軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

八十話 旧き精霊達②

俺はジュレム伯爵達と睨み合っていた。

まさか集合してやってくるとは思わなかった。

俺が倒したジームを除く、ジュレム伯爵一派が勢揃いしている。

恐らくはこれで全員なのだろう。

「だから、私はとっとと殺すしかないと言ったのだ。小出しにばかりしおって、きっちりと最悪の状況を作ってくれたなシェイム! あれはとっとと全力で殺してしまえばよかったのだ。あれほど安全策だと銘打っておいて、メビウスを奪われるなど!」

ジュレム伯爵が憤慨する。

「仕方ないでしょ? 戦闘中にあそこまでされるなんてわかるはずないじゃない。ジュレムも納得した上の行動だったと思うけれど? それに、まだメビウスもメアちゃんも残ってる」

「ジームも身勝手に動いた挙句、勝手に戦死しおって! どいつもこいつも、ガキ一人にどれだけ引っ掻き回されれば気が済むのだ! ジレメイムも、例のガルシャード王国で進めておる魔力電池の研究はどうなっておる!」

「余計な真似をしてアベル・ベレークと交戦したのは貴方も変わりませんよ、ジュレム。私も巻き込まれて精霊体を大きく失う羽目になったのですからね。それから……あれの進捗については、お話しするつもりはありません。前にもそう言ったはずですが?」

ジェームが髪の毛の先を弄り、面倒臭そうに返す。

ジェームのその態度に、ジュレム伯爵は一層顔を険しくしていた。

『クク、ニンゲンよ、再会できて嬉しいぞ。貴様にはたっぷりと恨みが溜まっているのでな……この私を取り逃がしたこと、後悔させてやるぞ! 永遠にな!』

緑に発光する球体、シムに無数の目玉が浮かび上がり、大きく見開いた。

世界脅威度序列四位……歴史を屠るモノ、大精霊シム……。

…………確か、実際にぶつかった中でダントツで一番弱いのはシムだったな。

討伐が済んだジームと比べても大きく格落ちしていた。

まずはあいつから潰すか。

「一応聞いとくが……逃がしてくれる気はないんだな。俺相手に消耗するのは避けたいところなんだろ? 悪いけど、全力で嫌がらせさせてもらうぞ。クゥドル戦に響くように、取り返しのつかないくらいにな」

俺が言いながら前に出ると、ジュレム伯爵が顔を顰めた。

黙ったままのジュレム伯爵に代わってジェームが口を開く。

「別に我々も、そこまでメビウス頼りだったわけじゃないんですよ。覚悟しておいてください、アベル君。君は、個人で我々相手に粘り過ぎた。最早君は都合のいい人形ではないし、クゥドルの前に転がる少しだけ邪魔な小石とも考えられない。全力を以て排除させてもらいますよ。お互いにとって不幸なことではありますが」

シェイムについては力量がわからないために探りながらになる。

ジュレム伯爵も普通に魔法攻撃の規模が大きいのであまり無視はできないが、暫定で一番厄介なのはジェームだ。

前回の接触で力は大きく削いだはずだが、どの程度劣化してくれているのかは戦ってみるまではわからない。

ひとまずシム、シェイム、ジュレム伯爵、ジェームの順番で狙ってみるか。

もっともシェイムは戦闘向きではないと考えているし、ジュレム伯爵もジェームも、以前の接触でかなり力の源である精霊体を削っている。

「シ、シルフェイム様の使者様達よ……! これはその、決して余の本意ではないのです! 脅されて仕方なく……その、好機を見てこいつをどうにかしようと考えておりまして……!」

オルヴィガが必死にジュレム伯爵へと諂い始めた。

……やっぱりこいつ、魔法樹からさっさと突き落としておくべきだったか。

ジュレム伯爵達はオルヴィガをガン無視していた。

オルヴィガの表情が凍り付いた。

「し、使者様方……?」

ジュレム伯爵達はオルヴィガのことなどどうでもいいのだろう。

俺もそう思う。

オルヴィガの性根などジュレム伯爵達はとっくに見抜いていただろうし、戦力としてそこまで期待できないのもわかっていたはずだ。

一万年放置されていたのも、信頼していたというよりは単にどうでもよかったのだろう。

ハイエルフ達を動かすのにも、別にオルヴィガの存在は必須ではないはずだ。

……俺としても、重要な場面で邪魔してくる可能性が出て来た以上、排除しておいた方がいいのではなかろうか。

「なあオルヴィガ、一応お前を下に突き落としていいか?」

「余の立場も考えてくれ! だって、こう言うしかないではないか! どうしろというのだ!」

オルヴィガが目に涙を滲ませて床を素手で叩き始めた。

子供か。

長生きし過ぎて退行してるんじゃなかろうか。

「…… তুরপুন(錬成せよ) 」

俺は杖を振るう。

気体中の精霊と他の成分を魔力で結合し、銀色の金属ヒディム・マギメタルを造り出す。

金属は分裂しながら宙を移動し、メアとオルヴィガ、俺の周りへと移動した。

「邪魔しないなら、ついでに守っておいてやる。何もしなかったら流れ弾で死ぬだろうからな。ただし、俺に余裕がある範囲だが」

当然だが、切り捨てるのはオルヴィガからになる。

「マ、マーレン……!」

オルヴィガが俺へと赤くなった目を向ける。

……あいつ、ちょっと泣いてやがったな。

どれだけ生き汚いんだ。

「お前は名誉ハイエルフにしてやろう! 光栄に思うのだぞ!」

俺は何も聞かなかったことにした。

ジュレム伯爵を睨みながら杖を振るう。

周囲のオーテム達がわらわらと動き始めた。

どころか、木偶竜の内部に積んであったオーテム達も、奥から姿を現していく。

「この上で立ち回れば、木偶竜ケツァルコアトルを相手にしなくても済むと思ったんだろうが……ここにはまだまだオーテムが積んである。有利を取れたとは思わないことだな!」

『ほざけ、ニンゲン如きがぁっ!』

シムに長い八本の脚が生え、木偶竜の上を駆けて向かって来る。

同時に、ジュレム伯爵達が木偶竜の上部を蹴って各々に跳んだ。

「お得意の石化の呪いはどうした? 呪詛返しが怖いか?」

シムの身体中の目が膨張し、血走った。

前回呪いを跳ね返されたのが相当堪えているらしい。