軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

198 キュピーンと閃めきました

「あー……疲れましたわ……頭がボンヤリしますわ……」

「同じく……まったく疲れが取れない……」

夢の中でガチンコバトルをした次の日の放課後。

学校敷地内にある草むらで、シャーロットとアンナは寝転んでぼやいていた。

付き合いでローラも寝転んで空を仰いだ。

もう十二月だが、今日はお日様が出ているので温かい。

温かいのはいいことだ。

しかし雪が降ったら雪合戦ができるので、それはそれで楽しみである。

「シャーロットさん、授業中、うとうとしてエミリア先生に怒られてましたね。アンナさんは大丈夫でしたか?」

「熟睡して殴られた」

「それは……災難です」

戦っていたのは夢の中で、実際は眠っていたのだから疲れは残らなそうな気もする。

実際、二人は身体的には元気らしい。

しかし精神的疲労は放課後になっても取れず、ご覧の有様となっている。

「ぴ、ぴ、ぴ」

そうやって寝転んでいるローラたち三人のお腹の上でハクは飛びはね、反復横跳びのような動きをしている。

どういう意図かは分からないが、運動するのはいいことだ。

「ハクがお腹に攻撃してくる……」

「何だかくすぐったいですわ……」

「ハク。運動するのはいいですが、人のお腹をトランポリンにしちゃ駄目ですよ」

「ぴー?」

ハクは分かったのか分かっていないのか、あいまいな声を出し、ローラの頬に自分の鼻先を擦り付けてきた。

反則的に可愛い。ローラはハクをむぎゅっと抱きしめる。

「ハクを抱きしめているローラさんが反則的に可愛いですわぁ……」

「同感。これは私たちもローラを抱きしめるしかない」

「な、なぜそういう結論に!? というか二人とも元気ですね」

「ローラさんを見ていたら元気になりましたわ」

「おお、私、凄い効能ですね!」

「まあ、授業中に寝てたから、疲れが取れてきたというのもあるけど……」

「ですわ」

アンナとシャーロットが起き上がったので、ローラもハクを抱いたままムクリと体を起こす。

「さて。元気になったところで、どうします? いつものように訓練ですか? それとも遊びに行きますか?」

「訓練も遊ぶのもいいけど、ちょっと作戦会議をすべきだと思う」

「作戦会議ですか? はて。何のです?」

「今後、どうやって正体を隠して強力なモンスターと戦うかという作戦会議」

「アンナさん!? 駄目ですよ。ちゃんと大人しくしていようと誓い合ったじゃないですか。少なくとも年内は!」

「そう。年内は。だけどもう十二月だから、来年の予定を立てておかなきゃ」

「何事も備えあれば憂いなし、ですわ」

「なるほどー。勉強になります!」

ローラは、今年一杯大人しくしていることしか考えていなかった。

校則を破りたくなったら、そのとき破り方を考えればいいと思っていた。

だが、二人の年長者は、ちゃんと先のことまで頭に入れているのだ。

ぜひ見習っていきたい。

「それで、アンナさんは正体を隠す案があるんですか?」

「ないから皆で考えよう」

「むむむ。他力本願は感心しませんねぇ」

「分からないときは素直に分からないと言うのも度胸」

「おおっ、大人っぽい! 私が浅はかでした!」

「ローラさん、アンナさんに言いくるめられていますわよ」

「別に言いくるめてるわけじゃないよ。ほんとだよ」

アンナの口調が棒読みだったので、ローラはようやく疑念を覚えた。

しかし彼女の意図が何であれ、『分からないときは素直に分からないと言う』のはよい考えなので、ちゃんと心に刻んでおこう。

「とりあえず、認識阻害の魔法は危険極まるので却下ですわ」

「もちろんです。そしてパジャレンジャーとカミブクロンも正体を隠せません。サングラスすら通用しませんでした……」

「サングラスは試す前から分かってたから」

「世の中の人は洞察力が鋭すぎると思います。ね、ハク」

「ぴー」

ローラの腕の中でハクはモゾモゾ動きながら応えてくれた。

それが意味を理解した上での返答なのかは分からない。

しかし反応があったというだけでローラは満足する。

あとはハクの鳴き声を脳内変換し「そうだ、そうだ」という同意の言葉にしてしまえばいいのだ。

「考えても何も思い浮かばないときは、先人の知恵に頼るしかありません。というわけで図書室に行きましょう」

「また危ない魔法を見つけたらどうするの?」

「前回の反省を踏まえ、今回は魔法以外の手段です!」

というわけで、ローラたちは再び図書室にやってきた。

今日も黒髪の図書委員長はジッと本を読んでいる。まるで置物みたいだ。

「やはり正体を隠すには、変装でしょう。パジャレンジャー、カミブクロンに続く、第三の変装を考えるのです」

「であれば、お可愛らしいのがいいですわ」

「ローラが可愛い格好してくれるなら、望むところ」

どうもシャーロットとアンナは論点がズレたことを言っているような気がする。

しかしローラも可愛いのは好きなので、特に異を唱えなかった。

「では、手分けして参考になりそうな本を探しましょう」

「わたくしたちは以前にも変装術の本を探していたので、お手の物ですわ」

「……そう言えばそうでしたね……私が幻惑魔法の本を一生懸命探していたとき、シャーロットさんとアンナさんは私をからかうために変装術の本を探していたんでしたっけ」

「うふふ。そんなこともありましたわね」

「ローラが可愛いのが悪い。それに結局、変装しようとしているんだから、私たちが正しかったとも言える」

「む……? よく分かりませんが、誤魔化されているのは分かります」

「そんなことはない。さ、手分けして探そう」

「ローラさんに相応しい衣装を見つけ出しますわ」

ローラは釈然としないものを感じながらも、ハクを頭に乗せて図書室をウロウロすることにした。

「ぴー」

とある本棚の前でハクが声を上げた。

それは以前、幻惑系魔法大百科を見つけた本棚だった。

「ハク。魔法で正体を隠すのは前回ので懲りたので、その棚は調べなくていいですよ

「ぴぃ!」

ハクはローラが止めるのも聞かず、パタパタ羽ばたいて本棚の上の方に行ってしまった。

そして前脚で一冊の本を抱きかかえて帰ってくる。

「これは……『今日からできる魔法少女』! 前回ハクが間違って取った本ですね」

「ぴ」

「え? もしかして間違って取ったんじゃなくて、この本を気に入ってるんですか?」

「ぴ、ぴー」

そう鳴きながら、ハクは鼻をクンクンさせる。

「確かに本は独特の匂いがしますが……ハクにとってはこの一冊の匂いがお気に入りなんですね」

「ぴー」

ハクは器用に本を開き、ページに顔を近づけ深呼吸する。

とても幸せそうな顔だ。

その開いたページに描いてある絵を見て、ローラはキュピーンと閃いた。

そうだ、魔法少女だ、と。