軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

十二話 魔獣被害⑤

高原に現れたゴブリンの群れ。

それに対するは、討伐隊第一部隊の十七人である。

「逃がすな! ゴブリンは、取り逃せばすぐに繁殖するぞ!」

「はいっ!」

隊長であるユーリスが叫ぶと掛け声が上がる。

今回のゴブリンの群れは、四十体ほどである。

しかし数は多いが、大したことはない。

ゴブリンは背が低く、力もない。

一対一なら、新人冒険者単体でもどうにか狩れる程度の魔獣だ。

俺は木陰でメアに膝枕をしてもらいながら、ゴブリン達が狩られていく様を眺めていた。

視界が薄れ、頭痛がする。

「大丈夫ですか? しっかりしてください!」

「……体力、ついたつもりだったんだけどな」

……次からは何か、木馬でも作ってみようかな。

後、日傘が欲しい。

ここは木が少ないからダイレクトに日の光が当たるため、ロマーヌの森を歩いていたときよりも体力の消耗が激しい。

おまけに、妙に日照りが強い。

空を見渡しても、遠くまで雲が見えない。

っていうかここ、雲から避けられてないか?

そういえば、干ばつだとか言っていたな。

「水……飲みますか?」

「……頼む」

メアが俺の口許へ、ヒョットルで水を僅かに流し込んでくれた。

「い、いいなっ! 絶対にアベル殿のところへ近づかせるな!」

ユーリスの声が聞こえてくる。

迷惑を掛けたようで申し訳ない。

「だから俺は言ったんです! だから俺は言ったんです! あんなガキ、どうせ使い物になりゃしないって!」

クラークが苛立ちを露にしながら叫ぶ。

本当、何も言い返せない状態なのが物悲しい。

正直、ちょっと調子に乗っていたかもしれない。

バリバリ武闘派の連中と肩を並べて見回りなんてできるはずがなかったのだ。

「あ……ちょっとマシになってきた気がする、うん」

「本当ですか? 気分悪くありませんか? 離脱して、先に帰りましょう。メアが背負って行きますから、ね?」

「い、いや、せっかくだから最後までついて行きたいし……」

クラークに馬鹿にされたままでは帰れない。

オーテムに乗ってでも付いていってやる。

「そうだ、次から馬車で送ってもらおう」

「う、う~ん……そこまでしてもらえますかね……あ!」

混戦から逸れた一体のゴブリンが、俺達の方へと向かって来た。

「ゲアッ、ゲアアッ!」

群れのリーダー格なのか、体格が他のゴブリンよりもいい。

大きな棍棒を手にしていた。

「すいません! すいません! 誰か、誰かこっち! アベルの方に来てます!」

メアは言いながら立ち上がり、傍らに置いていたシューティングワイバーンを拾い上げて構える。

間の悪いことに、一番近いのがクラークだった。

クラークは物凄く嫌そうに顔を引き攣らせたが、ユーリスから目で指示を受け、こっちへと向かって来た。

「え、えいっ!」

メアの放った一射目の矢を、ゴブリンは棍棒で受ける。

続けて放った二射目がゴブリンの太股に刺さり、動きを止める。

「ゲ……」

「よ、よかった……当たった……」

ゴブリンは矢を引き抜き、素手でへし折る。

再びゴブリンが棍棒を振り上げ、メアの三射目を叩き落とす。

その隙を突き、クラークがゴブリンの首を飛ばした。

「ど、どうも……」

クラークは俺を睨み、地に伏しているゴブリンの背に剣を突き刺した。

「貴様ら、馬鹿にするのも大概にしろ! 俺達はなぁ、命張ってここに立ってんだよ! 任務に出て来たなら、自分の命くらい自分で守れ! 次に似たようなことがあったら絶対に手は貸さんからな!」

「……はい」

さっきみたいな言いがかりをつけられたらやり場のないモヤモヤの矛先にしようと考えていたのだが、びっくりするほど普通に正論だった。

「ち、違うんです! アベル、普段は凄いんです! ちょっと体力がないだけなんです!」

「知ったことかぁっ!」

クラークはそう怒鳴り、ゴブリンとの乱戦に戻って行った。

……ゴブリン討伐後、俺はアシュラ5000を転移させ、その上に乗って移動することにした。

なんかちょっとみっともない気もするが、これ以上足を引っ張るわけにはいかない。

討伐隊員達が奇異の不審の目を向けてくるが、ここで折れるわけにはいかない。

「……アベル殿、体調が優れないのでしたら、その、帰還なされた方が。護衛もお付けしますので」

ユーリスが、言葉を選びながらそう提案してくれた。

ユーリスの言葉を聞き、クラークが青筋を立てる。

「ご、護衛? こいつらに? ただでさえ、人手不足だというのに!?」

「もう、合流地点まで近い。ここまでゴブリンの群れに出くわした程度で、大した魔獣も見かけなかった。魔法具でも危険な魔獣は観測できなかったし、むしろ拍子抜けな程だ。緊急伝令が来ないところを見ると、他の部隊もそう差がないのだろう」

「合流地点に行くまでは、確証が持てないじゃないですか!」

クラークがユーリスに喰い下がる。

さっきの俺はマジで役に立たないゴミクズだったので、何も言えない。

というか、擁護するのももう止めてほしい。

恥ずかしくなってきた。

「い、いや、俺は大丈夫です! 本当! 次は戦えますんで!」

「……メア殿が、心配そうにしているぞ」

後ろを見ると、メアは人差し指を自分の唇に当て、不安そうに俺の背を見つめていた。

「だ、大丈夫ですっ! 本当に!」

「……もう合流地点まで近いし、ついて来てもらった方がまだ安全か」

ユーリスがクラークへちらりと目をやり、そう結論付けた。

護衛が出せないのならば、一緒に行動した方が危険は少ないと考えたのだろう。

合流地点である山脈近くの崖壁前まで、もう半時間も掛からないはずだ。

「……それからその、奇妙な丸太は」

「オーテムです。自分の集落では、皆毎日これを彫って暮らしていました」

「他の隊員達が怖がっているから、できればその、仕舞ってもらえれば……。いや、どうしても移動に必要だというのならば、構わないのですが……」

ユーリスが言い辛そうに口にした。

「……移動に必要なので」

「そ、そうですか。それは失礼しました」

ユーリスはまじまじとアシュラ5000の六本のガシャガシャ動く腕を見てから、頭を下げた。

道中で、たくさんの足跡を見つけた。

先に第二部隊か第三部隊が到着しているのだろう。

「他の部隊も順調、か。元々最長コースではありましたが、こっちにはお荷物がいたから、その分余計に遅れてしまいましたね」

クラークがわざとらしく、アシュラ5000に乗る俺に目を向けながら言う。

「お、おい、よさないか、クラーク。ラルク様が大変気に入られている客人だぞ」

他の隊員がクラークを諌める。

「それが気に喰わないと言っている。最近、あの方はひどく疲れている。だからナルガルンが死んだと聞いて浮かれて、あんなガキを大喜びで迎え入れてしまったのだろう」

ぐ、ぐぅ……。

俺は悔しさを堪えるため、アシュラ5000の縁を強く掴んだ。