軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

182 ゴージャス・シャーロットさんです

ローラとアンナがくすぐっていると、シャーロットは途中から魔法的な防御を諦め、走って逃げ出した。

それは卑怯だと、ローラたちは追いかける。

「ぴー」

ハクは趣旨を分かっているのか分かっていないのか、とにかく羽ばたいて追いかけてきた。

どたばた走り回っているうちに、すっかり日が落ちてしまった。

ハクだけでなく、全員が当初の趣旨を忘れてしまい、ただ追いかけっこを楽しんでしまったのだ。

「……私たち、何で走ってたんでしたっけ?」

「確か、シャーロットのお漏らしに関係があったような」

「違いますわ! わたくしの新必殺技のテストをしていたのです!」

「あ、そうでした。それでシャーロットさんがくすぐりに耐えたら新必殺技が完成するんでしたよね」

「じゃあ、くすぐり再開」

「それも違いますわ! そんなことより、早く帰らないと学食が終わってしまいますわ」

「それは大変です! 帰りましょう。シャーロットさんの新必殺技も大切ですが、オムレツがなければ戦はできないという格言もあります」

「……誰の格言だろう」

ローラたち三人と一匹は、バヒュンとひとっ飛びで学園に戻り、学食に駆け込む。

素早く飛行したので、営業時間が終わるまでにかなりの余裕があった。

「私たち、飛行少女ですね!」

「それだと不良みたいだよ」

「マッハ乙女と名乗った方が格好いいですわ」

「おお、シャーロットさんはそういうの考えるの得意ですね!」

「ふふふ、ネーミングセンスには自信ありますわ」

「そんなに格好いいかな?」

アンナは首を傾げる。

どうやら一人だけセンスが違うらしい。

彼女は三人の中で一番常識人に近い。そのアンナが否定的なところを見ると、マッハ乙女はダサい名前なのかもしれない……。

マッハ乙女と名乗るのはやめておこうと密かに誓うローラであった。

「おや、ロラえもん殿、ハク様。シャーロット殿とアンナ殿も。今日は遅い晩ご飯でありますな」

食堂で働いている狐の獣人ミサキが、カウンターの奥から話しかけてきた。

「草原に行って特訓していたんです!」

「わざわざ王都の外まで行って特訓していたでありますか。凄いでありますなぁ。私も一緒に行きたいところでありますが、流石に三人の特訓には付いていけないであります」

ミサキは残念そうに言う。

実のところ、特訓していた時間は短く、ほとんど草原でかけっこして過ごしていたのだが、せっかくミサキが尊敬の眼差しを向けてくれているので、言わぬが花であろう。

「特訓して疲れたので、オムレツください! ハクの分も!」

「了解であります。ロラえもん殿はどんなときでもオムレツでありますな」

そして、それぞれ好きな物を注文し、お盆に載せてテーブルに向かう。

「ところで皆さん。わたくしの新必殺技の名前を一緒に考えてくださりませんか?」

シャーロットはハンバーグをナイフで切りながら、そんなことを言い出した。

「未完成の技なのに名前つけるの? あんなのを実戦で使ったら、自分自身を必殺すると思うんだけど」

アンナは冷静なツッコミを入れてから、エビピラフを口に運ぶ。

「名前は大切ですわ。必殺技の名前が決まれば、修行にも身が入るというもの。それにアンナさんも人事ではありませんわ。その魔法剣たちに、まだ名前をつけていないではありませんか」

「……風の魔法剣と雷の魔法剣じゃ駄目なの?」

「地味すぎますわ! せっかく強力な剣なのですから、強力そうな名前をつけるのが普通ですわ!」

「シャーロットに普通のなんたるかを語られてしまった……ローラはどう思う?」

「うーん……普通かどうかは分かりませんが、私だったら名前をつけますね。唯一無二の剣なんですから!」

「なるほど。何となくそんな気分になってきた」

アンナが頷くと、テーブルに立てかけられていた鞘の中から、魔法剣たちの声が聞こえた。

――ブゥゥゥン。

――ぶぅぅぅん。

「二本とも名前が欲しいと言っている。何か考えないと」

「ふふ。わたくしの言ったとおりだったでしょう」

「確かに。シャーロットの正しさを認めざるを得ない。でも、どんな名前にしよう。剣の名前なんて考えたこともないから難しい」

「古代文明の魔法剣ですから……エンシェント・グレート・アルティメット・マジカル・ファイヤー・ブレードなどいかがでしょう!?」

シャーロットはよほど自信作だったのか、身を乗り出して提案する。

「……雷と風の属性なのに、どうしてファイヤーなの?」

「では、そこをサンダーとハリケーンに変えたらよろしいですわ……いえ、古代言語では、雷はケラウノス。風をアネモイと呼んだらしいですわ。なので、エンシェント・グレート・アルティメット――」

「長い。シンプルに『ケラウノス』と『アネモイ』でいい」

アンナはシャーロットの言葉を中断させ、魔法剣の名前を決めてしまった。

――ブゥゥゥン。

――ぶぅぅぅん。

「そう。気に入ってくれて何より」

アンナは二本の鞘を撫でた。

「わたくしは長いほうがいいと思いますが……本人……いえ本剣たちが気に入ったなら、それが一番でしょう」

シャーロットは引き下がり、ハンバーグを食べる作業に戻った。

「ぴ!」

するとテーブルの上でオムレツを食べていたハクが、なにやら自己主張を始めた。

ハクは皿を前脚で押さえ、器用にオムレツを食べている。

実に可愛らしい。

だが今はオムレツを食べるのを中断し、顔を上げて「ぴ、ぴ!」と鳴いている。

「あ、もしかして、名前はシンプルなのが一番だと言ってるんですか? ハクの名前もシンプルですからね」

「ぴぃ」

ハクは大きく頷いた。

なにせハクの姿は、白いドラゴンだ。

白いからハク。

この上なくシンプルで分かりやすい。

「神獣が言っているんですから、いい名前なんですねぇ」

「よかったよかった。あとはシャーロットの必殺技の名前を考える番」

「わたくしはハクが何と言おうと、自分が信じる名前をつけますわ!」

「それでこそシャーロットさんだと思います!」

ローラは素直な気持ちで言った。

シャーロットは己の道を突き進むのが似合っている。

他人の目を気にするのは相応しくない。

まあ、気にしなすぎるのも考えものだが。

「ローラさん、分かってくださいますの!?」

「はい。他の誰がなんと言おうと、私はシャーロットさんは格好いいと思いますよ! いっそ、技の名前にシャーロットと入れたらどうでしょう?」

「わたくしの名前を! それは盲点でしたわ!」

ローラとシャーロットは盛り上がる。

一方、アンナは信じがたいという顔をしている。

「技に自分の名前を……恥ずかしい……耐えがたい……」

しかし、それはあくまでアンナの意見だ。

常識を打ち破ってこその冒険者。

他人から少々ダサいと思われても、押し通す強さが必要なのだ。

これが少々ではなく、滅茶苦茶ダサいと思われていたら嫌だが……少々ならオーケーだろう。

ローラも、これぞという技を編み出したら、自分の名前をつけてみようと思う。

「防御に使う技なんですから、それっぽい名前にしたいですよね。シャーロット・バリアーとかどうでしょう?」

「単純すぎますわ。もっとゴージャスでなければ、この技の偉大さが伝わりませんわ」

「なるほど……ではシャーロットさんならどんな名前を……?」

「ゴージャス・シャーロットによる華麗なるディメンション・バリヤー、ですわ!」

「おお……よく分かりませんが格好いいです! 特に自分のことをゴージャスと言ってしまう自信が凄いです!」

「ふふ、言うだけならタダなので、言わぬは損ですわ」

そう言ってシャーロットは胸を反らす。

実際にゴージャスな胸をしている。

ローラも真似をしてゴージャス・ローラを名乗ろうかと思ったが、ゴージャスな部分がなかったのでやめにした。