軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28 予選が始まります

校内トーナメントは各学年ごとに行なわれる。

三学年全てを同じ日に行なうことは無理なので、三日かけてスケジュールをこなす。

場所は学園の敷地内にある円形の闘技場だ。

そして、明日はいよいよトーナメントの初日。

最強の一年生を決める日だ。

「はい、皆さん。これが明日の予選のブロック表よ。戦士学科も魔法学科もごちゃ混ぜのバトルロイヤルだから。勝ち抜くコツは攻撃より防御。負けないように立ち回るのよ」

魔法学科一年の教室で、エミリアが黒板に大きな紙を貼りだした。

一年生は二つの学科を会わせて八十二人だ。

それが八つのブロックに分けられ、バトルロイヤルを行なう。

勝ち抜いた八人だけが、本戦であるトーナメントに出場できる。

「……あれ? エミリア先生。私の名前がありませんよ!」

ローラはブロック表をまじまじと見たが、どこにも自分の名前がない。

生徒の人数も八十一人しかいないことになっている。

「ローラさんは、シード枠なの。あなたはトーナメントの決勝だけ戦えばいいから」

「ええええ!? なぜですかー、なぜですかー! 私も皆と戦いたいです!」

「我慢してちょうだい。ローラさんが普通に出場したら、本来なら上位まで行けるはずの生徒がドンドン脱落していくことになっちゃうんだもの……」

エミリアが申し訳なさそうに言うと、クラスメイトたちが一斉に頷き始めた。

「ローラちゃん。我慢してね。あなたと決勝まで当たらないってだけで、安心感が違うから」

「そうだぞ。これで俺らにもチャンスが出てきたぜ」

「まあ、決勝戦とかは無理でも、本戦出場くらいなら望みあるからな」

クラスメイトは一致団結していた。

ローラは「ぐぬぬ」と呻くが、皆の言い分も分かる。

事実、ローラは負けてやるつもりなど微塵もなかった。

「分かりました……シード枠でいいです。ところでシャーロットさんはどうするんですか? 今日も来ていませんが。明日も来なかったら……」

「シャーロットさんは第八ブロック。そのバトルロイヤルが始まるまでにこなかったら失格よ」

「そんな……」

シャーロットが失踪してから半月。

所在はいまだ不明。

学内では死亡説すら囁かれている。

無論ローラは、シャーロットが死んだなどと思っていない。

明日のトーナメントのために秘密の修行をしているだけだ。

しかし、いくら修行しても、間に合わないのでは意味がない。

「大丈夫よ、ローラさん。シャーロットさんは来るわよ、きっと。あの子ほど勝利に貪欲な子はいないから……」

「……そうですね」

エミリアはシャーロットを信じているようだ。

ローラだって信じている。

時間ギリギリまで己を鍛えて、ローラがビックリするくらい強くなって現われる。

そうでなければ、許さない。

これだけ心配をかけておきながら間に合わないなんて、そんなのシャーロット・ガザードに相応しくない。

入学初日にシャーロットが見せてくれた光の攻撃魔法。

あれこそローラが人生で初めて、魔法を格好いいと思ってしまった瞬間なのだ。

あの輝きをもう一度。

今度は戦いの場で――。

ギルドレア冒険者学園の闘技場はそこそこ大規模なものなので、客席に全校生徒を入れてもかなりの余裕がある。

よって校内トーナメントのときは一般開放され、暇な市民や、生徒の父兄なども見に来る。

ここでよい成績を残せば、卒業後に有力パーティーからスカウトが来るということも有り得るので、三年生は必死だ。

もっとも、入学したばかりの一年生は、ただのお祭り気分である。

「うわぁ……こんなに人が来るものなんですねぇ」

リングの周りで待機していたローラは、客席を見上げ感心する。

「千人くらい入ってるかも」

アンナも驚いた様子だ。

こんな大人数の前で試合をするのかと思うと、緊張してしまう。

それにしても世の中、意外と暇な人が多いようだ。

まあ、入場は無料だし、教師たちが防御結界で客席を守っているから危険もない。

一般人が普段見ることのできない剣技や魔法の数々が眼前で繰り広げられるわけだから、娯楽としては上等の部類だろう。

「ところで、シャーロットは結局来なかったの?」

「はい……第八ブロックだから、まだ時間がありますが……」

当日の朝には流石に帰ってくるだろうとタカをくくっていたのに、今にいたるもシャーロットは姿を見せない。

本当に、どうするつもりなのだろう。

ローラがそわそわしているうちに、第一ブロックのバトルロイヤルが始まってしまった。

十人の生徒がリングに上がり、剣や槍、弓矢や魔法を打ち合って最後の一人になるまで戦う。

学生同士、実力にそこまでの差はない。

しかも乱戦ゆえに勝負の流れは目まぐるしく変わる。

かなり時間がかかりそうだ――そうローラが思った次の瞬間、一気に均衡が崩れ、斧使いの男子だけが残った。

魔法使いがヤケクソ気味に使った大規模な爆発魔法で他の生徒が吹っ飛んだのに、彼だけは火傷を負いながらもリングに立っていたのだ。

「皆もっと時間をかけて戦ってくださいよぉ……というかシャーロットさん早く来て!」

いっそ変装してシャーロットの代わりに出場しようかとすら考えるローラだが、誰がどう見ても身長が足りないので諦めるしかなかった。

校内トーナメントの期間中、闘技場の客席は誰でも入ることができる。

ならば自分の子供がどのくらい成長したのか見るため、家族が見に来るのは当然の流れだ。

この日のため、王都の外からわざわざやってくる者もいる。

ドーラ・エドモンズもその一人だった。

本当は夫であるブルーノも一緒に来たがっていたのだが、町の近くにモンスターが湧いたせいで急遽キャンセルになってしまった。

泣くほど残念がっていたが、仕方がない。

夫の分まで、しっかり娘を応援しよう。

「それにしてもローラはいつ出てくるのかしら。どのくらい強くなったか楽しみだわぁ」

ローラは父親に散々鍛えられてから入学した。

同学年の生徒では勝負にならないかもしれない。

きっと楽勝で優勝するだろう。

なんて親馬鹿な思考をしながら、ドーラはリング上のバトルロイヤルを見る。

ドーラは娘が戦士学科で剣を学んでいると信じ切っていた。

なにせ自分たちの娘なのだ。

圧倒的強さで学年トップになり、上級生すら脅かしていると確信していた。

魔法適性値オール9999を弾きだし、魔法学科に入って、上級生どころか教師すら倒しているなど、想像の外側の世界だった。

「はっくちゅん!」

風邪を引いたわけでもないのにローラは大きなくしゃみをした。

「なに、その可愛いくしゃみ」

「ふぇ……誰かが私の噂をしているのでしょうか?」

「ローラは有名人だから、ありうる」

「私、注目を浴びるのは苦手なのですが……」

「え……衝撃の事実……!」

アンナは目を見開き丸くしている。

何がどう衝撃の事実なのか。

これでもローラは自重して日々を送っているのだ。

「次は第七ブロック。私の番。できるだけ長引かせる」

「お願いしますアンナさん! 頑張ってください!」

アンナはグッと親指を立てリングに上がる。

第七ブロックが終われば、シャーロットの出番だ。

それまでに彼女が現われなければ、即失格。

頼むから間に合ってくれとローラは祈った。