軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

九話 魔獣被害②

その後の話し合いにより、俺とメア、エリアは、ラルクの館の客室に泊まることになった。

「……本当に、いいんですか? あの、自分達普通の宿の方が慣れてますし」

「いやいや! ぜひ、ぜひ泊まっていってくれ! 現状としては、この館もあまり裕福とは言えないかもしれんが……食糧庫の床を削ってでも、君達の舌に合う料理を用意してみせよう!」

「あ、あんまり無茶しないでくださいね……」

気を遣うし、普通の宿屋でいいやと思っていたのだが、ラルクが凄まじい勢いで勧めてくれたので、断るのも失礼だとありがたく泊まらせてもらうことにした。

……あんまり領主に優遇されてるように見られたら、俺も領民から石投げられたりしないよな?

「明日から早速、私兵団を動かしての魔獣の間引きに出る。全体の動きをそれまでにまた纏めておこう。そのとき、また手を貸してもらえると助かる」

「ええ、勿論任せてください。今回は、例の錬金術師団は動かさないんですか?」

魔術師の集まりなら、それなりの戦力になるはずだ。

領地を守る大事な戦いなのだから、使わない手はないと思うのだが……。

俺の質問を聞き、ラルクは扉の方をちらりと確認し、それから声を潜める。

「……錬金術師団は現状、別の重要な任務についていてな。ナルガルン討伐の際にはさすがに動いてもらったのだが、そのときもほとんど安全圏から様子を見ているだけだったという。無理に連れて行っても、混乱を招くだけだろう。私兵団と連携を取ることができない以上、詠唱中の魔術師を守ることも難しいのだからな」

「あ……わかりました」

だいたい察した。

要するに、他の仕事を言い訳に危ない場には出たがらないということか。

「リノア副団長の一派なら、或いは……いや、イカロスに潰されるのがオチか」

ラルクはぶつぶつと呟き、それから首を振った。

よくはわからないが、そのイカロスとやらが錬金術師団のトップであり、ラルクを悩ませている元凶なのだろう。

「因みに、その任務というのは?」

「この土地の気候で育ちやすい特性を持ち、成長が早くて栄養価の高い作物を錬金術で開発する研究だ」

「なっ!?」

そんな楽しそうなことをやっているのか。

俺もぜひ混ぜてほしい。

錬金術師団で和気藹々と、『〇〇ベースで組み直さない?』『そうすると高温に弱くなるから△△の性質を利用してみよう』『俺が読んだことのある文献では……』みたいな話をしながら開発したい。

「あ、あの、やっぱり、私兵団じゃなくて、そっちに自分も参加させてもらえま……」

俺が言い切るより先に、ラルクが壁を殴った。

「一進一退の研究を……かれこれ、二年近くも続けている。確かに、完成すればこの領地は救われるだろうが……そんな夢のような作物、数年で作れるものなら、とっくに昔の魔術師が作っているはずだと、私は思うのだがな。ましてやこんな、まともな書物もない辺境の地で……」

ラルクは床へと目線を落とす。

その目は、苛立ち、呆れ、諦め、それから無駄だとわかっていながらも止められない自分への嘲りが籠っているように思えた。

「あ、はは、ははは……」

「とと、愚痴を零してしまって済まない。先ほど、何か言っていたか?」

「い、いえ」

切り出せる雰囲気じゃない……。

とりあえずは日を改めるか。

錬金術師団に迂闊に飛び込むのは避けた方がいいだろうし、魔獣の間引きが終わってから下調べをして、大丈夫そうならまた折を見て話してみよう。

「そういえば、防具の素材に困っていましたね」

「ああ。魔獣相手に防具なしで挑むわけにはいかないが……しばらくは、どうにか既存の物で持ち堪えてもらうしかない。錬金術師団に回して修復してもらって時間を稼いで、その間に交易を回復させ、外部から防具を仕入れなければ」

「そのお金は?」

「少し連絡が途絶えてしまってはいるが、親交の深い領地がある。そちらに泣きついて、どうにか支援を受けられれば……」

金を借りられるかどうか、か……。

あまり勝算があるようには思えないな。

出し惜しみしていると思われるのも嫌だし、切れるカードはさっさと切っておくか。

「ナルガルンの首と胴体の鱗を使えば、それなりの数の防具が出来あがると思いますよ。ここに加工技術があれば、ですが。緊急事態ですし、喜んで献上させていただきますよ」

「た、確かにあれがあれば! 君の狩った首が三本……それに、討伐隊の落とした首が一本! 胴体と、首が四本か!」

四本……?

あ、ああ、うん、そういうことになっちゃうのか。

早めに訂正しておいた方がよかったかもしれない。

まぁ、見たらわかることか。

「それだけあれば、一通りは賄うことができる! あれの強度は、十分だろう?」

ラルクが振り返り、ユーリスへと目を向ける。

ユーリスがこくりと頷く。

「ナルガルンの鱗の硬さは、私が保証します。そこらの金属鎧よりも硬く、そして軽いはずです。加工は難しいでしょうが、見かけに拘らなければ量産は容易かと。……しかし、魔力が強いため、その……ただの鎧にするのは、少し勿体ないかと」

ユーリスが途中から声色を落とし、言葉を選ぶようにゆっくりと言う。

何を気にしているんだと思っていたら、目が俺の方を見ていた。

ナルガルンの鱗に半端な加工をして価値を下げることを、俺が嫌がるのではないかと踏んだのだろう。

「そ、そうか……勿体ないのか……」

ラルクががっくりと肩を落とし、機嫌を窺うように俺を見る。

「人の命が関わっているんです。小金を惜しむような真似はしません。すべて使ってください」

「本当に、もう、何と礼を言ったらいいやら。申し訳ない、すべて終わったら、この礼は必ずさせてもらう」

ラルクが鼻をすすりながら俺に頭を下げる。

「頭を上げてください」

はいパトロンゲットォォォォオオッ!

恩も売れているし、信用も今後の復興活動に付き合えば十二分に得られる。

この調子なら、支援金や投資金は勿論、魔法具の量産や販売も領地の名の許に行わせてもらえるはずだ。

おまけに俺相手に足許を見るような立ち回りも取って来ないだろう。

俺は内心小躍りしたい気持ちを押さえながら、なるべく表に出さないよう意識をした。