軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

海辺にGO! の、その前に

厳正なる話し合いの結果、エドさんとアリアさんは二人でお買い物デートに。セノンさんはギルドの書物庫に。

そして私とごまみそは海へ遊びに行くことになった。なお、お目付け役はヴィルさんである。

お目付け役というか、私とごまみそでは戦闘能力的にどうなの? と不安がる声がパーティ内から上がったため、戦闘要員も兼ねてヴィルさんが付いてきてくれることになったのだ。

「でも、私たちと一緒で大丈夫ですか? ヴィルさんも予定とかあるなら、冷蔵庫の整理でもしてますが……」

『あんなー、もしも敵とかきてもなー、朕がシュッシュってするから! だいじょぶ!』

「…………あー……残念ながら、大した予定がなくてな……リンと……ごまみそがよければ付き添わせてくれ」

「本当ですか? それなら、こちらとしては願ってもないのでありがたいです! 晩御飯の足しになりそうなもの、獲れるよう頑張りますね!!」

無駄なドヤ顔で前足をピコピコうごかすごまみその頭を、目を細めたヴィルさんが撫でる。ヴィルさん、実はわりと猫好きなんじゃなかろうか……?

中庭から人気がなくなったタイミングを見計らって 野営車両(モーターハウス) を降り、それぞれがそれぞれの目的の場所へと散っていく。

私とごまみそとヴィルさんは、大門を抜けて海へとまっしぐら……と行こうと思ったら、ヴィルさんが良いお店があるととあるアイテム屋さんに連れて行ってくれた。

ギルドから通りを一本入った所……非常に玄人臭漂う感じの通りだ。「玄人好みのアイテム扱ってます!」っていう知る人ぞ知る店ばっかりが並んでいる感じ、といって伝わるだろうか?

「海スライム眼鏡……! こんなものがあったなんて……!!」

「水中の魔物の討伐用に、昔はよく使われてたらしい。今はもっと高性能になっているが、それなりに高価だからな。個人が海で遊ぶ……って言うならこんな感じのアイテムの方が良いだろう?」

「凄い! 凄いです、コレ!! もっちり吸い付いてきて紐いらずだし、視界もめちゃくちゃクリアです!!」

そんなお店の一角で、今、私が手に取っているのは「海スライム」という魔物を加工して作られた水中メガネのようなものだ。

見た目は薄ーい水色がかった透明なVRゴーグルなんだけど、顔に当てるとそれ自体がきゅっと張り付いてくれて、紐がなくても落ちないようになっている。

しかも、乾燥しないよう気をつければ、結構長く使えるらしいのですよ!

今はさらに改良が進んで視界だけじゃなくてある程度の呼吸も確保できる物が主流らしいけど、せいぜいちょっと深めのタイドプールで水中観察したり取り残された魚やら何やらを獲る程度を想定してるからなー。このくらいの商品でちょうどいいかな。

そもそも、そこまで深く潜水できる技術があるわけでもないし、高価な道具ばっかり揃えてもどうしようもなかろうて。

「エルラージュは海沿いの街だろう? 当然水棲の魔物や魔生物がよく出るもんで、そいつらを討伐する時に使う装備やなんかを売ってる店があるんだ」

「あぁー、なるほど、納得です! それじゃあ、この銛なんかも討伐用ですか?」

「ハーフリングなんかの、背が低い種族用の銛だ。まぁ、射程は短いんだがな」

近くにあった短めのヤスというか銛というかを手に取ってみた。1.5センチ程の太さで、わりと握りやすい。長さも1mくらいで、試しに取り回してみた感じは子供の頃に川遊びで使ったヤスに近い感覚だった。

射程は短いと言えど、タイドプールでの磯遊びにはちょうどよさそうかな。

なんかもう色々と遭ったおかげで想定外の額のお給料が出たので、この海スライム眼鏡と、銛を購入させてもらった。

網はねー、予備の折り畳みラバーネットがあるから、それを使おうかな、って。一部が伸縮する素材で作られてるから、ちょっとした凸凹にも強い……気がするよ、うん!

トラウト用ではあるけど、フロート付きのスカリもあるし、これはもう海レジャーを楽しめ、という神の啓示では!?

「楽しそうだな、リン」

「実は、この間海に来たときから磯遊びしてみたかったんです! 夢が叶ってよかったあ!」

「ここで装備していくかい?」と店員さんが言ってくれたのを断れば、付属品らしい布の袋にしまってくれた。まぁ、穂先剥き出しは危ないですもんね。

それを携えたまま、店の外で大人しくしてくれていたごまみそを抱き上げる。流石に放置プレイが寂しかったのか、肩に飛び乗ってきたごまみそが頭突きと言っても過言ではない勢いで頭を擦り付けてきた。

ちょ……おみそ! お前わりと大きいんだから、ちょっとは加減して?

『何で朕のこと置いてったの? なー、なんでー? なんでー??』

「壊れやすいアイテムもあるから、従魔はご遠慮ください、って書いてあったからね」

『朕、わるいことしないもん!』

「そりゃキミあれよ。リスクマネジメントってヤツよ」

興奮しているのか、太長い尻尾がビタンビタンと背中に当たるわ、わさわさ動く翼が耳元に当たるわ……まさか、楽しくショッピングした代償が拗ねた猫だったなんて……!

一向にグリグリ攻撃を止めてくれないごまみそを、ひょいっとヴィルさんが抱き上げてくれた。

『いやー! 止めないで! これは、朕のてんちうなの!!』

「あー、わかったわかった。放っておかれて寂しかったんだな」

『ちゃーう! 朕、そんなヘタレじゃないもん! 朕、めっちゃつよいかんね?』

抱かれる腕が変わっても、なおもびたびたと尾を振るごまみその背中をヴィルさんはひどく優し気な手つきで撫でている。

……うん。やっぱり猫好きなんじゃないかな、ヴィルさん。

「こうしてみると、なかなか可愛いものだが…………ちなみに、何て言ってるかわかるか、リン?」

「『我ボスぞ? ボスぞ??』って感じですかねぇ?」

「間違ってはいないが……無駄に尊大だな、お前は」

若干呆れが混じったものの、それでも柔らかな笑みを浮かべてごまみその額を、耳元を、顎をくすぐるように撫でるヴィルさんの手は止まることはない。

ふーふーと若干毛を逆立てていたごまみそも、ついには撫でられる快楽に堕ちてしまったらしい。ヴィルさんの腕の中でぐでりと垂れた上に、蕩けそうに目を細めて喉を鳴らしている。

……うん。今日もエルラージュは平和で何よりですな!

「よーし! 晩御飯の足しにできそうなもの、獲るぞー!!」

『朕も! 朕もシュッシュッてするー! 朕もとるー!!!』

「リンもごまみそも、あまり無理はするなよ? 命が一番大事だからな!」

拳と前足を意気揚々と掲げる私とごまみそにしっかりとヴィルさんが釘を刺す。

命も大事ですけど、ご飯も大事ですから!!

さぁ、楽しいマリンレジャーに出発ですよ!!!