを気にしないですむ」
「荷物が増えるけど、モンスターに合わせてグローブを換えると効率がいいにゃ」
サァラはグローブをトゲ付きのものから、第一関節まで強化されたタイプに換えた。
ダンジョンのいいところは、出てくるモンスターがわかっているから対策が立てやすいことだよな。
さて、俺自身はどうしよう。
鉤のついた長い棒で鉱石スライムの動きを邪魔するか、ボウガンで射てみるか……。
どちらも今回初めて使ってみる武器だ。
訓練場で練習したときは、どちらもなんとか使えるようになったレベルだ。
「両方準備しておけばいいじゃない。使わない方は私が持っていてあげるわよ」
フォンがにこやかに提案してくれた。
「失敗してもすぐにフォローに入ってやるよ」
ルナが男前な発言をした。
「実践で使ってみないと、どっちが向いているかわからないにゃ」
サァラが拳を軽く打ち合わせた。付け替えたばかりのグローブから、ガツンと硬質な音がする。
「私だけ、チェンジするものがないわ」
フォンがそう言って、拗ねる真似をした。
「取り替える必要がないのが、一番強いにゃ。獣人でも、道具を使うのは弱いって考える猛獣系がいるん」
「猫と虎が勝負するなら、道具を使う方がフェアってもんだろ」
ルナがばっさり切り捨てる。
そうだ。生まれつきで勝負できなければ、努力と知恵で補えばいい。
それは、恥ずかしいことじゃないんだ。
「じゃあ、まず鉤棒を試してみたい。フォン、ボウガンを持っててもらえるか?」
「了解です。あ、私が射てもいいかもしれないわね」
いたずらっ子のような表情をして、フォンが受け取った。
「よし。じゃあ、階段を降りよう」
ルナのかけ声に、俺たちは「おう」と応えた。