軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

十四話 ファージ領三大兵器⑥

「ア、アベル……そ、そのぅ……アベルからのプレゼントはメア凄く嬉しいんですけど、あの……ずっとこれ連れて歩くんですか……?」

メアが恐々とした顔で、俺の渡したオーテムを抱えながら言う。

俺がメアに渡したオーテムは、魔石で動き続ける警備オーテムである。

単純な動作しか熟せない代わりに、俺が近くにいない場合にも十分に威力を発揮することができる。

ドラゴン一体分くらいの働きは発揮してくれるはずだ。

「万が一を考えると不安なんだよな。三つくらいは用意しておくか……」

「い、いえ、大丈夫ですよ!? 周りの人が怖がっちゃいますから! どうしたんですかアベル、最近ちょっと過保護過ぎません!? アベル、他にもやることがつまってたんじゃないんですか!?」

「そ、そう?」

別に今はそこまで優先すべきことはない。

魔力波塔に搭載した兵器は残念ながら未完成のままだが、今の計画だと時間が掛かりすぎるので、少し間を置いて考え直すつもりである。

金策も練る必要があるので、魔力波塔だけ急いでも仕方がないのだ。

どの道、どう足掻いても数年越しの話になる。

魔導携帯電話(マギフォン) 開発なんざ、これこそ後の後でいい。

この間はアルタミアにせがまれ、俺用、アルタミア用、メア用の三つを作らされることとなった。

アルタミアが面白がって俺とメアに何度も電話を掛けて来る上に、塩対応で返すと露骨に機嫌が悪くなって面倒だったので、こっそりブロック機能を拡張することとなった。

メアと協議の末だったにも拘らず、案の定俺だけアルタミアから泣きながら殴られたので、ペテロ用にも追加で作ってアルタミアからの精神攻撃を三人で分散することとなった。

……思ったよりも尾を引いたが、とにかく、これでもう 魔導携帯電話(マギフォン) 云々に時間を割かれることはしばらくはないはずだ。

「そういえば……メア、 月祭(ディンメイ) の企画会議に俺の代理として出てもらってるけど……」

「はいっ! ちょっと疲れますけど、ばっちりメアやってますよ!」

「他の人にパスできないか?」

「え……」

「俺もしばらく錬金術師団はアルタミアとリノアに任せてみるつもりだし、開発もストップしてしばらく休息を取ろうと思ってるんだ」

「え、ええ……」

俺とメアの別行動は避けておくべきだろう。

俺に近しい人間がいいというのなら、アルタミアやペテロに押し付けてしまおう。

アルタミアは 魔導携帯電話(マギフォン) の機能を拡張してやる約束だけ取り付けておけば黙って不条理を呑み込んでくれるだろうし、ペテロもジュレム伯爵絡みならば首を横には振らないはずだ。

「ど、どうしたんですかアベル?」

……やはりメアにも、クゥドルから聞いたことを伝えておいた方がいいのだろうか?

集落絡みではメアはトラウマを抱えているようだったので、黙っていて済むのならば、そっちの方がいいはずだと俺は思っていた。

ただ、状況が状況だ。いつジュレム伯爵がメアに接触を図るかもわかったものではないのだ。

もしかしたらそれは来週かもしれないし、明日にでも来るかもしれない。

むしろメアが空神の遺産だというのなら、回収に来るわけでもなく、ずっとペテロや俺、クゥドルのいるファージ領に放置し付けていることの方が妙なのだ。

メアが俺の顔を少し不安そうに見つめていた。

返答に困っていたのが態度に出てしまったらしい。

ただメアは俺と目が合うと、表情を崩し、俺の肩に頭を預けた。

「アベルがメアのこと考えてくれるのは凄く嬉しいんですけどね……えへへ……」

「…………メア」

俺は肩にメアの頭を乗せながら、今後どうすべきかと思案を巡らせていると、足音が近付いて来ることに気が付いた。

「アベル様、アベル様に御友人が……」

ユーリスの声だ。

既に足音が二つ連なっているので、どうやらここまで入り込んできているらしい。

なんとなく気恥ずかしく、メアは顔を赤らめてそそくさと俺の肩から頭を浮かし、俺も崩していた態勢をピンと伸ばして表情をきゅっと結び、何事もなかった体裁を装った。

「あれ、メアちゃんとアベルちゃん、同じ部屋にいるの? あれれぇ、ひょっとしてアタシ、お邪魔にならない? 日改めた方がよかったり?」

「……敢えて部屋の中に聞かせるように大声で言っていませんか?」

聞き覚えのある、無邪気なソプラノ声だった。

俺とメアの恩人でもある、女冒険者のシェイムである。

俺は立ち上がりながら、メアに確認を取るために視線を向ける。

メアも嬉しそうに大きく二度頷いた。

俺は扉まで歩き、ドアノブを引く。

「久し振りだな、シェイム」

ユーリスの後方に、ポニーテールの活発そうな少女の姿が見えた。

シェイムはにっと笑うとユーリスの脇を駆け抜けて腕を広げ、俺へと飛び掛かってくる。

そしてそのまま俺の身体を力強く抱擁した。

「んぎゅー! 元気だった、アベルちゃん?」

「ちょ、ちょっと、シェイム!?」

俺は解こうとシェイムの背を叩くが、ビクともしない。

こいつ強いぞ、本当にF級冒険者か。

「ユーリスさんちょっと! 苦笑いしてないでこの人剥がして!」

「……あ」

顔を上げたシェイムが、しまったというふうに顔を顰める。

俺というよりは、俺の背後を見ている様だった。

俺もゆっくり振り返る。

オーテムを抱きしめたままのメアが、泣きそうな顔で身体を小刻みに震わせていた。

シェイムが俺を振り払い、メアの肩に手を添える。

「ごめんって、ね? 本当にごめん! そういうのじゃないから! 冒険者の間だとよくある挨拶なんだって! アタシ、恋愛目線だったら、背が高くてある程度鍛えててワイルドな感じの、一回り年上くらいの人が好みだから! ね?」

俺は俯くメアに必死に謝るシェイムを眺めながら、脳裏にガストンの顔を横切らせつつ、今そこまで言ったらまるで俺に何もないみたいで、今度は俺に失礼じゃないかと考えていた。