軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

地下で発見

地下へと通じる階段を発見したところで、一度、石像を元に戻してから口笛をふく。近くにいた分隊が現れ、彼らを通じて 祓魔師(エクソシスト) が率いる小隊が現れ、少し遅れてパトレアの小隊が到着した。

祓魔師(エクソシスト) は壮年の男性でマイケルと名乗ると、俺を知っていると言う。

「秋、パトレアが世話になってありがとうございます。彼女はうちの司教区だけでなく、大陸でも有数の聖女なので、いい経験を積ませてもらって教団としても感謝していますよ」

パトレア、大事に育てられているんだな。

石像を動かした。

マイケルが神聖魔法で光を創り出す。

そうそう! この神聖魔法、すごく便利なんだよ。

マイケル隊、俺たち、 殿(しんがり) にパトレア隊という並びで地下へと降りた。

一本道の左右には小部屋がいくつもあり、ここは作業員たちが眠る場所だったようだ。複数人で雑魚寝をするらしい。残されたままの甕、朽ちた金具や釘……通路をさらに進むと、大きな空間に出て食堂であったと思われる。

石棺が正面に置かれていて、俺は嫌な予感でマイケルに注意を呼びかけた。

「あれ、前にもあった。よくない兆候だ」

俺の呼びかけに、マイケルは兵たちを連れて石棺を囲む。同時にパトレア隊が室内を調べ、右方向は厨房跡、左方向はさらに地下へと降りる階段があることを把握した。

俺とリュミドラで、石棺を一気に開けた。

空だ。

イングリッドがひどいことをされて閉じ込められているんじゃないかと心配していた俺は、安堵からの脱力感に襲われる。

「空の石棺……中もきれいに掃除されて……これから使おうということ?」

リュミドラの問いに、マイケルが周囲を窺いながら口を開いた。

「と、思われる。きっと、誰かを運んできて入れる? 的な」

「石棺に入れて運ぶってどういうこと?」

リュミドラ……それを俺は知っている。

神使(アンジェル) を降ろされたエルフは、石棺に入れられて運ばれていた。

イングリッド……無事でいてくれ。

パトレア隊を先頭に、さらに地下へと降りた。そこは三層にあたる。

俺たちのすぐ後ろについたマイケルに、リュミドラが質問をしていた。

「半島は地下墓地が多いのは理由が?」

「諸説ありますが、 金竜(エルミラ) の支配地域であったため、死体を奪われないように地下に隠したのが始まりという説が強いですね……そして 主神(アロセル) に祈りを捧げる際も地下でおこなった…… 金竜(エルミラ) は人間に火葬を強いておりました……今でこそ、火葬は一般的ですが当時はとんでもないことでしたから」

「この地下墓地、すごい規模だと思うけど、これが当たり前だったの?」

「いえいえ、死体が増えていって大忙しで広げていたんですよ……戦争です」

「……」

「当時、地下堀りの工夫たちはとても稼げたそうですよ」

彼の言が終わる頃、パトレア隊の前進が止まる。

俺が前に行くと、扉の前で彼女が止まっていた。

「エリオット、扉が開かない。破壊する」

「待て」

俺はマント留めを外し、扉に差し込み口がないかを探した。

あった!

差し込み、引き抜く。

ガチャリという音。

パトレアが扉を開くと同時に、俺が突っ込んだ。

「なんだ!?」

「誰だ!?」

地下聖堂ともいえる空間に、武装した男たちがいる。人数は三人で、彼らは俺の姿に驚くあまり足をもつれさせて転倒した。

パトレア隊が一気に制圧する。

「右、通路!」

「正面奥、上への階段」

兵たちの報告に、俺は正面奥の階段へ突っ込む。

「こっちでいい?」

背後にピタリとリュミドラの声。

「偉い奴は上にあがりたがる」

「行こう」

俺、彼女の順で階段を駆け上がり、扉を蹴破った。

壮年の男が、剣士たちと円卓を囲んでいて、俺たちを見ると一斉に腰を浮かし、武器に手を伸ばした。

俺は問う。

「 聖なる騎士団(サンクトゥエクェス) の皆様で?」

正面奥に立つ壮年の男が答える。

「そうだが、お前は?」

この時、下で激しい戦闘が開始されたと音でわかった。おそらく、右方向の通路に敵の兵たちがいたのだろう。それも二個小隊二十人とわたりあうだけの数がいたようだ。

「俺はエリオット、 相棒(バティ) を返してもらいに来た」

「……クリムゾンディブロ」

壮年の男は、忌々しいという顔で後退し、壁模様の布で隠してあった通路へと消える。

俺は残った男達を睥睨した。

「お前ら、楽には死なせないがそれでもいいならかかってこい」

男達は七人。

彼らは薄ら笑うと、お互いに目配せを送り合う。

一斉にくるかと思ったが、順に後退を始めた!

行かせるか!

加速した直後、目の前に一人の男が立ちふさがる。

剣と剣がぶつかりあい、金属音が空間に響いた。

リュミドラも、一人の男と対峙している。

俺の相手が言う。

「 聖なる騎士団(サンクトゥエクェス) の 聖騎士(パラディン) アインザス・クェスガだ。参る!」

彼は斬撃を囮に、 雷撃(トニトルス) をぶつけてきたが、俺の 火炎弾(フレイム) とぶつかりあってお互いに衝撃で吹き飛ばされた。俺は壁に背を強打する寸前に身体を捻って壁を蹴ることで前への推進力を得る。

奴は壁に背から突っ込み、苦しみながら剣をかまえた。

突進した俺は、奴が地面を蹴って目晦ましの砂をかけてきたと見て腕で顔を守った。その瞬間、体当たりを受けて後ろにたたらを踏んだが、斬撃をはなって反撃をくりだした。

鋼どうしがぶつかる音で、防がれたと知る。

普通ならここで再接近しての撃ちこみだろうが、俺は 火炎弾(フレイム) を発動させ、一瞬後に 雷撃(トニトルス) をみまった。敵が一発目の魔法を 防御魔法(ディフェンシォ) で防いでから反撃に出ると読んでの時間差だ。そして、自らの前に突っ込んだ。

アインザスは読み通り、 魔封盾(スクトゥム) で防いで反撃の魔法を発動しようとした。

俺の 雷撃(ライトニング) が奴に直撃する。

「ギャ!」

短い悲鳴は、受けたダメージの深刻さを主張していた。

身体から煙をあげながら痙攣する 聖騎士(パラディン) さまに、俺のイングリッドが突き刺さった。

皮膚と肉と内臓と骨を貫いた一撃で、奴は口から血を吐いている。

剣を引き抜きながら捻じりを加え、心臓と左肺を完全に破壊した。

直後、いきなりの衝撃波で後ろへと吹き飛ばされる。

なんだ!?

「きゃあ!」

見ると、リュミドラが後方へと吹っ飛ばされていた。

ほぼ同じタイミングで敵を倒したが、倒した相手が死ぬ間際に放った衝撃波をくらったのだ。

受け身をとって壁にあたり、立ちあがって剣をかまえた時、俺は目の前の光景に既視感を覚えた。

俺とリュミドラが戦っていた二人は、瀕死のはずだが生きていて、笑っている。

リュミドラが俺の左についた。

「エリオット、こいつら……」

「ああ…… 勇者(ブレイブ) さまだ」

-Elliott-

「カカカカ……ヤルヤル……ヤッテクレル」

「ググググ……アインザス……ダイジョウブカ?」

「ダイジョウブダイジョウブダイジョウブゥウウウウウウ!」

アインザスの身体から、骨が折れ関節が鳴る音が派手におきる。

リュミドラが相手していた男は両脚が千切れ飛び、クリーム色の粘体があふれ出て下半身を覆うと、それが腹足類のようにヌメヌメと動き始めた。同時に、上半身が肥大化し始めていく。

部屋は広くない。

どういった化け物かわからない相手と、ここで戦うには不利だと思った。

「下の広い部屋に行こう」

「うん!」

彼女が先に階段を駆け下りる。

「上に化け物! 勇者(ブレイブ) !」

リュミドラが叫んだ。

俺も階段を駆け下りた。

敵を制圧しおえたパトレアとマイケルが、味方の負傷者の怪我をみているところを中断して、武器を手に部下たちに声をかける。

右の通路へと進んでいた兵が、慌てて戻ってきて叫んだ。

「人! いやエルフがいます!」

イングリッド!

「エリオット、行って!」

リュミドラの声。

「すまん!」

「後でチューね!」

!?

ともかく走った。

通路の奥には広い部屋があり、そこは兵たちの休憩室のようだった。その奥、小部屋を走り抜け、狭い通路の先に牢獄がある!

いた!

見つけた!

「イングリッド!」

彼女はぐったりしている。

牢獄の鉄格子に飛びつき、ガチャガチャと力任せに揺らすが彼女は反応しない。

俺は細心の注意で、イングリッドに衝撃が届かないように力を抑え、 火炎弾(フレイム) を発動した。

ガン! という音で鉄格子の一部が壊れ、その穴から中へと入る。

イングリッドだよな?

実はもう……別人のようになってるってことはないよな?

なにか呪いをかけられている……ならパトレアに解除してもらおうな?

イングリッド……。

俺は彼女を抱きかかえた。

軽い。

そうだ。彼女は軽いんだ……。

「イングリッド」

名前を呼ぶ。

目を閉じたままの彼女は、呼吸をしている。

生きている!

生きている……。

「イングリッド」

顔色はよくない……唇も渇いている……衣服は……乱されていないが、ずっと暗くてジメジメしたこんなところに入れられていたからか、彼女の肌は荒れていて、カサついていて……俺は涙を止められなかった。

どうしてだ?

彼女は人間をも守ろうとしてくれていたのに、どうしてだ?

イングリッドを抱えて、来た道を戻る。

俺を追いかけた兵士たちが、俺に道を譲った。

広間では、パトレアとマイケル、リュミドラが幾人かの兵士たちと共に化け物二体と戦っていた。

巨大なナメクジの頭部が人間である 勇者(ブレイブ) は、火炎を吐きながら、あふれ出す体液は毒のようだ。

アインザスだったと思われる化け物は、昆虫のカマキリを連想させる化け物で、両手は巨大な鎌だ。そして羽根を震わせることで衝撃波を自分の周囲に発してこちらの接近を牽制している。

「イングリッド」

声をかけるが、彼女は目覚めない。

俺は後ろの兵士を呼ぶ。

「彼女を頼む。俺は戦う」

「は! はい!」

兵士がマントを脱ぎ、弱ったイングリッドを包んだ。

俺は魔剣を握ると、呟く。

「イングリッド、行くぞ」