軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脅迫者ヴァイト

17話

俺は残る五人の尋問も順番に行い、少しずつ情報を引き出していった。

二人目はこうだ。

「コズン氏と、色々有益なお話ができたよ」

俺が机の上で手を組むと、若い男は完全に萎縮してしまった。

「あ、あの……俺のこと、何か……」

俺はにっこり笑う。

「君も正直に話せば、無事に家に帰してあげよう。もしひとつでも嘘をついたら……」

俺の背後で、モンザが人狼に変貌し始める。

顔面蒼白で今にも気絶しそうな若者に、俺は微笑んだ。

「わかるね?」

尋問は驚くほどスムーズに進んだ。

ただやはり、核心に触れる部分になると彼らは口を閉ざしてしまった。

どうやら少々の脅迫では言えないような、重大な秘密を抱えているらしい。

さて、どうしたものか。

尋問を終えた後、モンザがメモを眺めながら呟く。

「年齢も職業もバラバラねえ。絶対に『群れ』だと思ったんだけど、自信なくなってきちゃった」

「二人目のヤツ、一人目のヤツと面識がある口ぶりだっただろ? 他にもお互い面識がありそうな雰囲気だった」

俺は鏡を見て身だしなみを整えながら、こう続ける。

「銀のナイフ持って人狼の近くをうろうろしてる連中が、他人同士のはずはない。あいつらはまだ、隠し事をしてるな」

モンザはメモから顔を上げて、にっこり笑う。

「じゃ、拷問しちゃう?」

笑顔で物騒なことを口走るモンザに、俺は首を横に振った。

「やりすぎると住民の反感を買う。そろそろ限界だ、全員解放しろ」

「あ、あれ? いいの?」

拍子抜けしたような顔のモンザ。少しがっかりしているようだ。

だから俺は、彼女に新しい指示を与えた。

「もちろん、ただで帰すつもりはない。今日からしばらく、全員を徹底的に尾行してくれ」

「あは、送り狼だ。嬉しいなあ」

手を叩いて笑顔になったモンザだが、ふと首をかしげた。

「あたしの隊、四人しかいないんだけど……」

「ウォッド爺さんとハマームの隊を貸す。十二人で交代して張り付け。いいな?」

「はぁい、隊長」

俺は後のことをモンザに任せると、二階の自室に戻った。

「ヴァイト殿」

案の定、すぐに太守のアイリアが青い顔をして駆け込んでくる。

彼女の背後では、ファーンお姉ちゃんが肩をすくめていた。どうやら尋問の間、だいぶやりとりがあったようだ。

アイリアは気が気ではない様子で、俺に詰め寄ってきた。

そりゃそうだろう。今の彼女は魔王軍に服従していて、その魔王軍が同胞のミラルディア軍を殲滅したのだから、立場は複雑だ。

「市外で戦闘があったそうですが、詳細を教えてください! あと、あの男たちは何ですか?」

俺は彼女に席を勧めると、俺も腰掛けて説明を始めた。

「トゥバーンの兵四百が襲撃してきたので、我が軍が撃退した。連行した男たちは、そのとき北門でうろうろしていた連中だ。全員が銀のナイフで武装していた」

「銀のナイフ……?」

アイリアは怪訝な顔をしたが、すぐにその意味に気づいた。

「まさか、人狼を襲おうと!?」

「わからんが、そう思われても仕方ないだろう」

俺はことさらにもったいぶって、ふかふかの背もたれに体を預ける。

アイリアはますますうろたえて、俺に訴えかけてくる。

「ど、どうか寛大な処置を。私はリューンハイトの民の血を見たくありません」

「それは俺も同じだ、アイリア殿」

悪役っぽさを漂わせながら、俺は苦笑してみせる。

「本音を言えば、トゥバーンの兵だって殺したくはなかった。だが俺は魔王軍の副師団長として、交戦の義務がある」

男装の美女がうろたえているのを眺めながら、俺は続けた。

「同様に、魔王様からリューンハイトを預かる身として、魔王様の支配を拒む者に対しては厳しい態度で臨まねばならない。おわかりか?」

俺は暗に、捕縛した連中を処刑すると言っている……ように思わせているのだ。実際には泳がせて背後関係を調べるつもりだが。

アイリアは面白いぐらいに真っ青になった。

「ま、待って! 待ってください! もう少し調査を!」

「あいにくと私には真相の究明よりも、治安維持の方が重要なのだ。疑わしき者は罰するしかない」

アイリアが卒倒しそうな顔をしているが、俺は人間と仲良しごっこをするためにここにいるのではない。必要なら脅迫もする。

しかしあまり脅すと逆効果なので、俺はここらで交渉を持ちかけることにした。

「とはいえ、彼らは具体的に何かをした訳ではない。そこに一本の細い糸が垂れている。彼らを救う糸がな」

蜘蛛の糸の話を思い出しながら、もったいぶる俺。

我ながら陰険だとは思うが、連中のやろうとしたことを思えばこれぐらい許されるだろう。本当はあの場で処刑してもよかったのだ。

アイリアは俺の次の言葉を、固唾を呑んで待っている。いい表情だ。

「銀のナイフで我々の喉笛を狙う連中を生かしておく理由はないが、アイリア殿の嘆願とあれば無視もできん。治安維持の件で借りもあるしな。助命に応じよう」

「あ……ありがとう、ございます……」

俺の言葉に安堵したらしく、アイリアはテーブルの上にぐったりと肘をついてしまった。よほど緊張していたらしい。

よしよし、これで治安維持を頼んだときの借りは返した。

最初から殺すつもりはなかったので卑劣なやり口だが、交渉事というのはこういうものだ。

だが卑劣な俺は、交換条件を出すことも忘れていなかった。

「ただし、連中が二度と愚かな真似をしないことが絶対条件だ。次にこのようなことがあれば、我々は捕縛などという寛大な処置はしない」

今度やったら確実にぶっ殺すからな。脅しじゃないぞ。俺は本気だ。

アイリアも俺の本気は伝わったようで、すぐさまうなずいた。

「承知しました。私の管轄下にある全ての組織に、魔王軍に従うよう命令します。市民の大半に命令が行き渡るはずです」

「それは助かる」

それがどれぐらい効果があるかは俺にもわからないが、これ以上の譲歩は引き出せないだろう。

脅迫は引き際が肝心だ。欲張れば全てを失う。

さて、後はモンザたちの働き次第だな。