軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

170 みんなライバルです

空を散歩することは、今まで幾度もあった。

そこに大賢者やミサキがいたりとメンバーはいつも変わっていたが、ローラ、シャーロット、アンナの三人はいつも一緒だった。

だから今日の空中散歩も、よくある日常の一コマ。

もっとも、いつもと違うところが二つある。

一つは、日が完全に沈んでしまった夜だということ。

一つは、アンナが誰かに掴まったりせず、自分で飛んでいるということ。

「アンナさん、凄いです! もうすっかり風をコントロールしていますね!」

三人で並んで飛びながら、ローラは我がことのように興奮して言った。

なにせ魔法の双剣を手に入れたのは、ほんの一週間前だ。

アンナはその短い期間で、空を飛べるようになった。

魔法剣の風で空を飛ぶ感覚は、ローラには分からない。

しかし自分の魔力で飛ぶよりも、かえって面倒なのではと想像する。

「練習したから……それに、こうして剣を手に持つと、意識がリンクする。剣の魔力を、まるで自分の魔力みたいに扱える。慣れが必要だけど」

アンナは右に風の魔法剣を、左に雷の魔法剣を持って飛んでいる。

プレゼントした鞘は付けたままだ。

魔法を使うだけなら、抜かなくてもいいらしい。

「へぇ、これでアンナさんは二刀流になった上、風と雷の魔法を使えるわけですね。自力でも強化魔法と防御魔法をかなり使えますし……魔法剣士です!」

「もの凄い戦力アップですわ。卒業までに倒すリストに、もう一度リストアップですわ!」

ローラとシャーロットは、アンナを褒め称えた。

なにせ、実際に凄いことなのだから。

剣と剣の特訓ではなく、純粋に戦ってみたいとさえ思えた。

「……ようやく背中が見えてきた気がする」

アンナはボソリと呟いた。

「背中? 何のことです?」

「私はようやく飛べるようになった。でも、ローラとシャーロットはずっとずっと前から飛べていた。私はそれが悔しかった。自分の力じゃ、二人と散歩することさえできなかった」

「え、それは……だってアンナさんは戦士学科ですから――」

「関係ない。それを言うならローラは魔法学科なのに、私と互角に剣を打ち合っている」

「だって、私は……」

何かを言いかけて、ローラは口ごもる。

はて、何を言えばいいのだろうか。

私は特別だから――なんて口が裂けても言えない。

そして、自分が無意識のうちにアンナを軽んじていたのではないかという疑惑に襲われた。

シャーロットのことはライバルだと思っている。

あの素晴らしい決勝戦のような戦いを、いつかまたやれると信じている。

だが、アンナに対して、そういった期待をしたことがあっただろうか?

剣士としてはライバルだ。

しかし、もはやローラにとって剣は、趣味。

そう。

ローラはずっと悩んでいたのだが、魔法学科の片手間に行なう特訓では、もはや剣術で一番になるのは不可能なのだ。

強くなりたい。

その想いを成就させるには、魔法こそが主力。

ゆえにアンナは趣味の仲間。

親友ではある。凄い人だと認めてもいる。剣では勝てないと思ったときは悔しかった。

でも、それだけだった。

校内トーナメントの決勝戦や、ダイケンジャーとの決戦の如き、脳が沸騰する領域を共に歩む人だと認識していなかった。

そのことに思い至り、ローラは愕然とした。

知らなかったのだ。

悪気はなかったのだ。

大好きなのに、こんなにもアンナを、大好きなのに。

知らないうちに、下に見ていた。

――ああ、だから。

これで最近のアンナの様子がおかしかった理由も分かった。

ローラはアンナをライバルだと思っていなくて。

シャーロットは『倒すリストに入っていない』と明言してしまって。

親友からそんな扱いを受けて、これほどの努力家が、平気でいられるわけがない。

「謝らなくていいよ」

アンナは先にローラとシャーロットを制した。

「私は確かに、二人よりも弱かったから。置いて行かれると、諦めかけたこともあった。でも。勝つから――」

謝るなと言われ。

弱かったと言われ。

その上で、勝つから、と。

素晴らしい挑戦状だ。

ならば言い返す言葉は一つだけ。

「負けませんよ」

「負けませんわよ」

ローラとシャーロットの言葉が重なる。

それを聞いてアンナは、実に実に嬉しそうに微笑んだ。