軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

十二話 ファージ領三大兵器④

俺はファージ領の離れで、黙々とオーテムを操り、魔力波塔付属兵器の開発を急いでいた。

傍らに置いたゾロモニアのオーテムを除けば、俺一人である。

メアには俺が完全に手が回らなくなってしまった 月祭(ディンメイ) の企画の仕事を押し付ける形になってしまったため、あまり俺の付き添いに来てくれる余裕がないのだ。

だいたい 月祭(ディンメイ) の行事のアイディア出し、そのために必要な魔法陣の設計は俺の方で終わらせたので、技術的な部分に関しては後は錬金術師団に投げられる範囲になっている。

オーテムを用いたパレードと魔弾の花火で盛り上げ、接近する 月(ディン) を鮮明に観られる遠視筒という魔法具を量産して販売するのが、俺の提案している部分である。

後は 月(ディン) を模した 月(ディン) 饅頭などの出店を出し、ファージ領に来た観光客からの集金を狙っているらしい。

月(ディン) はまん丸なので模すのもさぞ楽なことだろう。ぶっちゃけたただの手抜きじゃなかろうか。

後は予定やら当日の動きやらを、メアを間に挟んで他の企画のメンバーと擦り合わせている形になっているのだが、なかなかそれが難航しているようだ。

現状を聞いてこのままでは進まなさそうだと思い、元副団長のリノアにもメアの補佐に入ってもらう様には頼んでおいた。

錬金術師団との連携はこれで従来より取りやすくなるはずだ。

どうにも企画に頭の固い人間が多いらしく話が一進一退しがちなのと、ラルクが妙にやる気で細かいところまで突っ込んでくるのがネックになっているようだ。

俺が表立って口出ししていたときには皆人形の様に素直だったと記憶しているが、話を聞いていると一度決まったはずの部分まで蒸し返しているように思える。

一度時間を作って見に行っていた方がいいかもしれない。

「しかし……これ、ダメかもしれないな」

俺はぽつりと弱音を漏らす。

製造の困難さ以上に、安全性確認のための各部品の試運転に手間が掛かりすぎる。

おまけにどこまで詰めれば兵器が暴走しないといえるのか、なんともいえないのが怖い。

一歩間違えれば世界諸共ぶっ飛ばしてしまいかねない以上安全性から手を抜くわけにはいかないのだが、万全のテストをしようと思うと、テスト用の魔力波塔が五つは必要になる。

時間と労働力が掛かりすぎるのは無論のこと、ぶっちゃけ資材を集めるための資金が足りない。

『ダメなのはそちであろうに。妾も呆れてなーんも言えんわ』

ゾロモニアがオーテムの上に座り、塔を見上げながら背伸びをしていた。

『とっくに承知済みなのであろうが、今の時点でも相当危険な代物であるぞ。さすがの妾でもこれは少し引くぞ』

俺もゾロモニアにだけは言われたくない。

「……お前、余計な古代の知識振り撒いて何人もの魔術師を破滅させた悪魔じゃなかったか?」

『妾は知りたがっていた奴に、知っておったことを教えてやっただけである。その結果そやつが扱いきれずに自滅するのは、本人の責任であろう。……とはいっても、妾はそのツケに星一つ消える様な馬鹿なことはさせぬし、そもそもできぬぞ』

ゾロモニアはごろんと横になる。

言いたい放題言ってくれる。

俺だって、作りたくて作っているわけではない。

すべては、クゥドルやジュレム伯爵にメアと俺の今の平穏を乱されないための抵抗手段を用意するためである。

確かに探究心的な欲求もまあ無きにしもあらずといったところだが、別にこれ幸い、理由ができたぜと思っているわけではない、はずだ。

いや、そりゃ俺だって思いついたものは確かめてみたい、作ってみたいという願望はあるので、そういった気持ちもちょっとくらいはあるかもしれないが、大半は平穏のためだ。

『む……アベル、客人であるぞ』

ゾロモニアの言葉に、思わず俺は大きく振り返った。

てっきりクゥドルが来たのかと思ったのだ。

見慣れた橙の巻き髪が視界に入った。

「なんだ、アルタミアか」

「ね、アベル、熱心なのはわかるのよ? でもこれ、絶対魔力波に不要な機能つけてるわよね? まずは魔力波塔の、主要な機能を先に作って欲しいなー、なんて……」

アルタミアが両手の人差し指を付けながら、申し訳なさそうな素振りを取りつつ催促してくる。

元々アルタミアは、 魔導携帯電話(マギフォン) 開発に賛同し、魔力波塔建設に力を貸してくれていたのだ。

錬金術師団の連中への細かい仕事の振り分けや指導も、 魔導携帯電話(マギフォン) 開発を餌にかなり頑張ってもらっている。

それに、ジュレム伯爵とのことも薄っすらとしか知らないらしく、俺が過剰戦力を作って遊んでいるようにしか見えないようだ。

そんな場合じゃないと声を荒げて伝えてやりたいところだが、アルタミアと仲のいいペテロが伏せているのなら、敢えて俺から話すべきではないだろう。

「……実は 魔導携帯電話(マギフォン) を形にしたサンプルが、既にあってな。もっとも、魔力波塔の補助がないから、連絡可能な範囲はせいぜいこの村内くらいだが……雰囲気は味わえると思う」

「ほっ、本当に!? すっごく時間掛かる部分だと思ってたのに! やるじゃないアンタ! さっすがアベル! 人間性は笑っちゃうくらいクズなのに、錬金術師として本当にこの上なく優秀ね! そこまで出来上がってたのなら、私にもっと早く教えなさいよ!」

アルタミアがバシバシと背を叩いて来る。

普通に痛い。

というより、お前、そんなふうに俺を見ていたのか……。

「使ってみるか?」

「使う、使ってみたい! ね、どこにあるの? 研究所? ラルク邸? 幾つあるの?」

ここまでテンションが高いアルタミアは久々に見た。

ペテロが旧友だと知ったとき以来である。

「悪いがちょっと使える様に仕上げの術式調整が必要だから、明日の昼頃でいいか? 今はテスト用状態になってるんだよ」

「むぅ……そうなの、じゃあ仕方がないわね。待っておいてあげるわ」

お預けをくらったアルタミアが、僅かに頬を膨らます。

「とりあえず今はこっちに集中したい。ほら、明日はどうせ 魔導携帯電話(マギフォン) を弄るつもりなんだろ? 明日の分まで団員達をしごいてやってくれ」

「わかったわよ。明日、絶対頼んだわよ! 期待してるから!」

そう言ってアルタミアは、浮かれた調子でスキップする様に去っていった。

『はて……その様なもの、いつの間に作っておったのだ?』

ゾロモニアが首を傾げる。

俺はアルタミアが視界から消えたのを見届けた後、溜息を吐いた。

「仕方ない……材料はあるから、適当に形を繕って明日を凌ぐか。今日も寝れないなこりゃ」

『……随分と、綱渡りが好きなのだな』