軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18 魔法の解説です

イチゴパフェを食べ終わり、訓練場に戻って、またアンナと一戦交える。

今度もローラが勝った。

絶好調である。

「……明日は私が勝つ」

「はい。明日もやりましょう!」

それからアンナが魔法を教えろとねだってくるので、ローラは彼女を自分の部屋に連れてきた。

二人でベッドの上に座り、魔法学科の教科書とノートを広げて、お勉強をする。

「いいですか、アンナさん。まず、魔法には大きく分けて六つあります。攻撃魔法、防御魔法、回復魔法、召喚魔法、強化魔法、特殊魔法、です」

「知ってる。それぞれの役目も何となく分かる。けど、特殊魔法だけはちょっとイメージつかない」

「うーん……私もまだちゃんと習っていないので詳しい説明はできませんが、他の系統に属さない魔法を特殊魔法と呼ぶらしいです」

「例えば?」

「何もないところから物を出現させたり。空を飛んだり。姿形を変えたり。その他、想像もできないことをやってみたり。そういうのが特殊魔法です」

「空を飛べたら便利。ローラは空飛べるの?」

「私はまだ……特殊魔法は他の魔法に比べてとても難しいとエミリア先生が言っていました」

「けど、ローラは特殊魔法の適性も9999だった。頑張ればできるはず」

「そうですかね? じゃあ、試しにやってみましょう!」

ローラはベッドに座ったまま、自分の体が浮かび上がるイメージをする。

すると本当に体がふわふわと浮かび上がるではないか。

「凄い……ローラ、飛んでる」

普段は表情を変えないアンナが、目を丸くしていた。

「おー、本当に成功しました。私、風になれます!」

そして調子に乗りそのまま高度を上げていくと……ゴツンと頭部に衝撃が走った。

「いた!」

ここは部屋の中なのだ。飛行魔法を使えば天井に激突して当然である。

ローラは集中力を欠き、ベッドに落下してしまう。

「おかえりなさい」

「いたた……ただいまです。風になるには練習が必要みたいですね」

「よしよし」

アンナが頭のたんこぶをさすってくれた。

剣を握っているときは激しい人だが、普段はとても優しいのだ。

こういうところはシャーロットに似ている。

「特殊魔法のことは分かった。そして私が使いたいのは、強化魔法と防御魔法。まずは強化魔法で筋力を強化したい」

強化魔法とはその名の通り、何かを強化する魔法だ。

今アンナが言ったように、自分の筋力を強化したり。あるいは仲間に対して同じことをしたり。

他にも、五感の鋭敏化。毒などに対する耐性の強化。心肺機能の強化。アルコール分解力の強化。などなど、とても役に立つ。馬の筋力と持久力を強化して、長距離を超高速で移動する、なんて芸当も可能だ。

強化魔法の対象は生物だけでなく、物体にも有効だ。剣の切れ味を強化したり、魔法のアミュレットを更に強化したり、薬の効果を強化したり。

とはいえ、強化魔法は生物相手に使うのが一番効果があり、無生物を強化するのは難易度が高いと授業で習った。

「強化魔法だろうと何だろと、魔法を使うには魔力を制御できるようにならないと。アンナさんは魔力の制御ってできますか?」

「まったく。ちんぷんかんぷん」

「じゃあ、まずはその練習から始めましょう。そもそも魔力というのはですね――」

筋力が肉体から発生するとしたら、魔力は霊体から発生するものだ。

しかし人は普通、自分の霊体を感じることができない。

ところが、感じることができないだけで、霊体は誰にでもある。

霊体は魂と言い換えてもよい。

「霊体は肉体と重なり合って存在します。なので、肉体を通じて、間接的に霊体を感じるのが一般的です。というわけで、私が授業で習った呼吸法をやってみましょう」

「呼吸法? 息を吸うだけで魔法が使えるようになるの?」

「いえいえ。これは魔法の準備段階。自分に霊体があると実感し、そこから魔力を絞り出す訓練です。では、まずは目を閉じてリラックスしてください」

「リラックス……」

アンナは目を閉じた。

そして全身から力を抜き、その存在感すら希薄にしていく。

「すやぁ……」

「ね、寝るのとリラックスは違います!」

「は……つい」

気を取り直してもう一度。

「リラックスしたら、大きく息を吸ってください。そして止める。ゆっくり吐いて、また止める。これをくり返してください。意識しなくてもできるくらいに」

アンナは言われたとおり、目を閉じて深呼吸をくり返す。

「では次に、霊体を探します。とは言っても、霊体は肉体と重なり合っているので、自分のいたるところにあります。深呼吸しながら、イメージしましょう。頭のてっぺんから、首、肩、腕、指先。それから胴体、腰、足、と心の目で見て下さい。自分の肉体以外に、何かありませんか? ダブっているものがありませんか?」

「……これ?」

これ、と言われてもアンナがどんなイメージを見たのか、ローラには分からない。

しかし、見えたというなら、それなのだろう。

「その見えた霊体を動かせますか?」

「動く。なんか暗い空間の中でビュンビュン動いてる」

「いいですね。じゃあ、それを精神世界から現実世界に連れてきて下さい」

無茶な要求に聞こえるかも知れないが、これができないと話にならない。

魔法とは、魔力を使ってこの世界を改変することなのだ。

自分の霊体くらい連れ出せなくてどうする。

「出てこい……」

アンナが呟くと、その体が淡く発光した。

肉体に重なり合って存在する霊体。

それが目に見える形で現われたのだ。

「成功ですよアンナさん! もう目を開けても大丈夫です!」

「何これ。私、光ってる」

アンナは自分の手の平を見つめ、物珍しそうにした。

「その光こそ霊体です。綺麗ですよね」

「夜になったら虫が寄ってきそう」

「う……夢のないことを言いますね! とにかく、その霊体から魔力が出るわけです。自在に出したり引っ込めたりできるようになりましょう。というわけで、引っ込めて下さい」

「えい」

アンナの気の抜けた掛け声で、淡い光は消えた。

「おお、出すのも消すのも一発ですね。凄いです。慣れてくると霊体の一部だけ出して、それを魔力として使うことができます。全てはイメージです。今はゆっくり意識してやりましたが、素早く無意識で霊体を操り、並行して魔法のイメージができるようになれば、実戦でも使えるでしょう」

「難しそう……ローラもこういう練習したの?」

「私は……なんか気が付いたらできてました!」

そう答えたら、アンナは頬を膨らませムスッとした顔で睨んできた。

「腹立つ」

「な、なぜですか!? 私は何もしていないのに!」

「何もしてないのに魔法が使えるから腹立つ。剣に置き換えたら分かりやすい。たとえば、そう。何の努力もしていない素人が才能だけで、いきなり鉄の兜を両断したりしたら」

言われたとおりローラは想像してみた。

「ぶっとばしたくなりますね!」

「というわけで私は今からローラにお仕置きをする」

「お仕置き!? あ、駄目です、脇腹は駄目です、私そういうの弱いんです……あ、あひゃひゃひゃ!」

「耳にふー」

「んにゃぁ!? やめてくだしゃい……あひゅん、そんなとこ、だめれす……」

ローラは耳とか脇腹とか脇の下とか足の裏とか太股とか、とにかく弱点を責められまくり、ふにゃふにゃになってしまった。

「……最強だと思っていたけど、意外と弱点が多かった。メモメモ」

「うぅ……そんなメモしたって無駄ですよ。戦闘中は耳にふーなんて絶対にさせませんから……!」

「そう。じゃあ今のうちにしとく。ふーふー」

「にゃあああ!」

ローラはろくに抵抗もできず、アンナにいいようにされてしまった。

体に力が入らない。

なんとか這いずって逃げようとしたのだが、アンナにのしかかられ、どうにもならない。

「ちょ!? あなたたち、一体なにをしていますの!」

そこへシャーロットが帰ってきた。

こっちを指差して赤くなり、ぷるぷる震えている。

「なにって、ローラにいたずらしてた」

「いたずら……破廉恥ですわ破廉恥ですわ!」

シャーロットは顔を真っ赤にして目を両手で覆う。

だが、指の隙間からちゃんとこっちを見ている。

「シャーロットさん……見てないで助けてくださいよぅ……」

「い、今助けますわ! アンナさん、覚悟!」

「シャーロットも耳にふー」

「あひゃぁぁん!」

そしてアンナ無双が始まった。