軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四十八話 再・水を司る神リーヴァイ②

俺は槍を振るうリーヴァイの周囲をメツトリで飛び回りながら、杖を掲げて魔法陣を浮かべ、次の魔術を放つ準備を整える。

「 বায়ু(風よ) 」

メツトリの頭上に風の刃が渦を巻き、直径五メートル程の円盤を生じさせた。

アベル球は拡散する広範囲攻撃だが、アベルノコギリは極薄の刃に運動エネルギーを乗せた、切断のみに特化した魔術だ。

『なぜ当たらぬ!』

リーヴァイの槍を、メツトリが真横に飛んで回避する。

避けたところへ、人一人分の質量を持った巨大な菱形を象った水の塊が、雹の如く降り注いでくる。

目を向ければ、サーテリアが俺達へと杖を向けていた。

「私がいることも、お忘れないように!」

水の塊も、龍脈の術式付きだ。

あれほど強固な守りを持つ龍脈の術式、威力も恐らく、同程度にはあるだろう。

下手にガードして魔力を消耗するのは避けたい。

アベルノコギリを維持しつつ、魔法陣を並行展開してメツトリに指示を出す。

自動で回避させてもいいが、もしもあの水の塊にメツトリの結界を乱す効果でもあれば、力場の制御効果を失い、俺達が振り落とされかねない。

俺は一旦距離を取ることした。

大回りして、リーヴァイへと再度接近を試みる。

リーヴァイがメツトリを迎撃しようと槍を構えた瞬間を狙って加速させる。

リーヴァイが自身の掲げた腕に妨げられ、視界が狭まる刹那がある。

そこを突いて予想軌道上から消えるのだ。

リーヴァイはメツトリを見失い、戸惑いにより、動きが固まった。

「ここだぁっ!」

リーヴァイの胸部目掛けて、アベルノコギリを放つ。

アベル球の時と同様に、龍脈の水が盾を象ってリーヴァイの胸元に現れ、アベルノコギリの刃を妨げる。

……これでも、通らないのか。

クゥドルでさえ、まともに防ぐのは諦め、受け流すのに専念していたというのに。

様子見に出るのは止めて、俺も本気を出しておかないと、これはキツいかもしれない。

『憐れだなぁ、アベル! 貴様が小細工をして余の目を盗もうとも、龍脈の盾を欺くことはできぬのだ! いい加減に諦めるがよい!』

アベルノコギリは推進を妨げられはしたものの、相変わらず回転速度は保っている。

「リ、リーヴァイ様……そ、それを、どうにか、退かしてください……民のいない方へ……」

サーテリアが、球状結界の中で、苦し気に喘ぐ。

『何を腑抜けたことを言っておる、サーテリア? あの狂犬は、これまで散々舐めた真似をしでかしてくれた。ここで格の差を思い知らせてやらねばならん』

「リーヴァイ様……?」

『見よ、アベル! 慄け、そして讃えるがいい! これが余の力、偉大なる四大創造神の力である!』

リーヴァイは言うなり、水の槍を地面に突き刺し、空いた両腕でアベルノコギリを包み込んだ。

両手の掌に龍脈の盾が生じ、アベルノコギリの回転を急速に減衰させていく。

「う、嘘だろ!?」

アベルノコギリの回転が止まる。

それを、リーヴァイの掌が、龍脈の水越しに押し潰した。風の刃が四散する。

『はははははは! これが奥の手か、アベル! ここまで警戒するまでもなかったではないか!』

リーヴァイが笑いながら、地面に刺していた槍を引き抜く。

「はぁ、はぁ、ガハッ! リ、リーヴァイ様、ダメです、これ以上は、これ以上は……」

サーテリアが憔悴した顔で息を荒げる。

『何を腑抜けたことを! 貴様の信念は、その程度か!?』

……サーテリアが、龍脈の中継に身体が耐えられず、消耗している。

あれがポーズでなければ、このままアベルノコギリを撃ち続けていればいつかはサーテリアに先にガタが来るはずだが……そうなったとき、恐らくサーテリアは無事では済まない。

リーヴァイの槍で、あの防御を透過できないか試してみるという手もある。

……だが、リーヴァイ相手に下手に使い、所有権を取り戻されては事だ。

今の龍脈付きリーヴァイならば、投槍も前回とは比にならない威力を発揮するだろうし、槍を必中にする『運命歪曲』さえ自在に操るだろう。

この聖地で下手に使うことはできない。

「アベルちゃん、余計な事考えてる場合じゃないわよ。向こうは害意剥き出しで来ているのだから、甘い事は言ってられないわ。死ぬ前に気を失うのが先でしょうし、死ぬ覚悟だってあの子はできてるわよ」

ペテロが俺に忠告する。

俺は頷く。

「……わかっては、います」

俺は再び杖を掲げ、アベルノコギリを準備する。

「 বায়ু(風よ) 」

俺はその気になれば、アベルノコギリを四連まで放つことができる。

だが、四つ一気に放てば、今の様子では、サーテリアが本当に死にかねない。

一つずつ、様子を見ていきたい。もしもそれでどうにもならなければ……そのときは、四連アベルノコギリを使わせてもらうし、リーヴァイの槍も出さねばならないだろう。

宮殿の近くを飛んだ時、メツトリの上に置いてあったオーテムが、妙な反応を見せた。

俺は魔法陣を展開してメツトリに指示を出し、宮殿から遠ざけさせる。

宙に何かが光ったかと思いきや、次の瞬間、宮殿の壁が何かで裂かれたかのようにバラバラになり、一部が倒壊した。

あ、危ない。

なんだアレは、今のも、龍脈を利用した攻撃なのか?

まるで大量のワイヤーで切断しかの様な切り口だった。

『チッ、勘のいい奴め、外したか……あまり使いたくはないというのに』

リーヴァイがぼそりと零す。

『サーテリア、援護せよ! 貴様が今攻撃しておれば、位置を誘導できていたかもしれんのに!』

サーテリアは胸部を抑えたまま、無言で首を振る。

「これでもう、諦めてください!」

俺は二発目のアベルノコギリをリーヴァイへと投じる。

リーヴァイは意気揚々と腕を突き出した。

『はっ! いくら撃とうとも、無駄な事だ! 余の全盛期の魔力の前には、貴様如きの魔術など塵芥に等しい!』

リーヴァイの右腕の指四本が、アベルノコギリに切断された。

リーヴァイが苦悶と驚愕の形相で身体を逸らす。続けてアベルノコギリはリーヴァイの頬に傷をつけ、肩の肉を削ぎ落して空の彼方へと消えて行った。

「……あれ」

『グゥォオオオオオオ! サアテリァァァァァア! キサァァァァマァア!』

俺もどうせ防がれるとあまり狙いは付けていなかったが、これならしっかり一発目同様、小細工を交えて狙いを付ければよかった。

「だ、ダメです、リーヴァイ様……」

サーテリアが青褪めた顔で呟く。

『何が駄目なのだ! この余の足を散々引っ張りおって! 貴様は、貴様は……!』

「す、既に、神話時代より一万年、この国を守り続けて来たリーヴァイ様の半身……龍脈の魔力が、四割以上損なわれました。これ以上は、これ以上は……聖地が、リーヴァイ教が、国が、なくなってしまいます」

サーテリアが瞳に涙を滲ませ、唇を震わせながら言う。

『え、もう!?』「え、もう!?」